「君としか恋はしたくない」

愛理

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第6話「このままじゃ……」

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    今日は綾香達、小人役も一緒に放課後は合同練習をしていた。
 そして、俺が一番嫌いなあの白雪姫とのキスシーンの練習を今、しているところだった。
 もう俺はこれから白雪姫を一番、大嫌いな物語と言えそうな程、本当に俺はこのキスシーンの練習が大嫌いだった。
 それに本当に笹原は必要以上に俺に絡んでくるし……。
 でも、綾香も小人役の男子と仲良さそうに話していて、俺はそれを見て、胸が痛んだ。
 だって、綾香が俺や実以外の男子とあんなに仲良さそうに話しているのを見るのなんて初めてで……。
 俺はこのままじゃ綾香が他の男子に取られるんじゃないかとひやひやしていた。
「ね、里川くん、もうすぐ本番だね。劇が終わっちゃうのは寂しいかも。だって、里川くんとせっかくこんなに仲良くなれたのに」
 笹原はそう言い、何を思ったか俺の腕に自分の腕を絡みつけてきた。
 俺は驚いて思わず笹原を見た。
 でも、すぐに振り払うべきだったと後悔した。
 だって、俺の腕に笹原が自分の腕に絡みつけているところを綾香にバッチリ見られてしまったから。
「ちょっ。何っ」
 だから、俺は慌てて笹原の腕を振り払った。
「照れなくていいのに」
 笹原はにこっと笑ってそう言った。
 照れてないっていうの。
 というかその自信は何処から来るんだよ。
 やっぱり、中学の時に美人コンテストで優勝したからか?
 でも、俺は別に笹原の顔なんて全然、好みじゃない。
 だって、俺が大好きなのは綾香だから。
 綾香以外、可愛いとか綺麗とか思ったことないんだよ。
 まあ、綾香は綺麗というよりは可愛いだし、俺は綺麗よりも可愛い方が断然好きだし。
 というか綾香の存在自体が全て俺にとっては可愛いでしかないんだよ。
 だから、今の俺にとってこの状況は非常によろしくないんだ。
 そう思って、俺は劇の練習の休憩中に綾香に今日は一緒に帰ろうと言い、綾香も頷いてくれて俺達は久し振りに2人で一緒に下校することになった。

 2人で一緒に下校することになって良かったものの、何故か今の俺達は全然、会話が弾まずにいた。
 何だろう。この感じ。今までこんなことなかったのに……。
 やっぱり、劇の練習が始まってから、俺と綾香の距離がかなり開いた気がする。
 家も隣同士で、朝も一緒に登校して、今もこんな風に2人で帰ってるっていうのに……。
 そして、手も繋いでいるっていうのに……。
 そんなことを俺が思っていると、
「ねぇ、涼一」
 綾香が急に口を開いた。
 俺達は四季高校には電車通学で、最寄りの駅から家までは徒歩で7分くらいで、今はもうすぐ家に着くという場所にいた。
「ん? 何?」
 俺は綾香にはできるだけいつも優しい口調で話すように心がけていた。
 別に皆の王子様になる気は全然ないけど、綾香には王子様というかいつも紳士でいたいから。
「私と一緒にいて、疲れない?」
 綾香からは俺にとってはまた爆弾のようなことを言われた。
「何で?」
「……うん、何となく。それに私が涼一といたら邪魔になるんじゃないかなあって思って」
「邪魔? 綾香が?」
「うん……」
「もしかして、綾香、俺が笹原のこと好きだとか思ってないよな?」
「え?」
「今日の腕組んでた奴は向こうが勝手に組んできただけだから! 綾香はすぐ目を逸らしたから見てないだろうけど、俺はあの後、すぐに腕を振り払ったから!」
「涼一……」
「あー、もう! おいで」
 そう言い俺は綾香を自分の家に連れていくことにした。 
 そして、今の俺の気持ちを綾香に言うことにした。
 だって、そうしなければ何だかこのままどんどん綾香との距離が離れてしまうような気がしたから。
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