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トキオ ②
しおりを挟む最後にやって来たゴールデン商店街のショップが見つからない、、、。
やっぱりゴールデン商店街にジュエリーショップはないじゃん。しかも、リストに記入された住所は、事もあろうか「高橋モータース」。パーツ屋の親父の店だった。パーツ屋の親父は手先は器用だが、センスに問題ありだと思う。とてもシルバージュエリーなんてしゃれたシロモノは作れないだろう。
でも、ゴールデン商店街の生き字引のような爺さんだ。何か知ってるかもしれない。俺は高橋モータースで聞いてみることにした。
半開きのシャッターから中に入る。おやじはいつものように店内に置かれたボロボロのソファーで居眠りをしている。
「おい。親父さん。」
俺が声を掛けると、彼はヨダレを拭きながら面倒そうに起き上がった。
「なんだ、一宇か久しぶりだな。ガソリンでもなくなったか?」
「今日は、客じゃないよ。聞きたいことがあるんだ。」
目を覚ましたおやじはポットのお湯でインスタントコーヒーを二杯作って俺の前と自分の前に置く。
「なんだ聞きたい事って。」
「この辺にシルバーのアクセサリーの店なんかないよな。」
「あるぜ。最近オープンしたんだ。知らなかったのか?」
「えっ。どこにオープンしたの?」
あったんだ、、、。
「がははははは。ここだ!ここの二階を貸してるんだよ。」
「えええ。でも看板出てなかったぜ。」
「そんな事ねぇよ。表をきちんと見てみろ、あ、シャッター閉まってたか、、、。これじゃ、隠れててわかんないよな。」
「こんな怪しい店で、看板も出てなかったら客なんか来ねえだろ。」
「いいんだよ。アイツは他の店の下請けとかインターネットで注文受けてるから。人見知りが激しくって、接客なんか出来やしねぇよ。それであいつになんか用なのか?」
「シルバーショップのオーナーは親父さんのの知り合いなの?」
「ああ、俺の孫だ。」
「へぇ~。お孫さん、、、。今日はヴァンパイアポリスの用事で来たんだよ。聞きたいことがあってね。」
「わかったよ。今、呼ぶから。おーい。翔也!ちょっと下りて来い!」
親父が大声で孫を呼び出す。
「なあに。おじいちゃん。」
二階から降りて来た親父の孫は、親父とは似ても似つかない華奢で線の細い感じのする男の子だった。
「おじいちゃん。お客さんがいるなら先に言ってよ~。」彼は階段の陰に隠れてモジモジと出てこない。見た目だけでなく、性格もまるっきり親父とは違うらしい。
「こいつは、本田一宇ってんだ。俺の友だちの孫なんだけどお前に話があるってよ。」
「僕に話?なんですか、、、。」
彼は階段の陰に立ったまま、蚊の鳴くような声で聞いてきた。
「翔也、失礼だろ。せめてこっちに来て話をしろよ。」
そう言われて彼は、ようやく階段の下から出てきて俺の前に座った。
「はじめまして。本田一宇です。今日は、君に聞きたい事があるんだけど。」
「はい、、、なんですか?」
彼が初めて顔を上げる。可愛らしい顔立ちで女の子ののようだった。この二人にDNAの接点が少しでもあるとはしんじられない。彼は俺の顔をしげしげと見つめている。
「あああああ。東子さんの知り合いの方ですねぇ。」
彼が初めてまともな声の音量で話す。
「と、うこさん?」
しかも、東子という名前は聞いたことはない。誰だ?
「シルバーショップカオスのオーナーですよ。彼女、僕の師匠なんです。」
「ああああああ。彼女、東子さんって言うんだ知らなかった、、、、。」
「僕、東子さんのところであなたの彫刻見ました。あれ素敵ですよね~。」
「、、、、、、、。」
人に見せたんだ、、、。
「それで、僕に聞きたい事ってなんですか?」
俺は気を取り直して、昨日、シルバーショップカオスで東子さんから聞いた話を翔也に説明した。
全てを聞いた彼は、二階に駆けあがって行って、何かを持って戻って来た。
「これですか?」
彼が差し出したのは、まさにそれだった。
「どんな人が注文してきたの?」
「これ、、、。インターネットで注文受けたんで。どんな人かは分からないんです。寸法とか模様なんかもメールで詳しく説明してきました。」
「これって、何か犯罪に関わっているんですか?」
「十中八九、そうだと思う。これ、預かっていいかな?」
「ああ、はい。どうぞ、、、。僕、面倒な事になるのかな?」
彼が不安げにつぶやく。
「それは大丈夫。君の事は俺からヴァンパイアポリスに話しておくよ。」
「ありがとうございます。」
「これの受け渡しはどうなってるの?発送するの?」
「いいえ、明日取りに来るってメールで言ってました。」
「明日かぁ、、、。それじゃ、明日、やつが受け取り来る時間帯に、ここの場所、ヴァンパイアポリスに貸してくれる?」
俺は、親父に聞いた。
「あったり前田のクラッカーよ。俺のかわいい孫を犯罪に巻き込もうだなんて、そんな奴はふん捕まえてもらわねぇと。」
どうやら親父は怒り心頭に発している様だ。
俺は、翔也の作った謎のオブジェを持って一路ヴァンパイアポリスに戻った。
ヴァンパイアポリスには他の眷属隊が戻っていた。
俺は、翔也の作ったオブジェと今日の成果を仲間に話す。
「それじゃ、明日はゴールデン商店街で捕り物かぁ。」
山田さんがそんなことを言った。
辺りが暗くなり、ヴァンパイアの捜査官たちが続々と出勤してきた。
俺の話を聞いてチームはすぐにミーティングに入る。明日は高橋モータースを舞台に大捕り物が行われることになった。
トキオを捕まえるための計画が細部まで詰められる。もしかすると、トキオが来ない事もあり得ると杉山さんは冷静に言った。
「本田さん、もう時間ですよ。帰宅してください。この後に決まったことは刑部さんから聞いて下さい。」
時計を見るともうすぐ19時になろうとしている。
俺はあわただしく挨拶をして、刑部家へ急いだ。
家に帰ると、ゆずが可愛らしいワンピースを着て俺を待っていた。
「お館様、こんなに早くに、お帰りになるとは、体調がお悪いのですか?」
「ちがうよ。今日は昼から働いたから早くに仕事が終わったんだよ。」
「それは、すばらしいですね。」
ゆずは喜んでワンピースの裾をひらひらさせている。
「せっかくゆずが可愛らしいワンピースを着てるから、お出かけしようか。」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ。お出かけでございますか!お館様とゆずの二人で?」
「そうだよ。八木山のベニーランドに行こう!」
ゆずの興奮が最高潮に達する。
これ以上興奮させては出発前に疲れてしまいそうだ。
高梨さんは、ワンピースに良く似合う真っ赤なポシェットをゆずに持たせ、何やら話しかけていた。
「アヤメお嬢様が子どもの頃にお召しになっていたものでございますよ。大切に保管していて本当によかった。」
高梨さんは俺にこっそり教えてくれた。子どもの頃のアヤメ、可愛いかったんだろうなぁ。
俺は興奮したゆずを乗せて電気自動車で八木山ベニーランドに向けて出発した。
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