「君としか恋はしたくない」

愛理

文字の大きさ
上 下
30 / 78

第30話「違和感の正体は」

しおりを挟む
「え? どういうこと?」
 俺は実からの突然の告白に戸惑いを隠せずに思わずそう言った。
 俺達2人はいつの間にか立ち止まっていて、向かい合わせに立っていた。
「その通りの意味だよ。俺もずっと相田のこと小学生の時から好きだったんだ」
「嘘……」
 俺はもう1度、はっきりと言われた実が綾香を小学生の時からずっと好きだったという言葉がどうしても信じられずにそう言った。
「嘘じゃねぇよ。でも、俺はこのこと誰にも言う気はなかったよ。だって、お前らはもう俺が出会った時から2人でいつも一緒にいたし、お互いに好き同士だって解ってたから。それにお前らが幸せそうにいるならそれでいいやって思ってた」
「実……」
「それにお前はいつも必死に相田のことを守ろうとしてたしな。だから、俺も一緒になって相田を守ろうって思ってた」
「…………」
「でも、高校生になっても相田にお前絡みの嫌がらせが続いて……だから、俺はお前に相田との関係を進展させてほしかった。さっきも言ったけど、相田がお前の彼女に正式になったなら、少しは相田に嫌がらせする奴も減ると本当に思ったから」
「…………」
「でも、お前は俺が何度言っても相田に告白はしないし。それは今もだし。だから、俺、もういいかなって思って。今までお前の恋を応援してたけど、もうやめるわ。そして、俺もこれからは相田にどんどんアプローチしていく」
「実……」
「言っとくけど、冗談なんかじゃないから。今まで我慢してきた分、大胆にいくから」
「実……」
「お前さ、相田だってモテるの知ってるだろ? それにお前もいつも心配してたじゃん。相田が他の奴になびかないかってさ。でも、それだけ。何で好きだって相田に伝えないわけ?  想いを伝えないと幼馴染の関係から抜け出せないってお前が一番よく解ってるはずだろ?」
「…………」
「そういうことで、今から俺とお前はライバルだから、もう今日はここで別れよう」
 そう言い実は俺を置いて、歩いていってしまった。
「実……」
 俺は実の名前を呟いた後にこの間、実に感じた違和感を思い出した。
 俺が実に違和感を感じたのは綾香とのことを話していた時……。
 そうか。だから、俺はあの時、実に対して違和感を感じたんだ。
 いつもなら本当に俺と綾香のことを応援してくれるのにあの時は何だかそんな感じには見えなかったから。
 だけど、実も綾香のことを小学生の頃からずっと好きだったなんて。
 でも、幾ら実でも俺は綾香のことは絶対に譲れない。
 だから、俺も今日から実のことをライバルだと思うことにするよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編

タニマリ
恋愛
野獣のような男と付き合い始めてから早5年。そんな彼からプロポーズをされ同棲生活を始めた。 私の仕事が忙しくて結婚式と入籍は保留になっていたのだが…… 予定にはなかった大問題が起こってしまった。 本作品はシリーズの第二弾の作品ですが、この作品だけでもお読み頂けます。 15分あれば読めると思います。 この作品の続編あります♪ 『ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編』

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

男装の公爵令嬢ドレスを着る

おみなしづき
恋愛
父親は、公爵で騎士団長。 双子の兄も父親の騎士団に所属した。 そんな家族の末っ子として産まれたアデルが、幼い頃から騎士を目指すのは自然な事だった。 男装をして、口調も父や兄達と同じく男勝り。 けれど、そんな彼女でも婚約者がいた。 「アデル……ローマン殿下に婚約を破棄された。どうしてだ?」 「ローマン殿下には心に決めた方がいるからです」 父も兄達も殺気立ったけれど、アデルはローマンに全く未練はなかった。 すると、婚約破棄を待っていたかのようにアデルに婚約を申し込む手紙が届いて……。 ※暴力的描写もたまに出ます。

私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。 しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。 それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…  【 ⚠ 】 ・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。 ・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

処理中です...