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どうぞ冷めないうちに1
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「この前はすみませんでしたっ!!」
「そんなの全然気にしないでいいから」
身を縮ませながら謝るノアにキアーラはルークに目配せし、横に座っているノアの背中を宥めるように撫でた。
「連日夜中に連れ去ってくるルークが悪い」
「む……」
キアーラの言葉に心外だと思いながらも小さな身体をより小さくするノアにルークも思うところがあるのだろう、「すまない」と小さく謝った。
「ち、ちがいますっ! ルークさんが謝ることなんてなにも……ッ!!」
ブンブンと音がするのではという位に首を横に振って否定する。
「あんな、その……ここで寝てしまって……しかもお誘いして貰ったのに起きないとか……」
先日のディランとの思わず遭遇をした際、色々と限界だったノアは泣きながらルークの腕の中で眠ってしまった。そしてそのまま家まで送り届けて貰っていたのだが、その日の朝は自力で起きることができず、いつまでも顔を出さないノアを心配した母が起こしに来る始末だった。なんとか昼間はいつも通りに過ごすとも連日の寝不足が癒えることはなく、その日の夜にルークが来たのにも気づかぬ程の深い眠りについてしまった。
「何度も名を呼ぼうとも一向に動かぬから死んだかと思った」
「す、すみません……」
名前を呼ぼうと肩を小さく揺すろうとも眠ったままのノアにルークは仕方無いとそのまま城に戻り、キアーラにそのことを伝えると叱られたのだと言う。
ノアはキアーラを見た。
「連日夜中起こされて連れて来られちゃそりゃ起きれるもんも起きれないし、そもそもノアちゃん体調崩しちゃうじゃん」
だからノアちゃんは何にも悪くないし、悪いのはルークだから気にしないのと笑う。
「俺も今度から気をつけよう」
「ほんと気を付けて」
キアーラは呆れた様子を浮かべながら釘を刺す。
「ほらほら、つまんない話はここまでにしてお茶しようよ」
キアーラはテーブルに並んでいる見目可愛らしい手のひらサイズのケーキをひとつ摘まんだ。
「かわいい……」
小さなケーキは丸く、上にクリームやフルーツで彩り豊かにこちらの目を惹いてくる。
「今日は客人誰か聞かれたの?」
「ああ」
「……これもディランさんが作ったんですか?」
「ああ」
「ノアちゃんが食べるからって気合い入りすぎじゃない?」
美味しいからいいけどと、キアーラは二つ目を手に取って口に運ぶ。
「ノアが話したいと望んでくれるならいつでも呼んで欲しいと言っていた」
「あ……」
先日のディランの態度を思い浮かべて「……ボクがここにいるの、ディランさん怒ってますよね……」と俯く。
「ノアちゃんに怒ってなんかいないよ。怒ってたらこんな可愛いらしいケーキ焼かないって」
あの時は驚いたのとノアちゃんがここにいる原因に苛立っていただけだよとキアーラは「食べよ?」とノアの前にケーキをひとつ差し出した。
「原因……」
「目の前にいんじゃん」
視線をルークに向けるも相変わらずの無表情で何を思っているのか分かり難い。否定も肯定せずにケーキを口に運んでいる。
「ルークさんは甘いもの好きなんですか?」
「ああ。ノアは好きか?」
「はい、好きです」
そうかと頷いてからルークは「どうする?」と尋ねてきた。
「え……」
「あれと話すか?」
ルークの言葉にキアーラは眉を寄せた。
「話すのなら場を設けよう」
「ノアちゃんはあいつと何を話したいの?」
「なに……なんだろう……」
キアーラの言葉にノアは考える。
「話したいこと……もですが、ディランさんがボクに何を言いたかったのかなって……」
ディランがノアに何か伝えようとした際、イーサンに遮られたことを思い出す。
「その、ボクは正直に言えば二人に会うまではディランさんに騙されてからかわれていただけなのかなって思ってて……だけど、ルークさんもキアーラさんもディランさんと同じ魔物なのにすごく優しくて、なんだろう……魔物って理由だけで疑うのはダメなんじゃないのかなって、二人に会えてあの時ディランさんはボクに何を伝えなかったのかなって思えるようになれて……感謝しかないです」
ノアは恥ずかしそうに笑いながら頬を指で掻く。
「お二人を見てると魔物って言葉も不適切に思えてきて、何だろう……うまく言えなくてごめんなさい」
「ううん、ノアちゃんはキレイだね」
「……そんなの初めて言われました……」
恥ずかしそうに笑うノアをキアーラがぎゅっと抱き締めてその柔らかそうな頬に自身の頬を寄せる。
「呼び方など気にしない。好きに呼べばいい」
「えーわたしはちょっとイヤだったからノアちゃんの言葉にきゅんってきちゃったよ」
ほんとかわいいっとほおずりを繰り返す。
「二人きりでいいか?」
「あ……」
「はんたいっ!! 同席希望っ!!」
「ノアに聞いているんだが?」
「ばかやろう。あいつの手の早さを聞いただろう?」
突然地を這う様な低い声に驚いてキアーラに視線を向けると勢いよく頬が離れて肩を捕まれた。
「ノアちゃんもお姉ちゃんがいた方がいいよねっ!?」
「え、あ、その……」
「そうなれば俺もいた方がいいだろう」
「いや、ルークはいらない」
「なぜだ?」
ノアを置いてどんどん話をすすめる二人にどうすればと思いながら、ノアはディランと二人きりで以前のように話すことができるのだろうか。どうすることが正解なのだろう。ノアは考えれどもわからない。
「あの……」
「決まったか?」
「お姉ちゃんも一緒よね?」
勢いよく向けられた視線に少しだけ怖じ気つきながらもノアは口を開いた。
「その、ディランさんの考えに従いますので……」
皆一緒なのか二人きりなのかはディランさんに任せますと伝えると、キアーラは顔を押さえて天を仰ぎ、ルークはそうかと頷いた。
「そんなの全然気にしないでいいから」
身を縮ませながら謝るノアにキアーラはルークに目配せし、横に座っているノアの背中を宥めるように撫でた。
「連日夜中に連れ去ってくるルークが悪い」
「む……」
キアーラの言葉に心外だと思いながらも小さな身体をより小さくするノアにルークも思うところがあるのだろう、「すまない」と小さく謝った。
「ち、ちがいますっ! ルークさんが謝ることなんてなにも……ッ!!」
ブンブンと音がするのではという位に首を横に振って否定する。
「あんな、その……ここで寝てしまって……しかもお誘いして貰ったのに起きないとか……」
先日のディランとの思わず遭遇をした際、色々と限界だったノアは泣きながらルークの腕の中で眠ってしまった。そしてそのまま家まで送り届けて貰っていたのだが、その日の朝は自力で起きることができず、いつまでも顔を出さないノアを心配した母が起こしに来る始末だった。なんとか昼間はいつも通りに過ごすとも連日の寝不足が癒えることはなく、その日の夜にルークが来たのにも気づかぬ程の深い眠りについてしまった。
「何度も名を呼ぼうとも一向に動かぬから死んだかと思った」
「す、すみません……」
名前を呼ぼうと肩を小さく揺すろうとも眠ったままのノアにルークは仕方無いとそのまま城に戻り、キアーラにそのことを伝えると叱られたのだと言う。
ノアはキアーラを見た。
「連日夜中起こされて連れて来られちゃそりゃ起きれるもんも起きれないし、そもそもノアちゃん体調崩しちゃうじゃん」
だからノアちゃんは何にも悪くないし、悪いのはルークだから気にしないのと笑う。
「俺も今度から気をつけよう」
「ほんと気を付けて」
キアーラは呆れた様子を浮かべながら釘を刺す。
「ほらほら、つまんない話はここまでにしてお茶しようよ」
キアーラはテーブルに並んでいる見目可愛らしい手のひらサイズのケーキをひとつ摘まんだ。
「かわいい……」
小さなケーキは丸く、上にクリームやフルーツで彩り豊かにこちらの目を惹いてくる。
「今日は客人誰か聞かれたの?」
「ああ」
「……これもディランさんが作ったんですか?」
「ああ」
「ノアちゃんが食べるからって気合い入りすぎじゃない?」
美味しいからいいけどと、キアーラは二つ目を手に取って口に運ぶ。
「ノアが話したいと望んでくれるならいつでも呼んで欲しいと言っていた」
「あ……」
先日のディランの態度を思い浮かべて「……ボクがここにいるの、ディランさん怒ってますよね……」と俯く。
「ノアちゃんに怒ってなんかいないよ。怒ってたらこんな可愛いらしいケーキ焼かないって」
あの時は驚いたのとノアちゃんがここにいる原因に苛立っていただけだよとキアーラは「食べよ?」とノアの前にケーキをひとつ差し出した。
「原因……」
「目の前にいんじゃん」
視線をルークに向けるも相変わらずの無表情で何を思っているのか分かり難い。否定も肯定せずにケーキを口に運んでいる。
「ルークさんは甘いもの好きなんですか?」
「ああ。ノアは好きか?」
「はい、好きです」
そうかと頷いてからルークは「どうする?」と尋ねてきた。
「え……」
「あれと話すか?」
ルークの言葉にキアーラは眉を寄せた。
「話すのなら場を設けよう」
「ノアちゃんはあいつと何を話したいの?」
「なに……なんだろう……」
キアーラの言葉にノアは考える。
「話したいこと……もですが、ディランさんがボクに何を言いたかったのかなって……」
ディランがノアに何か伝えようとした際、イーサンに遮られたことを思い出す。
「その、ボクは正直に言えば二人に会うまではディランさんに騙されてからかわれていただけなのかなって思ってて……だけど、ルークさんもキアーラさんもディランさんと同じ魔物なのにすごく優しくて、なんだろう……魔物って理由だけで疑うのはダメなんじゃないのかなって、二人に会えてあの時ディランさんはボクに何を伝えなかったのかなって思えるようになれて……感謝しかないです」
ノアは恥ずかしそうに笑いながら頬を指で掻く。
「お二人を見てると魔物って言葉も不適切に思えてきて、何だろう……うまく言えなくてごめんなさい」
「ううん、ノアちゃんはキレイだね」
「……そんなの初めて言われました……」
恥ずかしそうに笑うノアをキアーラがぎゅっと抱き締めてその柔らかそうな頬に自身の頬を寄せる。
「呼び方など気にしない。好きに呼べばいい」
「えーわたしはちょっとイヤだったからノアちゃんの言葉にきゅんってきちゃったよ」
ほんとかわいいっとほおずりを繰り返す。
「二人きりでいいか?」
「あ……」
「はんたいっ!! 同席希望っ!!」
「ノアに聞いているんだが?」
「ばかやろう。あいつの手の早さを聞いただろう?」
突然地を這う様な低い声に驚いてキアーラに視線を向けると勢いよく頬が離れて肩を捕まれた。
「ノアちゃんもお姉ちゃんがいた方がいいよねっ!?」
「え、あ、その……」
「そうなれば俺もいた方がいいだろう」
「いや、ルークはいらない」
「なぜだ?」
ノアを置いてどんどん話をすすめる二人にどうすればと思いながら、ノアはディランと二人きりで以前のように話すことができるのだろうか。どうすることが正解なのだろう。ノアは考えれどもわからない。
「あの……」
「決まったか?」
「お姉ちゃんも一緒よね?」
勢いよく向けられた視線に少しだけ怖じ気つきながらもノアは口を開いた。
「その、ディランさんの考えに従いますので……」
皆一緒なのか二人きりなのかはディランさんに任せますと伝えると、キアーラは顔を押さえて天を仰ぎ、ルークはそうかと頷いた。
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