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深夜のデート

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平助さんが戻って来た。
無事に修行の成果を実らせ、異次元の開放に成功したことを平助さんが喜んでくれると思っていた俺の期待は見事に裏切られた。

「えええ。一宇君、出来たんですか。2週間くらい留守にしても大丈夫だと思っていたのに、、。一宇君。私は君を甘く見ていたようです。」

これは絶対に喜んでない、、、。

「じゃ、見せてもらいましょうか。」

俺は、異次元を開けて中から、政宗守を取り出す。平助さんは明らかにガッカリした顔をして「はい。合格です。」と言った。

「でも、ずいぶんと、広いですね。」俺の出した異次元を見て平助さんが感心したように言った。
今日は最初に俺が出した時と同じサイズ2m四方のサイズだった。

俺はもっと広く出来ますよと言って、さらに異次元のスペースを広げて見せる。
平助さんは、自分の作るスペースより大きいと言って中に入る。

俺がどのように異次元を開いたのか話すと、方法まで規格外ですねと言って笑った。

「せっかく一宇君とお近づきになるチャンスだと思って喜んでいたのですが、私が教えることは何もなさそうです。」
と残念そうに平助さんは言った。

「もう、宗助から聞いたと思いますが、君のおばあ様の安芸さんは私の初恋の人でしたから。君の瞳は安芸さんにそっくりです。」
平助さんも宗助さんと同じことを言った。双子って同じようなものの見方をするのかな?俺はそんなことを考えた。

そう言えば、宗助さんと平助さんの写真が祖母のアルバムに会ったのを思い出してそのことを彼に話すと、ぜひ見せてほしいと頼まれる。平助さんが杜人家に宿泊しているのを思い出して、祖母の部屋にありますよ。と言うと彼は顔を少し赤くして「安芸姉ちゃんの部屋に勝手に入るなんてできませんよ。」と言った。俺は明日、杜人家を訪ね祖母のアルバムを平助さんに見せる約束をして、平助さんと別れた。

ノエルのお陰で、異次元も開けるようになった。あのスペースは色々と使い道がありそうだ。部屋のいらない荷物を保管したり、、、。と言っても、俺はあまり物を持っていない。部屋の中の物すべてを移動してもかなり余りそうだ。

本堂を出ると、大きくて明るい月がぽっかりと出ていた。
俺は月を見ながら、自分はいつまでここに隠れて生活しなければならないのか考えた。
都会が大好きな稲葉ほど、俺はここでの生活は苦痛ではない。でも市内の厳戒例が一部解除になったとはいえ、市民の生活が不便なことに変わりはない。このままではいけないという事だ。

「一宇。なにしてるの?」
アヤメが声を掛けてくる。同じ建物で生活しているのに、アヤメとこんな風に話をするのは、随分と久しぶりのように思う。

「月を見てたんだよ。」

「そう言えば、異次元。無事に出現させることができたんですってね。しかも、超特大サイズのやつを。平助兄さまが、教える前にできちゃったってガッカリしてたわ。」

「ねぇ。アヤメは、早く刑部の家に戻りたい?」

「どっちでもいいわ。ここには皆もいるし、白神の逮捕と、一宇の護衛は刑部家の当主である私の役目でもあるしね。、、ただ。」

「ただ?」

「高梨さんとは、早く会いたい。」

「俺もだよ。高梨さん元気かなって時々考えるんだ。」

「それなら、なおさら。この東門を守って、私たちの愛する人たちを守らなくっちゃ。」

「だな。」

「アヤメ。夜明けまでまはまだ時間もあるし。バイクでちょっと出かけてみないか?」

「行きたい!ガソリンは大丈夫?」

「大丈夫!実は、山田さんに頼んでパーツ屋から買ってきてもらったんだ。」

「じゃ、行きましょ。」

俺は、アヤメと小一時間ほど出かけてくると山田さんに伝える。
「デートか?本田君。類とゆずには内緒にしておくから。」と山田さんが気を遣う。
デート、、。ならいいんだけど。これは、残念な事にただの気晴らしドライブだ。バイクを出してくると、アヤメがヘルメットをかぶって待っていた。

「時間がもったいないわ。行きましょう。」
俺たちはぺスパに乗り、この辺の野山の道を走る。

祖父母が初めて出会った場所に俺はバイクを停めた。ここからは夜空の月が良く見える。

「ここは?」

「ここは、俺のじいさんとばあさんが初めて会った場所なんだ。そん時もこんな風に月が出ていたよ。」

俺はここで、勝也と安芸がどうやってであったのかを詳しく話した。そうして安芸と会えなかった、じいさんがこのベスパを買い、ここで二人が再会を果たしたことなどを話す。

「じゃ、このバイクは大事な二人の思い出の品なのね。」

「俺も過去に行くまで知らなかったんだけどね。バイクの免許取った時に、じいさんがそれまで触らせてくれなかったこのバイクを「一宇。これお前にやる。大事にしろよ」って言って俺にくれたんだ。」

「二人は出会いから、最後まで運命の糸に結ばれていたみたいね。最後は、悲しい別れだったけど今は一緒に同じ社で仲良く眠っている。」

「だよな。まさに運命の出会いって感じで出会ったもんな。」

「俺たちの、、。」
「私たちの、、。」

二人同時に言いかけて、俺たちは二人で笑い出す。

言いたかった内容はきっと一緒だったと思う。俺たちの出会いは。スマ眷からの紹介。でも、出会いはどうであれ、俺だけは、勝手に、、、アヤメに運命を感じていた。

「帰ろうか。平和な世の中になったら、もっと遠くまで行こう!」

「そうね。平和な世の中になったら、きっと。」

俺たちは、そこで無言で指切りをした。

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