兄妹愛と能力と悪魔

片想い中の中学生

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五月二十日

(俺は、助けることが出来たんだ。
今の俺にとって、一番大切なものを守りきった。)
結衣は生きている。
これ以上の事は、今の仁にはなにもなかった。

「お兄ちゃん...
今、何が・・・?」 

今時間を止めたのが現実の事であれば、道路から歩道へ瞬間移動したように感じるのだから、不思議に思うのは無理もない。
仁はただ、わからない、よかった、生きてる、と繰り返していた。

その日の授業は、当然何も手がつかない。
考えている間に、外は茜に染まり、
教室には結衣と仁以外誰もいなくなっていた。

「お兄ちゃん、今日の朝のこと....」
「いや・・・なんでもない、帰ろう」

結衣の言葉を遮るように、また、疑問をかき消すように結衣の手を握って歩き出す。
仁は深く考え込み、家に帰りつくまで、二人は一言も言葉を発しなかった。

家に帰りついて、先に言葉を発したのは、結衣だった。

「お兄ちゃん、ぎゅってして。」

結衣は両手を仁に向かって大きく広げて言った。

(そうだ、こいつ、1日一回はこれ言うんだった...)

これが日課になっている仁は、何のためらいもなく結衣を抱きしめる。

結衣の肩に顔をうずめると、考え込んでいた事も、忘れることができる。
とても心地が良い。癒される。

「こういうの、好きだな。俺。」
「え?」

心の中で言ったつもりが、声に出してしまっていた。

「今、声出てた?」
「うん」

結衣がくすっと笑う。
仁もそれに返して目を合わせて笑った。

「あれ?お兄ちゃん、こんなに大きなタトゥーとかしてたっけ?」

と、結衣が不思議そうな顔をしていった。

「背中に、模様があるよ」

仁は驚いて、走って鏡のある部屋に向かって自分の背中を映した。

確かに、模様がある。
左右対称の、先が三本に分かれた黒い槍のような形の模様。

「今日家を出る時は無かったのに・・・」

「まさか、今朝の、瞬間移動みたいなやつと関係してる?」

やはり、結衣には瞬間移動のように感じられていたのか。
やはりこれは、結衣に全て話した方が良いのか。
考えるより先に、口が動いていた。

「あれは瞬間移動したんじゃないんだ。」

「え?」

結衣の肩に両手を置いて、一呼吸してから再び口を開いた。

「全部話すよ。
今朝起こったこと。」


────────────────────

仁の背中の模様、上手く説明できないです。
すいません。
例えるとしたら、あれです。
ポセイドンがもってるやつ。

次の投稿遅れます。
と言いましても、1週間程度なので、お気に入り外さないでください
お願いします!!!
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