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ヴァンパイアポリスの事件ファイル ③
しおりを挟む「昨夜、回収した薬の検査結果が出ました。あの薬には人体には無害な一般的なハーブ数種類と、ヴァンパイアの血液成分が入っていました。ヴァンパイアの血液が主な有効成分のようです。」
杉山さんが、科捜研から届いた検査結果を読み上げる。
「あの~。質問なんすけど、ヴァンパイアの血液って人体に悪い影響があるんすか?」
稲葉がめずらしくまともな質問をする。
「ヴァンパイアの血液の人体に対する影響は、不明です。ただし、現時点では、健康食品として血液成分を使うことは違法ですので、取り締まりは必要です。引き続き、私と灰野。刑部さんと本田さんで潜入捜査を続行して、このグループの全容の解明と健康食品を製造している工場の摘発も視野に入れるようにと半沢主任から指示がありました。」
「なーんだ、またノエルは仲間はずれじゃん。」
「いいえ、ここからは全員で捜査に当たります。」
「まず。コスモスグループのパンフレットに記載されている大河原工場はダミーでした。高木主任と山田さん、赤目さんと常盤さんは、青葉区にあるコスモスグループの本社ビルに「コスモスEX 」を搬入しているトラックを追跡して、本物の「コスモスEX」の工場の特定をお願いします。この、捜査には、後部座席が完全遮光になっている特殊車両を使って行ってください。]
「了解。」
「ええ、ノエルと慎吾の仕事はぁ。」
「結城さんと稲葉さんには、コスモスグループ本社の隣にあるカフェ・トロールコーヒーで、本社ビルに出入りする人物の写真の撮影をお願いします。トロールコーヒーには捜査協力の了解を得ています。」
「やったー。トロールコーヒーの制服ってマジでかわいいから、ノエル着てみたかったんだよね。ラッキー。」
「結城さんまじめにお願いしますよ。」
杉山さんがくぎを刺す。
「早速で申し訳ないのですが、追跡チームと監視チームは、今夜からお願いします。」
「ほらほら、サキちゃんお仕事お仕事。」
常盤さんは、まだ赤目に怒っているらしい。
6人が、事務所を出て行くと事務所は急に静かになった。
「それでは、残った私たちは、次回のミーティングに参加にむけて、作戦会議を行います。ただ。だらだらとミーティングに参加していても意味はありません。それで、前回貰ったパンフレットを見ると、私と灰野の担当だった大槻さんという女性は、ブロンズランクで幹部会員に名前はありません。でも、刑部さんと本田さんの担当の白鳥という男は、プラチナ会員で幹部の名簿に名前があります。ですから、刑部さんと本田さんには、白鳥に接近してもらいます。コスモスグループのほかの幹部の情報を引き出してください。」
このヴァンパイアチームの力の関係が最近、朧気ながらわかってきた。
高木班長が将軍。で、常に冷静な杉山さんは軍師。アヤメと赤目は切り込み隊長。結城ノエルは、、、ムードメーカーかな?
杉山さんは、小柄で眼鏡。ヴァンパイアらしさはみじんもない。以前アヤメが「あの子は天才だけど、頭でっかちなのよね。」と言っていたことがある。
でも彼女の発言はいつも説得力があり、天才も頷ける。
俺とアヤメは、二人で白鳥に取り入る作戦を練ることにした。
「一宇、なんかいいアイデアある?」
「ある。アヤメのお色気作戦、なんてどおよ。白鳥お前の事、美人って言ってじゃん。」
「そんなのダメ。却下。やっぱりあんたに聞いたのが間違いだった。」
「じゃあアヤメは、なんかいい作戦あるのかよ。」
「あるわ。」
「なんだよ。言ってみろよ。」
「名付けて、”越後屋、お前も悪よのう作戦”。」
「なんじゃそりゃ。」
「分からないの?白鳥に袖の下を渡して、幹部の名前を聞き出すのよ。」
「バカか。俺たち貧乏カップルって設定だろ。そんなことしたら怪しまれて一発でアウトだよ。」
俺とアヤメは、無い知恵を絞りあった挙句、何とか行けそうな作戦を思いついた。
作戦はこうだ、俺たちは初回、100本も売り手をもう見つけたことにする。サンプルをばらまいて顧客とコスモスグループの会員として紹介できる人材も多数見つけたと報告する。そして、今後、コスモスグループでの活動を相談することにして、白鳥に取り入る。将来有望な若者に白鳥の口も軽くなるんじゃないか、、、、。と、いささか行き当たりばったりな計画だ。俺は一応、軍師杉山さんにお伺いを立てることにした。
「悪くないと思います。もし、お色気作戦だの、ワイロ作戦なんか立ててきたら却下しようと思ってたんですけどね。では、その作戦を書類にして提出してください。作戦にかかる費用はこちらで準備します。」
杉山さんにそう言われて、俺は安堵した。「お色気作戦や越後屋作戦は、ボツにして本当に良かった。」
俺は、計画書の作成に取り掛かった。
事務所の電話が鳴り、杉山さんが電話を受ける。
「はい、はい。わかりました。随時報告をお願いします。」
「高木、赤目チームも動き出しました。今トラックを追跡して国道4号線を南下中です。それではおふたりは、その計画を細部まで詰めてください。」
そう言われたが、アヤメは細部まで話を詰める気はさらさらないらしい。
俺は必要経費を計算し始めた。
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