「君としか恋はしたくない」

愛理

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番外編「何処にいても、どんなに時が経ったとしても」― side凉一 ―

第2話「そばにいることだけが全てじゃない」

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「え? それ、本当かよ?」
  実が言った。
  今は1時間目と2時間目の間の休憩時間で、俺と実は2人で教室から出て、そんなに人が来ない場所に行っていた。
  ちなみに高校2年生になった俺達は驚くことに俺と綾香、実、白野はまた同じクラスになり、そのうえ、実の彼女になった広瀬とも同じクラスになった。後、2年生になってから俺も綾香も実の3人ともが知ったことなんだけど、実は白野は結構なお嬢様で(父親は大企業の経営者らしい)中学生の時から既に婚約者がいるらしい。白野が言うには中学生の時に既に婚約者がいるなんて冗談じゃないと思ったけど、父親が開いたパーティーの時に会ってみたら、凄くいい感じの子で、同じ年齢だけど、何だか考え方もしっかりしていて、気に入り、向こうも気に入ってくれたので、婚約することにしたとのことだ。
  だから、一応、俺達のグループは全員、彼氏、彼女持ちとなっていた。
  ちなみに俺達は2年7組になった。
「ああ、本当。俺、綾香は絶対にF大学に行くと思ってたから……綾香には納得したように言ったけど、本当はまだモヤモヤしてるっていうか……」
「まあ、お前らは生まれた時からもうずーっと一緒だったしな。まあ、この高校にお前が受かったのは奇跡に近いけど、それはまあ、お前の執念が勝ったってことだろうし」
「この高校に受かったのは奇跡に近いとかは余計だよ。でも、そうなんだよな。ずっと一緒だったから、今更、大学が離れるとか実感がないっていうか……A大学なんて俺の学力がどう考えても受かるの無理だし」
「まあ、そうだろうな」
「おい!」
「でも、本当のことだろ。まあ、でもさ、涼一、お前らはもう絶対的に信頼しあってるんだし、別に大学が離れたって大丈夫だろ? それにそばにいることが全てじゃないよ。遠く離れてても、ちゃんと恋を続けてる人だって沢山いるんだし」
「実……」
  確かに実の言うとおりだ。
  そして、綾香だって実の言うように俺のことを信じてくれているから、あんなにはっきりとA大学に俺に行くと言ったのかもしれない。
  俺は実に今、言われたことでそう思った。
「実、お前、いつの間にそんなに大人になったんだよ?」
  俺は実の肩を抱きながら言った。
「ばーか。お前が相田のことになると周りが見えなくなりすぎるんだよ。まあ、でも、俺はお前の相田への一途な想いは尊敬するところでもあるけどな」
「実、お前って本当にいい奴だよな」
「今頃、気づいたか」
  俺と実はそんな会話をした後、お互いの顔を見て、くすっと笑い合った。
  そして、俺は実に綾香の大学のことを話したことと実から、そうかと思うことを言ってもらえたことで、心が軽くなった感じがした。
  でも、この後、また、俺の心は重くなるようなことが起きてしまうんだけど……。
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