上 下
104 / 166

ヘイトクライム(憎悪犯罪)の親玉 ⑫

しおりを挟む
「まず。君たちが今日ここに来たのは、おじさんの犯罪計画について知りたかったからなんでしょ?」

「犯罪計画って何のことだ!君たちは何かを誤解しているようだ。お前たちはヴァンパイアだろ。人間にこんなことをして許されると思っているのか?また戦争になるぞ!」

「嫌だな~。おじさん。自分で白状しないでよ~。僕がアヤメに話したいんだからさぁ。」

「それって、どういうこと?」

「人間とヴァンパイアを再び戦争状態にするのが、このおじさんの望みなんだよ。あ、ちょっと違うか。おじさんを操っている男の望みと言うべきかな。」

「何を言ってるんだ、君は。戦争なんか望んでるわけないだろ、我々、ヴァン共反会の主張は、人間とヴァンパイアの居住区の分けてだな、、、。」

「おじさん。説明は結構ですよ。もう頭の中を拝見しましたからね。だいたい、おじさんは金で動く操り人形でしょ。ちょっと黙っててください。」
大野は、訳が分からないと言う顔をしていたが大人しく床に座っていることにしたようだ。

「ヴァン共反会がヴァンパイアポリスに対して爆弾テロを計画してるみたいですね。でも、首謀者はこの脂ギトギトおじさんじゃない。しかし、最近はこの男のビジョンを良く見せられますねぇ、」

「誰なの?」

「このおじさんは、モリって聞いてるみたいですけど、この前の白髪のヴァンパイアですよ。」

白神か、、、。俺はポケットから財布を出し、中から祖母と白神の写った写真を取り出し司さんに渡す。

「あー。そうそう。この写真だとずいぶん若いけど、この男に間違いないですよ。でも、なんで本田君がこの写真を?」

「お兄様、それは今度のお休みに私が説明するから、、、。」
アヤメが、話がそっちに逸れるのをうまいこと誤魔化してくれた。今日は山田さんもいるのでここでその話はマズい。

「そうだね。じゃ、続けるよ。この男は腕が悪い三流の弁護士で、しかもギャンブルと女に目がないから、常にお金に困っていた。そこに、あの白髪の男が現れて、こいつに金を出すからヴァンパイアとの共存に反対する市民団体を作れってそそのかした。教会の勉強会を見つけて来たのも白髪の男だね。あとは、ご存知のヴァン共反会の出来上がりってわけ。」

「じゃ、ヴァンパイアに嫌がらせをしてるのはヴァンパイアの男なの?」

「そうみたいだよ。でも、その白髪の男の考えまでは、このおじさんからは読み取れないけどね。それで、ここからが大切な話。このおじさんは、白髪男に頼まれて、ヴァンパイアポリスを標的にした爆弾テロを目下計画中です。すでに爆弾も出来あがって、実行犯の選任も終わってる、後は来週の実行を待つばかりなんだよね、おじさん。」

全てがバレて、すっかりうなだれた大野が二度頷いた。

「なんてこと、、、。テロなんて阻止しなくちゃ、今すぐ教会に踏み込んで、、、。」

「まって、アヤメ。お兄ちゃんは、アヤメのそういうストレートなところが大好きだなぁ~。でも、それだとまた同じことが起こると思う。お兄ちゃんに良い考えがあるんだけど、どうだろ、話だけでも聞いてみない?」

とりあえず俺たち4人は、司さんの計画を聞いてみることにした。

「それはすごい!もしこの計画がうまくいけばヴァン共反会を一気に壊滅に追い込めるかも!」
計画を聞いた山田さんが叫ぶ。

「さすがお兄ちゃん。相変わらずズル賢いわね。」

「も~。アヤメに褒められたら、お兄ちゃん嬉しいじゃないか~。」

「ただ、その作戦だとヴァンパイアポリスの協力が不可欠ですよね、今回の一件は、俺と山田さんの勝手な偵察から始まって、最終的にアヤメを巻き込んだんです。問題になりませんかね?」
俺が話に水を差す。

「だよな。高木班長にも黙って動いていたわけだし、、。」
山田さんが不安げな表情になった。

「ああ、それは大丈夫。僕がお休みの君たちに個人的に、秘密裏に偵察を頼んだことにしましょう。僕はヴァンパイア司法のトップに立つ人間ですから、そのくらいの勝手は許されるはずだし、君たちが断れなかった言い訳にもなるからね。」

「ありがとうございます、司さん。不詳、山田栄。このご恩は一生忘れません!」
山田さんは、コーヒーテーブルに頭を擦りつけ司さんにお礼を言った。

「で、このジジイはどうするの?」

「もう用済みだから、血液を全部吸い取って山にでも埋めようか。」

「ゆ、許して、、許してください。なんでもしますから命だけはお助けを、、、。」
大野は、顔中を涙でぐしゃぐしゃにして命乞いをする。

「嫌だな~、おじさん本気にしたんだぁ。おじさんの血は臭いってさっき言ったでしょ。僕、お腹が弱いからあなたの血なんか飲んだら、お腹壊しちゃうよ~。でもね、あなたにはやってもらいたいことがあるから、それまで地下で眠ってもらおうかな。」

司さんが、デスクにある電話から内線を掛けると、すぐに警備員がやって来て大野を地下へ連れ出した。し大野は地下でヴァンパイアの犯罪者と共にしばしの眠りにつくことになった。

その日は夜遅くまで、残った5人でテロの詳細と、テロの摘発の計画を立てるべく話し合いが続いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハッピークリスマス !  非公開にしていましたが再upしました。           2024.12.1

設樂理沙
青春
中学生の頃からずっと一緒だったよね。大切に思っていた人との楽しい日々が この先もずっと続いていけぱいいのに……。 ――――――――――――――――――――――― |松村絢《まつむらあや》 ---大企業勤務 25歳 |堂本海(どうもとかい)  ---商社勤務 25歳 (留年してしまい就職は一年遅れ) 中学の同級生 |渡部佳代子《わたなべかよこ》----絢と海との共通の友達 25歳 |石橋祐二《いしばしゆうじ》---絢の会社での先輩 30歳 |大隈可南子《おおくまかなこ》----海の同期 24歳 海LOVE?     ――― 2024.12.1 再々公開 ―――― 💍 イラストはOBAKERON様 有償画像

ジャグラック デリュージョン!

Life up+α
青春
陽気で自由奔放な咲凪(さなぎ)は唯一無二の幼馴染、親友マリアから長年の片想い気付かず、咲凪はあくまで彼女を男友達として扱っていた。 いつも通り縮まらない関係を続けていた二人だが、ある日突然マリアが行方不明になってしまう。 マリアを探しに向かったその先で、咲凪が手に入れたのは誰も持っていないような不思議な能力だった。 停滞していた咲凪の青春は、急速に動き出す。 「二人が死を分かっても、天国だろうが地獄だろうが、どこまでも一緒に行くぜマイハニー!」 自分勝手で楽しく生きていたいだけの少年は、常識も後悔もかなぐり捨てて、何度でも親友の背中を追いかける! もしよろしければ、とりあえず4~6話までお付き合い頂けたら嬉しいです…! ※ラブコメ要素が強いですが、シリアス展開もあります!※

あなたの内心は僕にはわからないけど・・・

soma08
青春
誰もが本心を持っていることを題材にした小説です。 そのことを僕は、わからないけどとあることをきっかけに奇跡が起こるかも?

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

後悔と快感の中で

なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私 快感に溺れてしまってる私 なつきの体験談かも知れないです もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう もっと後悔して もっと溺れてしまうかも ※感想を聞かせてもらえたらうれしいです

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

女ハッカーのコードネームは @takashi

一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか? その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。 守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

ただ巻き芳賀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

処理中です...