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プロフェット(預言者)②
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冬の夕暮れの仙台市内はキンキンに冷えていた。
俺とケンタロウは、仙台の父が辻占いをするとネットに書いてあった、繁華街のアーケード街を並んで歩いた。
時間は午後7時。ネットの情報ではそろそろ仙台の父が現れる時間帯だった。シャッターの閉まった地方銀行の前に長蛇の列ができている。
「一宇、あれじゃない?」
たぶんそうだ。なぜなら、その長蛇の列に並んでいるのが女性ばっかりだから、、、。
俺とケンタロウはおよそ30人ほどの女性が並んだ列の最後尾に並ぶ。
女性だらけと思われた、その列には男性もちらほら並んでいて、俺は少し安心する。
その列の脇を、キャンプ用の折り畳みテーブルと椅子を抱えた爺さんが歩いて行く。
女性たちから黄色い歓声が上がった。この、爺さんが「仙台の父」で間違いないだろう。
アーケードのタイル張りの地面からは冷え冷えした冷気が上がってくる。
並んだ女性たちは、一緒に来た友人と口々に悩みを話し合っている。
俺とケンタロウの前に並んだ女性は。不倫の相談らしく。
「わたし、父からやめろって言われたら今度こそ不倫はやめる!」
などと言っている。
父に聞くまでもない。やめた方がいいと思うぞ。俺はそう思ったが、もちろん口には出さなかった。
行列の長さにげんなりする。ケンタロウの順番までどのくらい待たされるんだろう、、、。
さっきコンビニでカイロ代わりに買った缶コーヒーもすっかり冷めてしまった。
意外な事に、長蛇の列はサクサクと流れていく。最後尾に並んだはずの俺たちの後ろにもどんどん人が並ぶので行列に並んでいる人の数に変わりはない。
「ユミ~。泣かないでよ。あの。くそジジィ。40分も並んだのに。帰れってなんだよ!死ねジジイ。」
前方に並んでいた若い女性の二人組が、父を口汚くののしりながら帰っていく。ネットに書いてあった、気に入らない客は占わないというのは本当の事のようで、見ていると、占ってもらえる人の方が少ないみたいだ。
「ケンタロウ。もし占ってもらえなかったら、諦めて別の方法を考えようぜ。」
「わかった。」
ケンタロウも次々と帰される相談者たちを見て半ばあきらめたように答える。
いよいよ、俺たちの前の不倫の二人組の順番がきた。
「やめろ!俺がそう言ったらやめるんだよね。その先に幸せはない。以上。お題は結構。帰りなさい。」
二人は、キツネにつままれたような顔をして帰って行く。
仙台の父は、俺たちの顔を見て「おや」という顔をする。男の二人連れはさっきもいたはずだから男が珍しい訳ではないだろう。
「君たち、2000円持ってる?」
父が唐突にそんなことを聞いてきた。
財布にお金は入っていた。
「はい。ありますけど。」
俺は即答する。
「そうかい、それじゃ行こうか。」
「はいはい、ごめんなさいよ。今日はこれにて終了。」
列を作って並んでいた人たちからブーイングが起こる。
「今、並んでる人には特別にこのカードをあげるから、これで勘弁してちょうだいよ。次回このカードを持ってきたら、たとえ気に入らない相談でもちゃんと答えてあげるからさ。」
そう言って父は、ピンク色の紙を並んでいた人たちに配り始めた。
並んでいた人も、次回確実に占ってもらえるという条件でおおむね納得したようで一人、また一人と帰って行った。
「じゃ、行こうか。」
「行こうかってどこに?」
「いや、わたしね。お腹すいちゃって。今日はチキンな気分なんだよね。だから、君たちにケンタ君チキンでも、おごってもらおうと思って。」
そう言いながら、商売用のキャンプ用のテーブルと椅子を銀行の柱の陰に仕舞う。
「じゃ、この先のケンタ君に行きますか?」
俺たち3人は、アーケードの先にあるケンタ君チキンに向かって歩き出した。
クリスマスも終わって、ケンタ君は比較的すいていた。
俺は、父に5千円渡し、好きなものを買ってきてもらうことにする。ケンタロウは食べたいものがあるらしく父について行った。
俺は、二階の飲食スペースで4人が座れるテーブル席を確保して二人を待った。二人は3人分のチキンと飲み物、スコーンを持って現れる。
「はいこれおつりね。」
父は律儀に俺におつりを渡す。
よっぽどお腹がすいていたのか、父は何も話さずにチキンを食べている。俺とケンタロウもチキンを食べ始めた。
「さてと、それじゃ。お話を伺いましょうか。」
チキンを食べ終わった父がそう切り出す。
「相談があるのは、君だね。君は、人間ではないな。半妖だね。」
父は、ケンタロウを見ながらそう言った。この爺さん本物だ。俺たちを見て不思議そうにしていたのはそのせいだったのだろう。
「はい。ライカン、、、。いや狼男です。」
「こんなところで希少種と会うなんて本当に愉快だね。あんな人が多い場所でこんな話は出来ないからね。誘っちゃったけど、迷惑だったかな。」
「いいえ。ありがとうございます。今夜のお仕事をダメにしてしまったようで。」
俺は父にお礼する。
「あ、それは良いんだよ。気にしないで。私はね、趣味で占いをやっているんだから。でも、あそこに座ってても。なかなか面白い相談者ってのは現れないもんだよ。今日は君たちが来てラッキーだったね。」
「それで、君は。運命の女性をさがしているんだね。」
父は、ケンタロウを真っすぐ見てそう言った。
「う、う、運命の女性なんて、そ、そんな。まだ、見たこともないし。彼女の匂いを嗅いだだけで、、。」
「大丈夫、君は彼女と出会えるよ。すぐにね。ヒントをあげよう。彼女の匂いを嗅いだ場所はどこだい?」
「えーっと。ゴールデン商店街です。」
「彼女は、その辺にいるね。最近、そこに引っ越してきたようだよ。君のお気に入りの場所によく出入りしているよ。そこで働いているのかもしれない。ほかに聞きたいことはあるかな?」
「いいえ。もう十分です。お父さんありがとうございます。」
「ははは。お父さんはやめてくれよ。確かに「仙台の父」なんて。変な呼び名で呼ばれているけどね。私は木村です。木村実。」
「ありがとうございます。木村さん。」
「おやおや、そんなに尻尾を振って。ちぎれてしまうんじゃないかい。」
人間のケンタロウに尻尾は無い。でも、木村さんには見えているのだろう。
「さて、次は君だ。」
木村さんが俺を見ている。
「へ??俺?俺は別に悩みはないですよ。」
「そうかな?昨日も悪夢で寝られなかったんじゃないかな?」
「あ、ああ。それは。そうですけど。」
「今年、君は人生を大きく変える出会いがたくさんあったね。仲間だけじゃない、大きな敵とも出会っているはずだ。」
(敵?白鬼のことか?)
「話は変わるが、君は気が付いていないようだけど、君のご家族。おばあさんはちょっと変わった人だったようだね。」
「祖母ですか?祖母は俺が生まれる前に亡くなったんで、写真と祖父の話でしか知らないです。」
「この先、君は家族の「秘密」を知ることになるでしょうね。でも、ここで私が話すのは良くない。君が自分でたどり着かないと。君が今年で出会った人とも大いに関係のあることだし。まぁ、がんばりなさい。その事実にたどり着けば、また未来が大きく変わると思うよ。ま、そんなところかな。ま、困ったことがあったら、その時、私が食べたいものが食べられるだけの小銭を持っていらっしゃい。いつでも、店じまいして相談に乗りますよ。」
俺たちは木村さんにお礼を言って。別れた。
ケンタロウは、木村さんに言われた、運命の女性に思いをはせているのか、ウキウキと歩いている。
俺は、爺さんの仏壇に飾ってあった、祖母の写真を思い出していた。
写真の祖母は、髪が長く色白の美人だった。いつもその写真に話しかけていた祖父を思い出す。俺にも「お前のばぁさんは誰よりも美人で頭が良かった。」と自慢していた。
それにしても、木村さんの俺に関する予言は断片的すぎてチンプンカンプンだ。
今起こっていないことを思い悩んでも仕方ない。
俺がそう考えた時に、俺の前をウキウキと歩いていたケンタロウが振り返る。
「ねぇ、一宇。僕、さっき木村さんが言っていた場所に、思い当たるところがあるんだけど。明日仕事に行く前に付き合ってくれない?」
「別にいいけど。」
乗り掛かった船だし、正直ケンタロウの運命の女性も気になる。
俺たちは明日の約束をして別れた。
俺とケンタロウは、仙台の父が辻占いをするとネットに書いてあった、繁華街のアーケード街を並んで歩いた。
時間は午後7時。ネットの情報ではそろそろ仙台の父が現れる時間帯だった。シャッターの閉まった地方銀行の前に長蛇の列ができている。
「一宇、あれじゃない?」
たぶんそうだ。なぜなら、その長蛇の列に並んでいるのが女性ばっかりだから、、、。
俺とケンタロウはおよそ30人ほどの女性が並んだ列の最後尾に並ぶ。
女性だらけと思われた、その列には男性もちらほら並んでいて、俺は少し安心する。
その列の脇を、キャンプ用の折り畳みテーブルと椅子を抱えた爺さんが歩いて行く。
女性たちから黄色い歓声が上がった。この、爺さんが「仙台の父」で間違いないだろう。
アーケードのタイル張りの地面からは冷え冷えした冷気が上がってくる。
並んだ女性たちは、一緒に来た友人と口々に悩みを話し合っている。
俺とケンタロウの前に並んだ女性は。不倫の相談らしく。
「わたし、父からやめろって言われたら今度こそ不倫はやめる!」
などと言っている。
父に聞くまでもない。やめた方がいいと思うぞ。俺はそう思ったが、もちろん口には出さなかった。
行列の長さにげんなりする。ケンタロウの順番までどのくらい待たされるんだろう、、、。
さっきコンビニでカイロ代わりに買った缶コーヒーもすっかり冷めてしまった。
意外な事に、長蛇の列はサクサクと流れていく。最後尾に並んだはずの俺たちの後ろにもどんどん人が並ぶので行列に並んでいる人の数に変わりはない。
「ユミ~。泣かないでよ。あの。くそジジィ。40分も並んだのに。帰れってなんだよ!死ねジジイ。」
前方に並んでいた若い女性の二人組が、父を口汚くののしりながら帰っていく。ネットに書いてあった、気に入らない客は占わないというのは本当の事のようで、見ていると、占ってもらえる人の方が少ないみたいだ。
「ケンタロウ。もし占ってもらえなかったら、諦めて別の方法を考えようぜ。」
「わかった。」
ケンタロウも次々と帰される相談者たちを見て半ばあきらめたように答える。
いよいよ、俺たちの前の不倫の二人組の順番がきた。
「やめろ!俺がそう言ったらやめるんだよね。その先に幸せはない。以上。お題は結構。帰りなさい。」
二人は、キツネにつままれたような顔をして帰って行く。
仙台の父は、俺たちの顔を見て「おや」という顔をする。男の二人連れはさっきもいたはずだから男が珍しい訳ではないだろう。
「君たち、2000円持ってる?」
父が唐突にそんなことを聞いてきた。
財布にお金は入っていた。
「はい。ありますけど。」
俺は即答する。
「そうかい、それじゃ行こうか。」
「はいはい、ごめんなさいよ。今日はこれにて終了。」
列を作って並んでいた人たちからブーイングが起こる。
「今、並んでる人には特別にこのカードをあげるから、これで勘弁してちょうだいよ。次回このカードを持ってきたら、たとえ気に入らない相談でもちゃんと答えてあげるからさ。」
そう言って父は、ピンク色の紙を並んでいた人たちに配り始めた。
並んでいた人も、次回確実に占ってもらえるという条件でおおむね納得したようで一人、また一人と帰って行った。
「じゃ、行こうか。」
「行こうかってどこに?」
「いや、わたしね。お腹すいちゃって。今日はチキンな気分なんだよね。だから、君たちにケンタ君チキンでも、おごってもらおうと思って。」
そう言いながら、商売用のキャンプ用のテーブルと椅子を銀行の柱の陰に仕舞う。
「じゃ、この先のケンタ君に行きますか?」
俺たち3人は、アーケードの先にあるケンタ君チキンに向かって歩き出した。
クリスマスも終わって、ケンタ君は比較的すいていた。
俺は、父に5千円渡し、好きなものを買ってきてもらうことにする。ケンタロウは食べたいものがあるらしく父について行った。
俺は、二階の飲食スペースで4人が座れるテーブル席を確保して二人を待った。二人は3人分のチキンと飲み物、スコーンを持って現れる。
「はいこれおつりね。」
父は律儀に俺におつりを渡す。
よっぽどお腹がすいていたのか、父は何も話さずにチキンを食べている。俺とケンタロウもチキンを食べ始めた。
「さてと、それじゃ。お話を伺いましょうか。」
チキンを食べ終わった父がそう切り出す。
「相談があるのは、君だね。君は、人間ではないな。半妖だね。」
父は、ケンタロウを見ながらそう言った。この爺さん本物だ。俺たちを見て不思議そうにしていたのはそのせいだったのだろう。
「はい。ライカン、、、。いや狼男です。」
「こんなところで希少種と会うなんて本当に愉快だね。あんな人が多い場所でこんな話は出来ないからね。誘っちゃったけど、迷惑だったかな。」
「いいえ。ありがとうございます。今夜のお仕事をダメにしてしまったようで。」
俺は父にお礼する。
「あ、それは良いんだよ。気にしないで。私はね、趣味で占いをやっているんだから。でも、あそこに座ってても。なかなか面白い相談者ってのは現れないもんだよ。今日は君たちが来てラッキーだったね。」
「それで、君は。運命の女性をさがしているんだね。」
父は、ケンタロウを真っすぐ見てそう言った。
「う、う、運命の女性なんて、そ、そんな。まだ、見たこともないし。彼女の匂いを嗅いだだけで、、。」
「大丈夫、君は彼女と出会えるよ。すぐにね。ヒントをあげよう。彼女の匂いを嗅いだ場所はどこだい?」
「えーっと。ゴールデン商店街です。」
「彼女は、その辺にいるね。最近、そこに引っ越してきたようだよ。君のお気に入りの場所によく出入りしているよ。そこで働いているのかもしれない。ほかに聞きたいことはあるかな?」
「いいえ。もう十分です。お父さんありがとうございます。」
「ははは。お父さんはやめてくれよ。確かに「仙台の父」なんて。変な呼び名で呼ばれているけどね。私は木村です。木村実。」
「ありがとうございます。木村さん。」
「おやおや、そんなに尻尾を振って。ちぎれてしまうんじゃないかい。」
人間のケンタロウに尻尾は無い。でも、木村さんには見えているのだろう。
「さて、次は君だ。」
木村さんが俺を見ている。
「へ??俺?俺は別に悩みはないですよ。」
「そうかな?昨日も悪夢で寝られなかったんじゃないかな?」
「あ、ああ。それは。そうですけど。」
「今年、君は人生を大きく変える出会いがたくさんあったね。仲間だけじゃない、大きな敵とも出会っているはずだ。」
(敵?白鬼のことか?)
「話は変わるが、君は気が付いていないようだけど、君のご家族。おばあさんはちょっと変わった人だったようだね。」
「祖母ですか?祖母は俺が生まれる前に亡くなったんで、写真と祖父の話でしか知らないです。」
「この先、君は家族の「秘密」を知ることになるでしょうね。でも、ここで私が話すのは良くない。君が自分でたどり着かないと。君が今年で出会った人とも大いに関係のあることだし。まぁ、がんばりなさい。その事実にたどり着けば、また未来が大きく変わると思うよ。ま、そんなところかな。ま、困ったことがあったら、その時、私が食べたいものが食べられるだけの小銭を持っていらっしゃい。いつでも、店じまいして相談に乗りますよ。」
俺たちは木村さんにお礼を言って。別れた。
ケンタロウは、木村さんに言われた、運命の女性に思いをはせているのか、ウキウキと歩いている。
俺は、爺さんの仏壇に飾ってあった、祖母の写真を思い出していた。
写真の祖母は、髪が長く色白の美人だった。いつもその写真に話しかけていた祖父を思い出す。俺にも「お前のばぁさんは誰よりも美人で頭が良かった。」と自慢していた。
それにしても、木村さんの俺に関する予言は断片的すぎてチンプンカンプンだ。
今起こっていないことを思い悩んでも仕方ない。
俺がそう考えた時に、俺の前をウキウキと歩いていたケンタロウが振り返る。
「ねぇ、一宇。僕、さっき木村さんが言っていた場所に、思い当たるところがあるんだけど。明日仕事に行く前に付き合ってくれない?」
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