上 下
119 / 166

第十九代白神家当主 ⑧

しおりを挟む
白神家の玄関は酷い状態だった。玄関のガラスに石が投げられ、ガラスが粉々に砕け散乱している。


「守人殺し!出て来い!」「守人殺しの白神は、ここから出ていけ!」
外からひどいヤジが飛んでくる。
それを聞いた、ゆずが外へと飛び出そうと靴を履いた。

「待て!ゆず。ここは俺に任せてくれないか?」

「お館様に?」

俺は、ゆずに出てこないように言って一人、玄関から外に出る。

「出て来たぞ。」「守人殺しの白神め!」

外にいたのは、男ばかり7・8人の集団だった。中には子どもや老人の姿も見える。

「白神のやつじゃないな。お前は誰だ!」
体の大きな男が大声で俺を威嚇する。

「あなた達こそ誰ですか。玄関に石投げたりして最低だなぁ。」

「白神の家に味方する奴なんかろくでもない奴に決まってる!こいつから先にやっちまおうぜ。」
周りにいる別の男がヤジを飛ばす。

「まったくもう。ろくでもないのはあなたたちの方でしょ。人ん家の玄関のガラス割ったり、外でくだを撒いたり。白神の家の人たちがあなた方に一体何をしたって言うんですか。」

「俺らの大切な守人様を殺したんだよ。」

「今現在、ここに住んでる人たちが殺したんですか?」

「そ、それは違うけど。白神のやつらは全て同罪なんだよ。早くここから出ていけばいいんだ!」
男の言ってることは支離滅裂だ。

「はーい。ちょっと質問なんだけど、ここは、あなたの土地なんですか?」

「ち、違うけど。ここは白神家が守人を助けるお役目に就くその褒美として与えられてる家なんだよ。お役目もしてないくせに、ここに住み続けるなんてずうずうしいんだよ。白神は。」

「ああ、それなら白神家は、また守人と共に東門を守る任務に復帰しましたから問題ありません。あなた達は、白神の人たちに謝罪して。自分たちで壊したガラスをかたずけて、今日は帰ってください。壊した玄関のガラスの代金は、そこのお爺さん。あなたが明日払いに来てくださいね。」
俺は、痩せて意地悪い顔をした爺さんを指さして言う。

「なにぃ。お前、区長さんを、お爺さんだとぉ。」

「えええ。お爺さん。区長なんですか?いい年して、しかもみんなをまとめる区長なのにバカな若者と一緒になってこんな恥ずかしいことをしてるんですか?止めた方が良いですよ。」

「こいつふざけんな。やっちまえ!」
若い男が3人、俺の方にじりじりと間合いを詰めてくる。俺は腰に下げていた政宗守を鞘から半分ほど抜く。俺の考えが正しければ、これくらいで奴らを倒せるはずだ、全部抜いてしまっては彼らに酷いケガを負わせてしまう可能性がある。もし、俺の読みが外れていても、こいつらにボコボコにされるくらいで済むだろう。

ドクドクドクドク、、、。俺の心臓が昨日より少し軽いビートを刻み始める。
良しいい感じだ。刀を鞘に戻す。その瞬間男3人が一斉に俺に飛びかかって来た。

遅い!彼らの動きが、まるでスローモーションのように見える。

俺は、地面を蹴って水平に飛びあがり三人をよける。予想以上に高く飛び上がったってしまったみたいだ。男たちは2mほど下で口をあんぐりと明けて驚いている。

開予想以上に力が出てしまっているのかもしれない。少し手加減が必要なようだ。

地面に飛び降り、次々と男たちの向う脛に軽く蹴りを入れる。
男たちはがっくりとひざを折り、向う脛を押さえながら痛みに涙を流していた。

残りの男たちを確認する。男たちは全部で8人。俺に足を蹴られた3人は既に戦意喪失しているから大丈夫だろう。

爺さんと、太った子供は戦力外。そうなると残るは、3人。俺は体の大きな3人の男たちを睨む。

「おい、今日は帰るぞ!」
区長の爺さんが一声で、俺に脛を蹴られた3人を残った3人が抱えて脱兎のごとく男たちが逃げ出した。

「おーい。壊したガラスかたずけて行けよ。もう。明日、ガラス代弁償しに来いよ!」

俺が後ろから声を掛けるが、奴らは一目散に逃げて行った。

「お館様。大丈夫ですか!」
ゆずが玄関から出てくる。

「ゆず、俺の言うことを守って出てこなかったんだな。偉いぞ。」

「当然ですよ、お館様のお言いつけは、白神家当主にとっては絶対でございますから。」
そう言ってゆずは笑った。

このままにしてはおけない。こんな屈辱的な生活をこれ以上白神家にさせておくわけにはいかない。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

深海の星空

柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」  ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。  少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。 やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。 世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

ハッピークリスマス !  非公開にしていましたが再upしました。           2024.12.1

設樂理沙
青春
中学生の頃からずっと一緒だったよね。大切に思っていた人との楽しい日々が この先もずっと続いていけぱいいのに……。 ――――――――――――――――――――――― |松村絢《まつむらあや》 ---大企業勤務 25歳 |堂本海(どうもとかい)  ---商社勤務 25歳 (留年してしまい就職は一年遅れ) 中学の同級生 |渡部佳代子《わたなべかよこ》----絢と海との共通の友達 25歳 |石橋祐二《いしばしゆうじ》---絢の会社での先輩 30歳 |大隈可南子《おおくまかなこ》----海の同期 24歳 海LOVE?     ――― 2024.12.1 再々公開 ―――― 💍 イラストはOBAKERON様 有償画像

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

居候高校生、主夫になる。〜娘3人は最強番長でした〜

蓮田ユーマ
青春
父親が起こした会社での致命的なミスにより、責任と借金を負い、もう育てていくことが出来ないと告白された。 宮下楓太は父親の友人の八月朔日真奈美の家に居候することに。 八月朔日家には地元でも有名らしい3人の美人姉妹がいた……だが、有名な理由は想像とはまったく違うものだった。 愛花、アキラ、叶。 3人は、それぞれが通う学校で番長として君臨している、ヤンキー娘たちだった。 ※小説家になろうに投稿していて、アルファポリス様でも投稿することにしました。 小説家になろうにてジャンル別日間6位、週間9位を頂きました。

処理中です...