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第3章>毒蛇の幻像[マリオネット・ゲーム]
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「千夜……?」
このタイミングでまさかの千夜が名乗り出る。無理やりすぎやしないか?俺のことを庇おうとしてるのだろうか。そう思った俺は千夜の目を見ながら言った。
「詳しく説明してくれ」
「うん……」
すると目を逸らしながら彼は答えた。そしてみんなが座る中、立ち上がる。
「11年前、もちろん僕も5歳の頃だよ。僕に一個下の妹がいるのは知ってるよね」
「初めて聞いたわ」
誰だ今余計な口挟んだやつは。
「ま、まあ、妹がいて、結芽って言うんだけど。ユメと僕はその日公園にいて、ボールで遊んでたんだ。その公園のそばには大きな階段があるんだけど、ボールがそこまで飛んでっちゃって……慌てて取りに行ったんだ」
だがそこで問題が起こった。夕焼けに染まった階段に、赤いボール。見えにくくなっていたのもあって、1人の女性がそのボールを踏んでしまったのだという。
「そんな場所でボールを踏んだらどうなるか……今でも鮮明に覚えてるんだ。目の前でその女性が階段の下へと消えていく景色、後を追って聞こえてくる鈍い音を」
「そんなことが……」
美頼はそう呟いて鼻をすすりながら辛い顔をする。しばらくの沈黙の後、今度は麻尋が口を開いた。顔は辻堂の方を向いている。
「でもそれはモモチーのお母さんだったの?」
「いや……私の母はそんな死に方じゃないわ。はっきりと殺されていたから……」
「だからと言って……!」
辻堂のセリフを遮り、千夜が大声を上げた。俺は少し違和感を覚えた。
「僕が人殺しじゃない理由にはならない……。おしゃべり人形は十一年前の人殺しとしか言ってないだろ。だったら僕が名乗り出てもいいはずだ」
「おい千夜それって」
俺は思わず声をあげた。千夜が何を考えているのか気づいたからだ。すると千夜は近づいてきて、小声で俺に耳打ちする。
「僕なら大丈夫。刃物ならごまかせる自信があるから。それよりもアクションを起こしてあいつの動きを見ることが大事でしょ?」
「だからって、無鉄砲にも程があるだろ!!」
こいつは囮になろうとしている。今千夜が話したことが真実かどうかわからないが、真実だから話した可能性が高い。自分も十一年前の人殺しを名乗ることができれば、ゲームは終わり。理論上残りの部員たちを解放できるはずだからだ。
「ほら、イムって言うんだろ!僕のことを捕まえに来なよ!!僕が十一年前の人殺しだ!」
周りがまだ混乱している中、千夜自ら大声でそう叫んでしまう。美頼も、麻尋も、辻堂も。みんな無言で見ていることしかできなかった。そして、ヤツの動きがあった。
「なるほど、そうか」
無機質な声が響く。そして、部屋の隅の壁の一部がガコンと音を立てて内側に凹んだ。その凹んだ壁の上の壁が、スライドして元あった壁が消えた部分にハマる。
「な、なに……?」
美頼がふと口に出す。そうしてパズルのようにバラバラに壁がスライドしていったかと思うと、たちまちそこには穴が出来上がって、先ほどの人形が出てくる。手に何かを握りながら。そして千夜の方へその何かが向けられる。
それはいわゆる拳銃のように見えた。次の瞬間、人形は人の目には追いつけない速さで移動した。気がつけば千夜の真後ろで、彼のこめかみに銃を突きつけていた。
刃物ならごまかせる自信がある。そう言っていた千夜の目は見開いていた。おそらくレイが殺された方法が刺殺だったから、そんなことを言ったのだろうが。
軽い発砲音と共に、白い壁に赤黒い液体が飛び散る。
千夜の側頭部から。
あっけない。本当にあっけない出来事だった。千夜の目は見開かれたまま、生気を失う。
次の瞬間、レイが殺された時のように床に穴が空いた。そして一瞬で目の前から千夜が消える。人形は元来た道を戻っていった。壁も元通りスライドしていく。
俺だけでなくたぶんみんな、その一瞬一瞬を、目に焼き付けさせられただろう。しかしその上さらに俺たちを恐怖のどん底に落とす声が響くことになる。
「残念だ。ゲームを続行しろ」
このタイミングでまさかの千夜が名乗り出る。無理やりすぎやしないか?俺のことを庇おうとしてるのだろうか。そう思った俺は千夜の目を見ながら言った。
「詳しく説明してくれ」
「うん……」
すると目を逸らしながら彼は答えた。そしてみんなが座る中、立ち上がる。
「11年前、もちろん僕も5歳の頃だよ。僕に一個下の妹がいるのは知ってるよね」
「初めて聞いたわ」
誰だ今余計な口挟んだやつは。
「ま、まあ、妹がいて、結芽って言うんだけど。ユメと僕はその日公園にいて、ボールで遊んでたんだ。その公園のそばには大きな階段があるんだけど、ボールがそこまで飛んでっちゃって……慌てて取りに行ったんだ」
だがそこで問題が起こった。夕焼けに染まった階段に、赤いボール。見えにくくなっていたのもあって、1人の女性がそのボールを踏んでしまったのだという。
「そんな場所でボールを踏んだらどうなるか……今でも鮮明に覚えてるんだ。目の前でその女性が階段の下へと消えていく景色、後を追って聞こえてくる鈍い音を」
「そんなことが……」
美頼はそう呟いて鼻をすすりながら辛い顔をする。しばらくの沈黙の後、今度は麻尋が口を開いた。顔は辻堂の方を向いている。
「でもそれはモモチーのお母さんだったの?」
「いや……私の母はそんな死に方じゃないわ。はっきりと殺されていたから……」
「だからと言って……!」
辻堂のセリフを遮り、千夜が大声を上げた。俺は少し違和感を覚えた。
「僕が人殺しじゃない理由にはならない……。おしゃべり人形は十一年前の人殺しとしか言ってないだろ。だったら僕が名乗り出てもいいはずだ」
「おい千夜それって」
俺は思わず声をあげた。千夜が何を考えているのか気づいたからだ。すると千夜は近づいてきて、小声で俺に耳打ちする。
「僕なら大丈夫。刃物ならごまかせる自信があるから。それよりもアクションを起こしてあいつの動きを見ることが大事でしょ?」
「だからって、無鉄砲にも程があるだろ!!」
こいつは囮になろうとしている。今千夜が話したことが真実かどうかわからないが、真実だから話した可能性が高い。自分も十一年前の人殺しを名乗ることができれば、ゲームは終わり。理論上残りの部員たちを解放できるはずだからだ。
「ほら、イムって言うんだろ!僕のことを捕まえに来なよ!!僕が十一年前の人殺しだ!」
周りがまだ混乱している中、千夜自ら大声でそう叫んでしまう。美頼も、麻尋も、辻堂も。みんな無言で見ていることしかできなかった。そして、ヤツの動きがあった。
「なるほど、そうか」
無機質な声が響く。そして、部屋の隅の壁の一部がガコンと音を立てて内側に凹んだ。その凹んだ壁の上の壁が、スライドして元あった壁が消えた部分にハマる。
「な、なに……?」
美頼がふと口に出す。そうしてパズルのようにバラバラに壁がスライドしていったかと思うと、たちまちそこには穴が出来上がって、先ほどの人形が出てくる。手に何かを握りながら。そして千夜の方へその何かが向けられる。
それはいわゆる拳銃のように見えた。次の瞬間、人形は人の目には追いつけない速さで移動した。気がつけば千夜の真後ろで、彼のこめかみに銃を突きつけていた。
刃物ならごまかせる自信がある。そう言っていた千夜の目は見開いていた。おそらくレイが殺された方法が刺殺だったから、そんなことを言ったのだろうが。
軽い発砲音と共に、白い壁に赤黒い液体が飛び散る。
千夜の側頭部から。
あっけない。本当にあっけない出来事だった。千夜の目は見開かれたまま、生気を失う。
次の瞬間、レイが殺された時のように床に穴が空いた。そして一瞬で目の前から千夜が消える。人形は元来た道を戻っていった。壁も元通りスライドしていく。
俺だけでなくたぶんみんな、その一瞬一瞬を、目に焼き付けさせられただろう。しかしその上さらに俺たちを恐怖のどん底に落とす声が響くことになる。
「残念だ。ゲームを続行しろ」
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