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第3章>毒蛇の幻像[マリオネット・ゲーム]
Log.80 ハニカムフード
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俺の次の記憶は、謝罪から始まった。どこかで横になっている俺が薄目を開けた瞬間、視界の隅で辻堂が土下座しているのが見えた。
「ほんっとうにごめんなさい!!!!」
辻堂と出会ってから今までで、一番感情のこもったセリフが聞こえる。本気で謝っているのだろう。俺はまだグラグラする頭を押さえながら起き上がる。
「ってて……一体なんの話だ。今はこの屋敷から逃げるのが最ゆう……せ、ん?」
その時初めて俺は今いる場所を確認する。先程までの階段や白い部屋とはまた異なる景色。赤い部屋だ。床も天井も真っ赤な薄暗い部屋に俺はいた。そして俺の目の前には……あのフード男がいた。
「お前……っ!!」
俺はすぐに飛び起きて後退りしようとする。だがそれは頭に何か柔らかいものが当たって中断された。ぽよんと。……ぽよん?
「あっ秋山……ちょっと……」
見れば麻尋が困り顔でこちらを見ている。なんだ、麻尋の胸が当たったのか。
「アキの変態!!!何してんのよぉ!!!!!」
さらに美頼の怒号。まあ無理もない。美頼なら怒りかねないことを普通にしてしまっただけだ。
「って、は?!美頼!?!?」
振り向けば美頼がいる。辻堂は謝罪を続けた。
「本当にごめんなさい。仲山君。これは全て、私がみんなを呼びかけて起こしたことなの。私が勝手に勘違いして、先走ったことを……」
「へ?何言ってんのモモちー。ドッキリじゃなかったの?」
麻尋はキョトンとしている。俺は何を言っているのかさっぱり理解できない。ただ辻堂の雰囲気がさっきまでとはガラリと変わっていることがわかる。今はただただ許しを乞う罪人のようだ。
「わ、私はアキのこと、疑ってたわけじゃないんだけど……も、もちろん信じてたのよ?でも……本当に、ごめん。あのメールを見てから私自分が信じられなくなって……ごめんなさい……」
そうやって泣きそうな声を出すのは美頼だ。
「ひーちゃんにもメールが来てたの!?」
さらに高めの男の腑抜けた声が明後日の方向から響いた。
「ち、千夜?!お前も無事だったのか!!!」
俺は喜びと驚きが入り混じったままその声のする方へ顔を向ける。そこには古戸霧もいた。
「俺も忘れないでいてくださいっ。俺のさいきょうの演技、どうでしたか!!!もうちょいと出番が欲しかったですけど」
カタコトでえへへと笑う男の娘。なんなんだ。一体何が起きているんだ。
「では種明かしということで、よろしいですか?お嬢様」
男の声が響く。お嬢様……?どういうことだ。俺はそう聞いて察する。つまりこの事件は全てあの辻堂が仕組んだことだった。警察のトップを親に持つ辻堂が裕福であってもおかしくない。なら使用人の一人や二人いるはずだ。そのうちの一人を使って、目的はまだわからないが祖父の屋敷に俺らを閉じ込めたのだとしたら……!
「ええ、よろしいですわ」
だが俺の真上でそう返したのは、麻尋だった。
「……は?」
フード男がフードを取った。そして俺は最初からずっと勘違いしていたことを知る。それは男ではなかった。そもそも人間じゃなかった。
「お久しぶりですね。仲山さん。ふふふ」
蓑畑雪穂。麻尋の家に使用人として潜伏していた、俺らを拉致したことのあるアンドロイドだ。声色を男から女に戻して、例の不自然な笑い声で嗤う。でも何故こいつがこんなことを?
「その……私たちはあなたを騙していたのよ。仲山君」
「『私……たち』だと……??」
「ふふふふふふ」
辻堂が主謀者なのは確かなようだった。だが真相は俺の想像を絶していたのだ。
俺の次の記憶は、謝罪から始まった。どこかで横になっている俺が薄目を開けた瞬間、視界の隅で辻堂が土下座しているのが見えた。
「ほんっとうにごめんなさい!!!!」
辻堂と出会ってから今までで、一番感情のこもったセリフが聞こえる。本気で謝っているのだろう。俺はまだグラグラする頭を押さえながら起き上がる。
「ってて……一体なんの話だ。今はこの屋敷から逃げるのが最ゆう……せ、ん?」
その時初めて俺は今いる場所を確認する。先程までの階段や白い部屋とはまた異なる景色。赤い部屋だ。床も天井も真っ赤な薄暗い部屋に俺はいた。そして俺の目の前には……あのフード男がいた。
「お前……っ!!」
俺はすぐに飛び起きて後退りしようとする。だがそれは頭に何か柔らかいものが当たって中断された。ぽよんと。……ぽよん?
「あっ秋山……ちょっと……」
見れば麻尋が困り顔でこちらを見ている。なんだ、麻尋の胸が当たったのか。
「アキの変態!!!何してんのよぉ!!!!!」
さらに美頼の怒号。まあ無理もない。美頼なら怒りかねないことを普通にしてしまっただけだ。
「って、は?!美頼!?!?」
振り向けば美頼がいる。辻堂は謝罪を続けた。
「本当にごめんなさい。仲山君。これは全て、私がみんなを呼びかけて起こしたことなの。私が勝手に勘違いして、先走ったことを……」
「へ?何言ってんのモモちー。ドッキリじゃなかったの?」
麻尋はキョトンとしている。俺は何を言っているのかさっぱり理解できない。ただ辻堂の雰囲気がさっきまでとはガラリと変わっていることがわかる。今はただただ許しを乞う罪人のようだ。
「わ、私はアキのこと、疑ってたわけじゃないんだけど……も、もちろん信じてたのよ?でも……本当に、ごめん。あのメールを見てから私自分が信じられなくなって……ごめんなさい……」
そうやって泣きそうな声を出すのは美頼だ。
「ひーちゃんにもメールが来てたの!?」
さらに高めの男の腑抜けた声が明後日の方向から響いた。
「ち、千夜?!お前も無事だったのか!!!」
俺は喜びと驚きが入り混じったままその声のする方へ顔を向ける。そこには古戸霧もいた。
「俺も忘れないでいてくださいっ。俺のさいきょうの演技、どうでしたか!!!もうちょいと出番が欲しかったですけど」
カタコトでえへへと笑う男の娘。なんなんだ。一体何が起きているんだ。
「では種明かしということで、よろしいですか?お嬢様」
男の声が響く。お嬢様……?どういうことだ。俺はそう聞いて察する。つまりこの事件は全てあの辻堂が仕組んだことだった。警察のトップを親に持つ辻堂が裕福であってもおかしくない。なら使用人の一人や二人いるはずだ。そのうちの一人を使って、目的はまだわからないが祖父の屋敷に俺らを閉じ込めたのだとしたら……!
「ええ、よろしいですわ」
だが俺の真上でそう返したのは、麻尋だった。
「……は?」
フード男がフードを取った。そして俺は最初からずっと勘違いしていたことを知る。それは男ではなかった。そもそも人間じゃなかった。
「お久しぶりですね。仲山さん。ふふふ」
蓑畑雪穂。麻尋の家に使用人として潜伏していた、俺らを拉致したことのあるアンドロイドだ。声色を男から女に戻して、例の不自然な笑い声で嗤う。でも何故こいつがこんなことを?
「その……私たちはあなたを騙していたのよ。仲山君」
「『私……たち』だと……??」
「ふふふふふふ」
辻堂が主謀者なのは確かなようだった。だが真相は俺の想像を絶していたのだ。
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