眷属のススメ

岸 矢聖子(きし やのこ)

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ヘイトクライム(憎悪犯罪)の親玉 ②

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【ヘイトクライム】
少数民族や社会的マイノリティーへの憎しみに基づく差別犯罪。現在では人種的、差別的動機付けをもつ犯罪にも使われている、
wikipediaより抜粋


俺は、答えのない差別への怒りを腹にのみ込んだままヴァンパイアポリスに向かった。
その時、道路の脇で、ヴァンパイアとの共存に反対する市民の会。通称:ヴァン共反会が署名活動をしていた。

こいつらは、いったい何がしたいのだろう?また戦争をして、ヴァンパイアを根絶やしにしたら気が済むのか?
そんな気持ちで、ぼんやり見ていたら、頭に「吸血鬼反対!」と言う鉢巻を巻いた男が寄って来た。

「ねぇ、君も署名してくれない?」

「あ、俺。今から仕事なんで、、、。」
この男は、その仕事がヴァンパイアポリスって知ったら、こいつはどんな顔するんだろう、、、。

「それなら、今度、暇な時にここに連絡してよ。」
そう言って、男はパンフレット手渡す。
「ああ、わかりました。」
俺はパンフレットを受け取り、その場を後にする。

刑部家で、アヤメを拾いヴァンパイアポリスに向かう。
「なぁ、アヤメはヴァン共反会ってどう思う?」
「どうって、別にどうとも思わないわ。この世の中の人が、すべて同じ意見を持って進むなんてありえないもの。誰かが「良い!」って言ったら「良くない!」って言う意見が出てくるのは自然な事だと思うわ。」

(いや、、そうなんだけどさ、、、、、。)

「でも、ヴァンパイアの生態を理解してほしいと思うわよ。まぁ、彼らにそれを望むのは、難しいかもね。日本は平和だけど、世界では今でもヴァンパイアと各国の政府が戦いを続けているんだから。」

「だよな。」
俺とアヤメの話はそれで終わった。

ヴァンパイアポリスで、自分の席に着くと山田さんが俺の方へやって来た。
「本田君、今日のニュース見たかい?」

「ニュースって、ヴァンパイア市民が強盗にあったって事件ですか?」

「そうそう、それだよ、それ!全く、あいつらには腹が立つよな。」

「あいつらって、犯人は分かってないんですよね。」

「何言ってるんだよ本田君。ヴァン共反会のやつらに決まってるよ!」

「ああ、今日も、デモだか、署名活動かなんかやってましたよね、」

「君も見たのかい。アイツら俺にチラシなんか渡してくるからさ、その場でビリビリに破ってやったよ。」
山田さんは熱い男だ。その光景が目に浮かぶ。

「俺も同じもの貰いましたよ。」そう言ってカバンから貰ったパンフレットを出して山田さんに渡す。

「本田君、そんなの貰って来たの?」
山田さんは、受け取ったパンフレットをごみ箱に捨てようとした。

「待って、捨てないでくださいよ~。ちょっと考えがあるんですから。」
俺はパンフレットを山田さんから取り返す。

「一体、何を考えてるんだい本田君。」
山田さんは興味を持ったらしい。

「実は、俺、このヴァン共反会に興味があるんですよ。大きな組織で会員数も結構いますよね。」

「だな。会の公式発表だと2万5千人の会員がいるって言ってるぜ。」

「この会の何が魅力で大勢の人が惹きつけられるのか、山田さんは気になりませんか?俺、その根っこの部分がわかれば、人間とヴァンパイアが仲良く暮らす手掛かりになるんじゃないかって思うんですよ。」

「本田君は、時々突飛な事を考えるよな~。でも、一理あるかも。敵を知るには、懐に飛び込んでみないとな。それで何をするつもりなんだい。」

「何をって、、、。一度その集会に出てみようかなって。」

「よし。賛成だ!俺も本田君と一緒に行くよ。」

「ええええ、いいですよ山田さん。俺一人で行けますから。」

「いや。決めた!俺もその極秘潜入任務に参加する!」

マズイことになった。これは、ほんの思い付きだった。アヤメが言ったすべての人が同じ方向を向くことはないと言ったのを聞いて、俺は、自分と真逆を向いている彼らに興味を持っただけだった。

「山田さん。これは俺たちの仕事とは関係ないですよ。ただ彼らの本音を聞いてみるだけですから。」

「わかってるよ、本田君。手荒な真似はしないって。」

「それと、今回、俺がヴァン共反会に行くことは、アヤメには内緒なんで山田さんも高木班長には、内緒でお願いします。」

「高木さんに内緒か、、、。わかった。今回は特別だ。それでいつ決行するの?」

俺たちは、ひそひそと二人の休みが合う日を相談する決行日は次の水曜日と決まった。

「二人で何ひそひそ話してるんだよ~。」
類が俺と山田さんの間に割り込んでくる。詳しい連絡は、後でスマホで取り合うことにして、この話は、ここでお終いになった。
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