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序章>はじめに

Log.5 発現

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 「これ、なんだよ……?」

 ゆっくりと画面のその場所を指さす俺。男のものと思われる身体の首元から上にかけて、黒くモヤがかかっているのだ。
 なぜか寒気がしてきた。さっきまで暖かかった春風が少し肌寒く感じる。

 「は?何言ってんの。それがアキのお父さんに決まってんじゃん」

 猫のように首をかしげる美頼。その横から千夜が覗き込んできた。

 「ほー……これがアキのお父さんか」

 信じられないことを言うものだ。

 「え……千夜見えんの?!」

 「なにそれ。幽霊じゃないんだから」

 可笑しそうに俺を見る千夜。こいつは嘘をつくと顔に出るタイプなんだが、今回は違うようだ。明らかに写真自体に黒いモヤがかかってるのに彼らにはそうではない。となると俺の目が問題ということになるが……

 「てかひーちゃん髪長かったんだね」

 「何?なんか文句ある?」

 「なんでそうなる。僕はただ単にロング柊木もありだなーって思っ……」

 「黙れロリコン」

 「だからなんでそうなるの?!」

 美頼と千夜が話している。だがその内容まではしっかり聞こえてこなかった。なんで父さんの顔が見られないのか。そう考え出した辺りで、俺はひどい頭痛に襲われていたからだ。異変に気付いた美頼が声をかけてくる。

 「どうしたのアキ?顔色悪いけど……」

 「ちょっ……と、頭が……」

 「さっきまであんなに元気だったのに……」

 千夜も心配そうに顔を見てくる。よほど俺の顔色が悪いらしい。
 写真の黒いモヤをよく見ると、ゾクリと背筋が寒くなる。脳裏をよぎるのはどういうわけか、いつもの悪夢で見るあの気味の悪い笑顔だ。

 頭が痛い。

 焦げ臭い。

 蝶が見える。

 俺は頭を抱えて、目をつぶり、そして――

 

 ――消えゆくように意識を失った。


 *

 新高校生活1日目。
 始業式の放課後、私はアキと千夜と一緒に近くの川の河原に来ていた。
 そしてそれはなんの前触れもなく起こった。

 「アキ!?本当に大丈夫なの?!」

 目が虚ろになった彼に問いかける。私が見せたアキの父親の写真が原因なのだろうか……千夜は困った顔でなんと言えばいいか戸惑っているようだ。

 「ねぇ返事くらいしなさいよ!!!」

 つい強い口調になってしまう。私の悪い癖だ。

 「ねぇってば!!」

 すると、突然アキの手が動く。それは肩を揺すっている私の手に触れた。

 「……ごめん。もう大丈夫だよ」

 声がした。アキの声だ。でも何かおかしい。違和を感じた。

 「アキ……?」

 「それと……」

 アキが顔を上げ、千夜を見据える。見ると千夜にとってもなにか違和感があるみたいだ。いつもとは何か違う、どことなく物憂げな表情で彼は言った。


 「初めまして。千夜さん」




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