「君としか恋はしたくない」

愛理

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番外編「何処にいても、どんなに時が経ったとしても」― side凉一 ―

第5話「誓い合ったはずなのに」

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  俺が家に帰ると母さんが出かけるところだった。
「ただいま。何処行くの?」
「あ、涼一、丁度、良かったわ。私、これから美紀ちゃんとお芝居を見にいくから、今日は綾香ちゃんにご飯つくってあげてね。あ、でも、一緒に帰ってきたなら、今、美紀ちゃんが涼一がご飯つくるって言ってるか」
  俺の母さんは俺がサッカー部を引退してから、殆ど綾香と一緒に帰ってくるので、今日も絶対に一緒だったと思っているようだった。
「今日は綾香とは別に帰ってきた」
「え? 何? 何で?」
「綾香、行きたい大学のことで進路指導室に行くっていうから、先に帰ってきたんだよ」
  俺がそう言うと母さんは少しだけ間をあけて、
「ははーん、あんた、綾香ちゃんが自分と一緒の大学へ進まないことに苛ついて、大方、綾香ちゃんを傷つけるような言葉が態度を取って、先に帰ってきたんでしょ?」
  そう言った。
  うっ。
  さすが母さん。
  当たってる……。
  だから、俺は何も言い返せなかった。
  すると母さんが、
「いい? ちゃんと綾香ちゃんにご飯つくってあげるのよ。それにあんた、綾香ちゃんと気持ちは本物の結婚式をしたでしょ。そこでお互いの愛を誓い合って、絶対に今度は本物の結婚式するって堅い意思も持ったんでしょ」
  そう言った。
「母さん……」
「涼一、男側のあんたがそんなんでどうするの。あんたがそんなんじゃ大学に行ったら、本当に誰かに綾香ちゃんを取られてしまうかもしれないわよ。綾香ちゃん、凄く可愛いし、いい子だから、狙う男子はこれから先もたくさん出てくるだろうし」
「…………」
「しっかりしなさい! ただでさえ中学生の時から綾香ちゃんはあんたのことでたくさん傷ついてるんだからね」
「母さん……」
「あ、いけない。遅れちゃう」
  母さんはリビングルームの壁に掛けてある時計を見てそう言った。
「じゃ、涼一、私は美紀ちゃんと出かけてくるからね。さっき言ったようにちゃんと綾香ちゃんにご飯つくってあげるのよ。冷蔵庫に食材は結構入ってるから」
  母さんはそう言い家から出ていった。
  俺は母さんが出ていった後、リビングルームに置いてある長い茶色いソファーに座った。
  そして、大きな溜息を吐いた。
  母さんの言うとおりだよな。
  俺、綾香と気持ちのうえでは本物と呼べる結婚式をして、お互いの愛を誓い合って、そして、いつか絶対に本物の結婚式もしようと誓い合ったのに。
  それなのに俺は綾香が一緒の大学に進まないということで、モヤモヤして……。
  そして、綾香を傷つけて……。
  それに母さんの言うとおり、俺のために綾香は関係のない奴に色々と言われたり、されたりして、たくさん、傷ついたのに。
  本当に俺が綾香を傷つけてどうするんだよ。
  俺は綾香の笑顔をずっと見ていたいはずなのに。
  俺はそう思った後、すぐに綾香に電話をかけた。
  帰ったら、俺の家にすぐ来てくれる?
  そう伝えるために。
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