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第2章>仔羊の影踏[ゾンビ・アポカリプス]
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「ん?」
その時俺が横目で捉えたのは、突然走り出した優衣さん。しかもムカデに向かってならまだしも、商店街に向かって全力疾走している。
「優衣さん!?何やって……」
彼女は振り向きもせずに大声でこう言った。
「逃げるよ!!」
「へ?!」
え、なに降参するの。まじで?
とにかく俺と美頼も優衣さんについて行くことにした。だが走りだすと当然、ムカデも身をうねらせながら大量の足音を立てて追ってくる。
なんとか追いつくと、商店街の角を曲がりながら優衣さんは言った。
「ごめんね急に。でも、考えがあるのよ」
「い、いや……でも一体どういう……?」
「見ての通り私たちは弱い。さっきまで元気だった軍事基地前のゾンビに対抗出来なかったのと同じさ」
優衣さんの言葉の意図に、俺は気づいた。美頼が全力疾走しながら口をとがらせる。
「もう何なのもったいぶらずに早く教えなさいよ!!」
オネエがいる。隣にめちゃくちゃ走ってるオネエがいる。
「つまり囮作戦ってことだ。さっき美頼と俺が初めて合流した時みたいにな」
そう言いつつ、俺らは左に曲がる。
「あ、なるほ……ひゃっ!?」
冷静に会話しているが、実際には自転車並の速さで走る大ムカデから逃走中だ。そしてもちろん、商店街の中には死に損ないの元人間たちがうろついている。
要するに今の美頼の悲鳴は、曲がった瞬間にそのゾンビのうちの一体と衝突しそうになったために発せられたものだ。まあ、『衝突しそうになった』というのはつまり実際には衝突を免れたわけで、同時に優衣さんのチートに再び助けられたということでもある。
次は豆腐屋の角を曲がりながら、美頼は叫ぶ。
「あ、ありがとうございます、優衣さん!」
目と鼻の先で、今までと同様、ロープに背骨を折られたゾンビを踏み越えながら。
案外こいつ、根の部分ではタフだ。
「いいってことよ。みよっちゃん」
俺は優衣さんの方を向く。
「そろそろ、足が、限界です……」
「何言ってんのそれくらい我慢しなさいよ。あんた男でしょう??……あ、今は女か……」
「そういうのいいから!!!!」
「あはは、ごめんごめん。とにかく、二人が囮になって一人がマンホールのとこまで行って開ける。そこに飛び込んですぐマンホールを閉める!どうよ」
小学生でも考えつきそうな作戦だ。
でも……
「問題なさそうですね。やりましょうか!」
俺がそう言うと、美頼は不安そうな顔になる。
「わ、私一人はやだよ?」
「何言ってんだお前今男だろ」
「そういうのいいから!!!」
また角を曲がりながら、優衣さんがゾンビを倒した。そして続ける。
「じゃあアキくんに行ってもらおうかな。みよっちゃんは任せなさいっ」
やっぱそうくるかー。さっきと違って囮ではないが、また一人だ。
「自分の身くらい自分で守ります、よっと!」
そう言いながら、俺も目の前に迫ってきたゾンビヘッドを拳銃で撃ち抜く。頭が派手に吹っ飛んだ。
「次の角で一周するから、そこで別れようか。ゾンビ達も今走ってる私達、いや、ムカデの音に引きつけられて少なくなってるはず!もう一周する間に開けられる?」
「余裕っ!」
「いい返事だ!」
数メートル先に、商店街の屋根がなくなって日が差している地面が見える。俺は息切れしながらも、覚悟を決めた。
3……2……1…………!
視界がひらけた。
「じゃあ任せたよ!」
「アキ!その、頑張って……」
「俺の声で変なこと言うなっての」
俺は角に隠れた。すぐに優衣さんと美頼が通り過ぎて、そして後に続くムカデとウォーキングデッド。
なんとか彼らには気付かれずに済んだようだ。
俺はすぐに例のマンホールへ向かった。優衣さんの狙い通り、辺りには生きたゾンビはいなくなっていた。俺はその円盤のくぼみに指を突っ込んで引っ張る。
そして冷や汗が吹き出てくる。
「あれ……どうやって開けんのこれ……」
その時俺が横目で捉えたのは、突然走り出した優衣さん。しかもムカデに向かってならまだしも、商店街に向かって全力疾走している。
「優衣さん!?何やって……」
彼女は振り向きもせずに大声でこう言った。
「逃げるよ!!」
「へ?!」
え、なに降参するの。まじで?
とにかく俺と美頼も優衣さんについて行くことにした。だが走りだすと当然、ムカデも身をうねらせながら大量の足音を立てて追ってくる。
なんとか追いつくと、商店街の角を曲がりながら優衣さんは言った。
「ごめんね急に。でも、考えがあるのよ」
「い、いや……でも一体どういう……?」
「見ての通り私たちは弱い。さっきまで元気だった軍事基地前のゾンビに対抗出来なかったのと同じさ」
優衣さんの言葉の意図に、俺は気づいた。美頼が全力疾走しながら口をとがらせる。
「もう何なのもったいぶらずに早く教えなさいよ!!」
オネエがいる。隣にめちゃくちゃ走ってるオネエがいる。
「つまり囮作戦ってことだ。さっき美頼と俺が初めて合流した時みたいにな」
そう言いつつ、俺らは左に曲がる。
「あ、なるほ……ひゃっ!?」
冷静に会話しているが、実際には自転車並の速さで走る大ムカデから逃走中だ。そしてもちろん、商店街の中には死に損ないの元人間たちがうろついている。
要するに今の美頼の悲鳴は、曲がった瞬間にそのゾンビのうちの一体と衝突しそうになったために発せられたものだ。まあ、『衝突しそうになった』というのはつまり実際には衝突を免れたわけで、同時に優衣さんのチートに再び助けられたということでもある。
次は豆腐屋の角を曲がりながら、美頼は叫ぶ。
「あ、ありがとうございます、優衣さん!」
目と鼻の先で、今までと同様、ロープに背骨を折られたゾンビを踏み越えながら。
案外こいつ、根の部分ではタフだ。
「いいってことよ。みよっちゃん」
俺は優衣さんの方を向く。
「そろそろ、足が、限界です……」
「何言ってんのそれくらい我慢しなさいよ。あんた男でしょう??……あ、今は女か……」
「そういうのいいから!!!!」
「あはは、ごめんごめん。とにかく、二人が囮になって一人がマンホールのとこまで行って開ける。そこに飛び込んですぐマンホールを閉める!どうよ」
小学生でも考えつきそうな作戦だ。
でも……
「問題なさそうですね。やりましょうか!」
俺がそう言うと、美頼は不安そうな顔になる。
「わ、私一人はやだよ?」
「何言ってんだお前今男だろ」
「そういうのいいから!!!」
また角を曲がりながら、優衣さんがゾンビを倒した。そして続ける。
「じゃあアキくんに行ってもらおうかな。みよっちゃんは任せなさいっ」
やっぱそうくるかー。さっきと違って囮ではないが、また一人だ。
「自分の身くらい自分で守ります、よっと!」
そう言いながら、俺も目の前に迫ってきたゾンビヘッドを拳銃で撃ち抜く。頭が派手に吹っ飛んだ。
「次の角で一周するから、そこで別れようか。ゾンビ達も今走ってる私達、いや、ムカデの音に引きつけられて少なくなってるはず!もう一周する間に開けられる?」
「余裕っ!」
「いい返事だ!」
数メートル先に、商店街の屋根がなくなって日が差している地面が見える。俺は息切れしながらも、覚悟を決めた。
3……2……1…………!
視界がひらけた。
「じゃあ任せたよ!」
「アキ!その、頑張って……」
「俺の声で変なこと言うなっての」
俺は角に隠れた。すぐに優衣さんと美頼が通り過ぎて、そして後に続くムカデとウォーキングデッド。
なんとか彼らには気付かれずに済んだようだ。
俺はすぐに例のマンホールへ向かった。優衣さんの狙い通り、辺りには生きたゾンビはいなくなっていた。俺はその円盤のくぼみに指を突っ込んで引っ張る。
そして冷や汗が吹き出てくる。
「あれ……どうやって開けんのこれ……」
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