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家族の秘密 ①

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出勤すると、机の上に黄色い封筒が置いてあった。

「あ、本田さん。それ、この前の取材の記事が載った雑誌です。本田さんハンサムに写ってますよ。」

(、、、、。)

全員に配られたのかもしれない。常盤さんは封筒に入っているのと同じ雑誌を見ながらそう言った。

取材と言うのは、ヴァンパイア向けのタウン情報誌の連載の一つ、ヴァンパイア社会で頑張っている若者を紹介すると言う地味なコーナーで、編集部に俺を紹介したのはv☆girlsのアリサらしい。

タウン誌の編集部は、まずヴァンパイアポリスの上層部にコンタクトをとった。ヴァンパイアポリスも署のイメージアップにつながると考えたらしい。外堀を埋められ、俺のところに話が来た時点では、すでに「断る」と言う選択肢は残されていなかった。因みに、ヴァンパイア以外の若者を取り上げるのは初めてだと記者が言っていた。

封筒から雑誌を取り出すと、ピンクの付箋が貼ってある。たぶんここに俺の記事が載っているのだろう。

開くと、俺とアヤメが並んだ写真があり、写真の下に。
「ヴァンパイアポリス捜査官の刑部さんと、眷属隊の本田さん。」
と説明書きが付いていた。

誰が見てもアヤメの方が華がある。俺は、刺身に添えられるツマのように地味だ。
アヤメを特集したらいいのに、、、、。
今でもその思いは変わらなかった。


今回の頑張るマンは、ヴァンパイアポリスで眷属隊として活躍している、本田一宇さんです。本田さんは、この秋、ヴァンパイアポリスに新設された「眷属隊」の5人の精鋭の内の一人で、先日のv☆girlsのライブで起こった脅迫事件でも大活躍されました。

(俺、全く活躍してねーし、、、。)

本田さんは、刑部さんの眷属として公私ともにパートナーであり。お二人の息はバッチリあっていると上司の半沢主任も太鼓判を押しています。

「ヴァンパイアが言われない差別を受けない社会を作るためには、一部の心無いヴァンパイアによって起こされる犯罪を、主である刑部さんと共に無くし、人間とヴァンパイアが仲良く共存できる社会を作りたいです。」
本田さんは、熱く語ります。

(語ってねぇよ、、、、。)

本田さんの主であり、パートナーの刑部さんは、彼について、
「本田君は、真面目で正義感があり。眷属としても、一緒に働くパートナーとしても、私にとって掛けがえのない存在です。彼と一緒にヴァンパイア社会を守っていくことが私の使命であり喜びです。」

(全部ウソ。デタラメだ。アヤメは俺について質問した記者に、俺のことを、勢いだけが取り柄の弱虫と言っていたはずだ。)

「なんなのよ。この記事!デタラメもいいとこじゃない!私が言った事とまるで違うことが書いてあるわ!」
雑誌を見た、アヤメが自分の席で怒りの声を上げる。

「刑部さんのインタビューでは記事にならないとタウン情報の記者が泣きついてきたので、私と記者さんで、それらしく直しました。」
杉山さんがアヤメにむかって記事の真相を話す。

(なるほど、杉山さんかぁ。どおりで百点満点の仕上がりだ、、、、。)

「アヤメっちぃ、ハサミある?この雑誌のアヤメっちの写真の脇にいるゴミを切り取らないと、」
赤目が俺に聞こえるようにわざと大声でそう言った。

「赤目!ふざけるなよ。」
俺は、赤目の机からタウン誌を取り上げた。

「あ、本田。その本、返せよ。アヤメっちの写真は欲しいんだよ。いらないのはお前の写真なんだから!」

俺は赤目と自分の雑誌を。机の中に仕舞いこむ。雑誌のこっぱずかしい内容を思うと、二度とこの雑誌を開く気にはならないだろう。
忘れてしまおう、雑誌の事も、取材の事も。

メールが届く。アリサからだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今、編集の人からもらった、タウン誌見みてまーす♡
本田さんの写真、素敵に写ってましたね。

アリサ、記事の内容にも感動しちゃった!(。・∀・)イイ。
明日、発売らしいので、本屋で予備用と保存用に2冊買ってくるんだぁ。

お仕事、頑張ってね(♡)

アリサ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(忘れたいのに、、、、。)

ヴァレンタイン以降、アリサとはメル友になっていた。
元々電話が苦手だ。でも、メールくらいなら何とか対応できる。後で返信しなくちゃ。そして、今度こそ雑誌の事は忘れよう。

俺はそう心に決めた。

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