「君としか恋はしたくない」

愛理

文字の大きさ
上 下
56 / 78
番外編「俺の恋愛事情」ーsideー実

第4話「本当の恋」

しおりを挟む
  涼一から広瀬のことを指摘されてから1週間が経った。
  この1週間の間、広瀬とは全然、会わなかったので、自分の中で思っていた広瀬への何だか解らない気持ちは薄れているような気がしたので、俺は何だ、やっぱり、恋なんかじゃないじゃん。
  そう思った。
  だって、恋だったら、例え1週間、会わなくてもきっとその人への気持ちは薄らぐことはないと思うから。
  でも、そんなことを思っていた矢先に―。
  俺が休み時間にトイレに行って教室に戻ろうとした時に偶然に広瀬に会った。
  広瀬は次の授業は音楽らしく、音楽室に友達と行くところらしかった。
  そして、俺は広瀬と思いっきり目が合ってしまった。
  すると広瀬は俺に笑顔でペコっとお辞儀をした。
  俺はその仕草にドキリとした。
  え? 何。何で、俺、またドキリとしてんの。
  っていうかさっきまで広瀬のことは恋じゃなかったとか思ってたくせに俺って何なの。
  俺はそう思いながらも友達と音楽室へ行く広瀬の姿が見えなくなるまで見てしまっていた。

  その日は珍しく相田は白野と学校帰りに一緒に行きたいお店があるからと涼一とは別に帰ると言い、俺は偶然にも涼一と同じタイミングでバトミントン部の部活動が終わったので、涼一と帰ることにした。
「なあ、涼一」
  四季高校の門を出てすぐに俺はそう言った。
「ん? 何?」
「女子にさ笑顔でペコリとお辞儀されて、ドキリとする気持ちって何だと思う?」
  俺は涼一から返ってくる答えは1つしかないだろうと思いながらも何故か涼一にそんなことを聞いた。
「え? そんなの決まってるじゃん。その女子のことが好きってことだろ」
  涼一からはやっぱり俺が思っていたとおりの答えが返ってきた。
「まあ、お前ならそう言うと思ったけど」
「何だよそれ」
  涼一は俺の言葉に笑いながらそう言った。
  でも、その後、
「でもさ、実、俺はお前が綾香のことを好きだって言ったけど、その後さ、本当は俺が綾香に告白するように奮起させただけってあの時は言ってくれたじゃん。俺はそれは凄く嬉しかったけど、でもさ、俺なら本当に好きだったら、例え好きな相手に好きな奴がいても、諦められないと思うんだ。勿論、色んな考え方があるだろうし、俺はまだ子どもで、実は俺よりも中身が大人だから、そう思えるのかもしれないけど。まあ、相手が結婚するとかなれば別だけどさ」
  涼一はそう言い、更に、
「だからさ、俺からしたら実は綾香のことを好きだったのかもしれないけど、それは何ていうか、守ってやりたいっていう、兄さん的な気持ちからの好きだったんじゃないかって俺は思うんだ。だから、今、実が気になってる女子が実の本当の恋じゃないかなって思うんだけど」
 そう言った。
「涼一……」
  確かに俺は相田のことは昔から守ってやりたいって思いが強かった。
  そして、涼一と一緒に笑っている相田が好きだった。
  だから、俺は相田が好きでも涼一と彼氏と彼女の関係に相田がなった時は嬉しかった。
  でも……。
  広瀬に対してはそうじゃない。
  多分、俺はもし広瀬が涼一の相手だとしたら、きっと喜べない。
  俺はそう思った後、今、涼一が言ったことが解った気がした。
  だから、
「うん、涼一、俺、多分、広瀬に好きな人がいたら嫌な気持ちになるし、諦められないかもしれない」
  涼一にそう言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ブラコン姉妹は、天使だろうか?【ブラてん】

三城 谷
恋愛
本作の主人公『椎名崎幸一』は、青陽学園に通う高校二年生。この青陽学園は初等部から高等部まで存在するマンモス校であり、数多くの生徒がここを卒業し、世の中に名を残してきている超エリート校である。そんな高校に通う幸一は学園の中ではこう呼ばれている。――『卑怯者』と。 そんな卑怯者と呼ばれている幸一の元へやってきた天才姉妹……『神楽坂美咲』と『神楽坂美羽』が突然一人暮らしをしている幸一の家へと訪ねてやって来た。とある事情で義妹となった神楽坂姉妹は、幸一以外の男子に興味が無いという状況。 これは天才姉妹とその兄が描く物語である。果たして……幸一の学園生活はどうなる? ※表紙も僭越ながら、描かせていただきました。仮の物で恐縮ですが、宜しくお願いします。

【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」 「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」 「ねえ、返事は。」 「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」 彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。

自己顕示欲の強い妹にプロデュースされる事になりました

白石マサル
恋愛
人は誰でも自己顕示欲を持っている。それが大きいか小さいかの違いはあるが。 中学時代からヲタクでぼっちだった主人公は高校一年の終業式の後、自分の所為で虐められている妹を見てしまう。 妹は気丈に振る舞っていたが、自分の所為で妹が虐められるのは嫌だと奮起する。 「どうすればリア充になれる?」 この言葉を切っ掛けに妹プロデュースの元、リア充になるべく特訓を開始する。 そんな中、妹の思惑を知った主人公だが、妹の為に学校一のリア充を目指すのだった。

【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓
恋愛
 十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。  だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。  そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。  しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――

隠れ御曹司の愛に絡めとられて

海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた―― 彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。 古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。 仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!? チャラい男はお断り! けれども彼の作る料理はどれも絶品で…… 超大手商社 秘書課勤務 野村 亜矢(のむら あや) 29歳 特技:迷子   × 飲食店勤務(ホスト?) 名も知らぬ男 24歳 特技:家事? 「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて もう逃げられない――

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

好きでした、昨日まで

ヘロディア
恋愛
幸せな毎日を彼氏と送っていた主人公。 今日もデートに行くのだが、そこで知らない少女を見てから彼氏の様子がおかしい。 その真相は…

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

処理中です...