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新人捜査官二人の夜
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時計は9時を回ったばかり。
名ばかりの研修は終わった。アヤメにお伺いを立てに行こうかとも思ったが、「刑部家に帰って待ってて」と言われるのがオチだろう。
受付の婦警さんにアヤメを待てる場所があるか聞くと待合室を教えてくれた。
待合室は電気がついておらず、自動販売機の明かりで室内はうっすら明るい。
俺は電気のスイッチを探して明かりをつける。
うわっ。
暗がりの中に常盤さんがぽつんと座っていた。
「驚かせてしまいましたか?すみません。」
彼女は小さな声で謝る。
「何してるの?」
「赤目様を待ってます。本田さんは?」
「俺もアヤメも待ってようかなぁって。良かったよ、一人で待つのって退屈じゃん。」
「そうですね。」
「あ、そうだ。俺、お弁当持ってきたんだよ一緒に食べない?」
そういって俺は高梨さんから貰った包みをカバンから出す。
包まれている縮緬の風呂敷を開けると竹皮の包みが出てきた。
「あ、私お茶買ってきます。」
「あ、俺も。」
「お茶は私にご馳走させてください。」
彼女はお茶を二つ持って戻ってきた。
「えーっと。これは、アヤメの家の執事さんが作ってくれたんだけど、執事さんのお郷の郷土料理で。なんて言ったかな、、。」
「醤油おこわ。」
「ああ、そうそう。あれ何で常盤さん知ってるの?」
「それ、新潟の郷土料理なんです。」
「ああ、そうなんだ。常盤さん新潟出身?」
「いいえ。でも母が新潟なんです。」
「じゃ、食べよう食べよう。」
「うまい。優しいしょうゆ味なんだね。」
「ほんとに美味しい。なんか、懐かしい。うちの母もこれ作るの上手だったんですよ。」
「だった?」
「母は一昨年亡くなりました。」
「あ、ごめんね。辛いこと聞いちゃって。」
「いいえ。こちらこそ湿っぽいこと言ってすみません。」
「ところで、その髪型は常盤さんの趣味?」
「えっ?おかしいですか?」
「いや、すごく似合ってるよ。」
「良かった。これは赤目様のお好みなんです。」
(やっぱり。イヤミ巻き毛め!)
「俺、研修会場で常盤さん見た時、あれ?この子見たことあるって不思議な感じがしてさ。途中で気が付いたんだよ、アヤメに似てるんだって。」
「私とアヤメ様似てますか?」
「そっくりってわけじゃないけど、ふとした表情とか、こっちの角度から見ると結構似てる。」
俺が見つめたせいか常盤さんは赤くなった。
「嬉しいです。赤目様はアヤメ様が大好だから。」
「常盤さんはどうして赤目の眷属に?」
「1年前、母が亡くなって私、すごく落ち込んでしまって。ある夜、橋の上で川面をぼんやり見ていたんですよ。そこに赤目様が現れて死ぬんだったら僕の眷属になれって。あの、私。自殺するつもりはなかったんですよ。でも、家に帰って鏡を見たら、私。幽霊みたいな顔してて、、。こんな顔してたら自殺希望者と間違われても仕方ないなぁって。反省しました。自殺するつもりはなかったんですけど、あのまま生活してたら私、病気になってました。赤目さんは私の恩人なんです。」
「それで、赤目の眷属に?」
「あ、その時。私17歳だったんで。」
「眷属は18歳になるまで認められていませんから。赤目様は私が18歳になるのを待ってくださいました。」
「もしかして、常盤さん赤目の事が好きなの?」
「えっ、そんな。あの、私なんかが赤目様を好きなんておこがましいです。」
彼女は真っ赤になってうつむく。
(くそぉぉ、赤目の奴、こんなかわいい子とリア充かよ。)
「あの、でも。赤目様に眷属としてお仕えできるのはものすごく幸せです。だって眷属ってどちらかの命が尽きるまで変わらぬ契約ですから。」
(ん?そうなのか??)
「あの、本田さんはなんでアヤメ様の眷属になったんですか?」
「えっ、俺?俺は”スマイル眷属紹介所”の紹介で。はははは。」
「でも、赤目様がアヤメ様は眷属を作らない主義だったのに、みすぼらしい男を眷属にしたって怒ってて。」
「あっ。すいません本田さんの事なのに。」
「ああ、いいよ。気にしないで。」
(赤目の奴。ぜってー殺す!)
時計を見ると10時をちょっと過ぎたところだった。
アヤメの仕事が終わるのは午前3時。あと5時間ある。
「ねぇ。常盤さん。ドライブ行かない?」
「ドライブ?」
「と言っても。俺バイクだけど。寒いからイヤ?」
「バイク乗ったことないんで、乗ってみたいです。」
「でも、この時間だし、寒いよな。」
その時、さっき受付で受け取った制服が目に入る。
開けてみると鑑識員のような紺色の上下の服だった。背中には”SVPD”の文字が黄色い文字でプリントされている。
「これ着て行こうか。」
「私、トイレで着替えてきます。」
5分後、新しい制服に着替えた俺と常盤さんはぺスパに跨って夜の街に飛び出した。
行先は決めてある。今の時間なら道路もすいているから30分くらいで着くだろう。
走る車の少なくなった国道を俺は北に向かって走った。
スタジアムを案内する道路の看板が見える。
もう少しで目的地だ。
目的に着く。二柱神社。
時間が時間なので、あたりは真っ暗、人気がなくちょっと怖い。
「ここは?」
「ごめんね。夜がこんなだって知らなくって。ここは、有名なパワースポットで、ご利益はずばり恋愛!」
「恋愛!ですか?」
「そう。ちょっと境内まで歩くけど怖いならやめとく?」
「行きます!」
彼女は俺の手の引いて境内を進んでいく。
カランカラン
チャリン。
常盤さんは結構長い間、神様に手を合わせていた。
「本田さん。ありがとう。」
笑顔が可愛い。あんなイヤミ巻き毛にはもったいないくらい良い子だ。
「体も冷えたし、コーヒーでも飲んで帰ろうか。」
「はい。」
深夜営業のファミレスでコーヒーを飲み終わった頃時計は午前2時を回った。
店を出て。ヴァンパイアポリスの庁舎に戻る。制服を脱いで、私服に戻り待合室で各々の主を待った。
常盤さんは疲れたのか、俺の肩を枕にして居眠りを始める。
午前3時を過ぎたころ、先に待合室に入ってきたのは赤目だった。
「サキ、お待たせ、、って。おい、お前。」
「あ、赤目様。お疲れさまでした。」
常盤さんが赤目に嬉しそうに駆け寄る。
「ダメだろサキ!こんな貧乏くさい男と一緒にいちゃ!貧乏くささは感染するんだぞ。」
(こいつ何言ってんだ、わけわからん)
「今日もこんな安っぽい服着て。ん?」
赤目は俺のジャケットをめくり裏地のタグを見る。
「Yukio biz homme、、。えっ。本物かよ。お前みたいな貧乏人が買えるブランドじゃないだろ。なんか今日は、さっぱりした格好してるようだな。でも俺はお前なんか認めないぞ。お前はアヤメっちにふさわしくない。」
「うるさいわね。待合室でなに騒いでるの。」
アヤメが入ってくる。
「アヤメっち~。日も長くなってきたし、どこかでお茶してから帰ろうよ~。」
「一宇、帰るよ。」
アヤメは赤目を完全無視して駐輪場へ向かう。
「アヤメっち。カムバーック。」
赤目はまだ騒いでいる。俺は赤目に思いを寄せてる常盤さんが気になった。
彼女のほうを見ると目が合う。「あ・り・が・と・う」彼女の口がそう動いた。
「一宇、早く!」
アヤメの声に促されて俺は待合室を後にした。
名ばかりの研修は終わった。アヤメにお伺いを立てに行こうかとも思ったが、「刑部家に帰って待ってて」と言われるのがオチだろう。
受付の婦警さんにアヤメを待てる場所があるか聞くと待合室を教えてくれた。
待合室は電気がついておらず、自動販売機の明かりで室内はうっすら明るい。
俺は電気のスイッチを探して明かりをつける。
うわっ。
暗がりの中に常盤さんがぽつんと座っていた。
「驚かせてしまいましたか?すみません。」
彼女は小さな声で謝る。
「何してるの?」
「赤目様を待ってます。本田さんは?」
「俺もアヤメも待ってようかなぁって。良かったよ、一人で待つのって退屈じゃん。」
「そうですね。」
「あ、そうだ。俺、お弁当持ってきたんだよ一緒に食べない?」
そういって俺は高梨さんから貰った包みをカバンから出す。
包まれている縮緬の風呂敷を開けると竹皮の包みが出てきた。
「あ、私お茶買ってきます。」
「あ、俺も。」
「お茶は私にご馳走させてください。」
彼女はお茶を二つ持って戻ってきた。
「えーっと。これは、アヤメの家の執事さんが作ってくれたんだけど、執事さんのお郷の郷土料理で。なんて言ったかな、、。」
「醤油おこわ。」
「ああ、そうそう。あれ何で常盤さん知ってるの?」
「それ、新潟の郷土料理なんです。」
「ああ、そうなんだ。常盤さん新潟出身?」
「いいえ。でも母が新潟なんです。」
「じゃ、食べよう食べよう。」
「うまい。優しいしょうゆ味なんだね。」
「ほんとに美味しい。なんか、懐かしい。うちの母もこれ作るの上手だったんですよ。」
「だった?」
「母は一昨年亡くなりました。」
「あ、ごめんね。辛いこと聞いちゃって。」
「いいえ。こちらこそ湿っぽいこと言ってすみません。」
「ところで、その髪型は常盤さんの趣味?」
「えっ?おかしいですか?」
「いや、すごく似合ってるよ。」
「良かった。これは赤目様のお好みなんです。」
(やっぱり。イヤミ巻き毛め!)
「俺、研修会場で常盤さん見た時、あれ?この子見たことあるって不思議な感じがしてさ。途中で気が付いたんだよ、アヤメに似てるんだって。」
「私とアヤメ様似てますか?」
「そっくりってわけじゃないけど、ふとした表情とか、こっちの角度から見ると結構似てる。」
俺が見つめたせいか常盤さんは赤くなった。
「嬉しいです。赤目様はアヤメ様が大好だから。」
「常盤さんはどうして赤目の眷属に?」
「1年前、母が亡くなって私、すごく落ち込んでしまって。ある夜、橋の上で川面をぼんやり見ていたんですよ。そこに赤目様が現れて死ぬんだったら僕の眷属になれって。あの、私。自殺するつもりはなかったんですよ。でも、家に帰って鏡を見たら、私。幽霊みたいな顔してて、、。こんな顔してたら自殺希望者と間違われても仕方ないなぁって。反省しました。自殺するつもりはなかったんですけど、あのまま生活してたら私、病気になってました。赤目さんは私の恩人なんです。」
「それで、赤目の眷属に?」
「あ、その時。私17歳だったんで。」
「眷属は18歳になるまで認められていませんから。赤目様は私が18歳になるのを待ってくださいました。」
「もしかして、常盤さん赤目の事が好きなの?」
「えっ、そんな。あの、私なんかが赤目様を好きなんておこがましいです。」
彼女は真っ赤になってうつむく。
(くそぉぉ、赤目の奴、こんなかわいい子とリア充かよ。)
「あの、でも。赤目様に眷属としてお仕えできるのはものすごく幸せです。だって眷属ってどちらかの命が尽きるまで変わらぬ契約ですから。」
(ん?そうなのか??)
「あの、本田さんはなんでアヤメ様の眷属になったんですか?」
「えっ、俺?俺は”スマイル眷属紹介所”の紹介で。はははは。」
「でも、赤目様がアヤメ様は眷属を作らない主義だったのに、みすぼらしい男を眷属にしたって怒ってて。」
「あっ。すいません本田さんの事なのに。」
「ああ、いいよ。気にしないで。」
(赤目の奴。ぜってー殺す!)
時計を見ると10時をちょっと過ぎたところだった。
アヤメの仕事が終わるのは午前3時。あと5時間ある。
「ねぇ。常盤さん。ドライブ行かない?」
「ドライブ?」
「と言っても。俺バイクだけど。寒いからイヤ?」
「バイク乗ったことないんで、乗ってみたいです。」
「でも、この時間だし、寒いよな。」
その時、さっき受付で受け取った制服が目に入る。
開けてみると鑑識員のような紺色の上下の服だった。背中には”SVPD”の文字が黄色い文字でプリントされている。
「これ着て行こうか。」
「私、トイレで着替えてきます。」
5分後、新しい制服に着替えた俺と常盤さんはぺスパに跨って夜の街に飛び出した。
行先は決めてある。今の時間なら道路もすいているから30分くらいで着くだろう。
走る車の少なくなった国道を俺は北に向かって走った。
スタジアムを案内する道路の看板が見える。
もう少しで目的地だ。
目的に着く。二柱神社。
時間が時間なので、あたりは真っ暗、人気がなくちょっと怖い。
「ここは?」
「ごめんね。夜がこんなだって知らなくって。ここは、有名なパワースポットで、ご利益はずばり恋愛!」
「恋愛!ですか?」
「そう。ちょっと境内まで歩くけど怖いならやめとく?」
「行きます!」
彼女は俺の手の引いて境内を進んでいく。
カランカラン
チャリン。
常盤さんは結構長い間、神様に手を合わせていた。
「本田さん。ありがとう。」
笑顔が可愛い。あんなイヤミ巻き毛にはもったいないくらい良い子だ。
「体も冷えたし、コーヒーでも飲んで帰ろうか。」
「はい。」
深夜営業のファミレスでコーヒーを飲み終わった頃時計は午前2時を回った。
店を出て。ヴァンパイアポリスの庁舎に戻る。制服を脱いで、私服に戻り待合室で各々の主を待った。
常盤さんは疲れたのか、俺の肩を枕にして居眠りを始める。
午前3時を過ぎたころ、先に待合室に入ってきたのは赤目だった。
「サキ、お待たせ、、って。おい、お前。」
「あ、赤目様。お疲れさまでした。」
常盤さんが赤目に嬉しそうに駆け寄る。
「ダメだろサキ!こんな貧乏くさい男と一緒にいちゃ!貧乏くささは感染するんだぞ。」
(こいつ何言ってんだ、わけわからん)
「今日もこんな安っぽい服着て。ん?」
赤目は俺のジャケットをめくり裏地のタグを見る。
「Yukio biz homme、、。えっ。本物かよ。お前みたいな貧乏人が買えるブランドじゃないだろ。なんか今日は、さっぱりした格好してるようだな。でも俺はお前なんか認めないぞ。お前はアヤメっちにふさわしくない。」
「うるさいわね。待合室でなに騒いでるの。」
アヤメが入ってくる。
「アヤメっち~。日も長くなってきたし、どこかでお茶してから帰ろうよ~。」
「一宇、帰るよ。」
アヤメは赤目を完全無視して駐輪場へ向かう。
「アヤメっち。カムバーック。」
赤目はまだ騒いでいる。俺は赤目に思いを寄せてる常盤さんが気になった。
彼女のほうを見ると目が合う。「あ・り・が・と・う」彼女の口がそう動いた。
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