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19.結界展開
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「だめ、間に合わない……来る……!」
呪術砲の赤い輝きが杏香の目に届いた。もはや回避は出来ない。
「バリア」
カノンの声と同時にWG―Σの前面に、WG―Σを覆えるくらい巨大な魔法陣が出現した。結界が展開されたのだ。結界は、見た目こそ薄いが、表面はWG―Σと同じくらいの大きさだ。
そして直後、呪術砲がWG―Σを覆う結界に命中する。
「うおおおおぉぉ……!」
「くぅっ!」
「うっ……うぅぅっ……!」
ブレイズ、杏香、カノン、三人の悲鳴が響く中、カノンは一段と苦しそうにしている。魔法兵器にはカノン自身の魔力を使うからだ。カノンは相当な魔力量を持っているが、敵の呪術砲の威力は普通の兵器とは比べものにならない。
「まずい……わよね……!」
杏香が傍らのスイッチを押すと、WG―Σのコックピットのハッチが開いた。
「くっ、結界が聞いてるとはいえ、生身じゃ長くは持たなそうね……でも、やるしかないでしょ!」
体が焼けるように熱い。それも普通の熱さではなく、炎以外の何か不気味なもので、体中を炙られているような感覚だ。これが呪術砲のエネルギーなのだろう。
加えて、バリアから漏れた、目の細かい何かの破片が時折吹きこんできて、呪術砲と合わせて、容赦無く杏香の体を傷つけている。シャワーの時から着続けることになったワンピースも、そこら中を切り裂かれている。この戦いが終わった時にはボロボロになって使えなくなっているだろう。杏香は残念に思った。……勿論、生きて帰れなければ、ボロボロになったワンピースすら見てがっかりすることもできないだろうけれど。
「<光>と<圧>光波壁!」
視界一面に白い光の壁が広がる。辺りは一気に明るくなり、発射した杏香の目も目が眩むようだ。
杏香は、両手に持った属性銃で、WG―Σのバリアとは別のバリア、光波壁を展開し、二重にした。
「光の属性弾はオリジナルなのに……!」
呪術砲の想像以上の威力に驚愕する。オリジナルの属性弾は、通常の属性弾とは比べ物にならないほど強力だ。それに加え、WG―Σのバリアと合わせて二重にしてあるのにもかかわらず、杏香の手には、凄い衝撃が伝わってきている。
「あたしが自前で、こんな激レア属性弾使ってんだから、耐えなさいよおぉぉぉぉ!」
全身に火傷や切り傷を受けながらも、杏香は耐えている。
「ぐ……これは……!」
杏香の目の前の赤い光が、徐々に薄くなっていく。どうやら、耐え切れたらしい。
「……何とかなったみたいね」
杏香はは属性銃を腰に戻し、ハッチを閉じた。
「ふぅー……」
杏香が座席にぐったりと寄り掛かる。
「大丈夫か杏香!?」
「なんとかね、体中、傷や火傷だらけだけど、致命的に深いのは無いと思う。はー、服がまたボロボロだわ」
「か……可愛かったのに……勿体無い……」
杏香の通信機からカノンの激しい息遣いが聞こえる。
「コックピットは開けない方が良かったんじゃねえか?」
「色々とリスクをはらんでることは分かってるんだけど……今回は仕方ないでしょ、ブレイズ。こうしなけりゃ、やられてたかもしれないもん。それより、カノン、大丈夫!?」
「はぁ……はぁ……だ、大丈夫……」
杏香はその答えを聞いて不安になった。カノンは大丈夫だと言っているが、かなり息が上がっている。魔法でこれだけ息が上がるほど消耗したのなら、これ以上魔力を使えば命の危険がありそうだ。
「仕方ないわね。一か八か……」
杏香は手動で榴弾砲の射出角度を設定した。
「何やってんだ杏香!?」
「忠告されたばかりで悪いけど……」
杏香がコックピットのハッチを開け、榴弾砲を発射し、発射された榴弾砲に、属性銃の照準を合わせた。
「この射角なら、あの赤い光の根元まで届く筈だけど、本当に狙い通り飛ぶかどうか……」
そう言いながら、杏香は属性銃の引き金を引いた。
「<風>と<圧>重衝撃波!」
杏香は榴弾砲に重衝撃波をぶつけ、榴弾砲の飛距離を伸ばそうと考えていた。しかし、実際に試したことは無く、狙い通りに飛ぶかは分からない。敵機の行動と、赤い光の直線的な軌道、そして、この辺りの地形から、赤い光を発射した装置は、かなり正確に割り出せた筈だが、そこに正確に榴弾砲を当てられるかどうかは出たとこ勝負だ。
そのうえ、赤い光の発射装置がどれだけの強度を持っているかも分からない。榴弾砲が直撃しても壊れないのか、それとも多少コースを逸れても爆風で壊れる程度のものなのか……。
杏香は不安で仕方がなかったが、それが成功か失敗かは、次の瞬間の光景が物語っていた。
赤い光の発射装置があるであろう地点から、赤い光が発せられたからだ。その光はWG―Σの方へ向かってはいない。真上に、まるで天まで届く柱のように、赤い光が伸びている。大量の魔力が発散しているのだろう。
榴弾砲は、赤い光の発射装置に命中したか、その爆風に巻き込んで破壊したのかは分からないが、いずれにしても、赤い光の発射装置を破壊するのには十分な威力は出せたらしい。。
「やった……カノン、大丈夫!?」
「う……杏香……」
カノンの声色が、目に見えてますます弱くなっている。
「意識が朦朧としてるみたい。早い所、医者の所へ連れてった方がいいわね」
「ああ。癪だが、先に戻らせてもらおうぜ」
「大丈……夫……」
「無理しなくていい。後はあたし達で何とかするから、カノンは休んでて」
「杏香も休めよ。あんなことして傷が浅いはずねえ」
ブレイズの言う通り、杏香の全身に出来てしまった傷には深いものもあるが、致命的な傷が無いことは、杏香自身で判断できた。
「大丈夫、この間のよりはマシよ。それに、あたしの場合、肉体的な怪我だけなんだから、意識の方は、はっきりしてるわ。むしろあたしもΣを動かした方が、その分早く帰還できる。カノンもあたしも、その分早く治療ができるでしょ?」
「へっ、相変わらず凄えファイトだぜ。が、無理はするなよ?」
「分かってる。次にはもっと無茶な任務が待っているんだから、こんなところで無理してたら、体がもたないわよ」
杏香達は出来るだけ早くキャンプへと向かったが、カノンはその後、魔力の副作用で数日間、頭痛や吐き気に見舞われることとなった。
呪術砲の赤い輝きが杏香の目に届いた。もはや回避は出来ない。
「バリア」
カノンの声と同時にWG―Σの前面に、WG―Σを覆えるくらい巨大な魔法陣が出現した。結界が展開されたのだ。結界は、見た目こそ薄いが、表面はWG―Σと同じくらいの大きさだ。
そして直後、呪術砲がWG―Σを覆う結界に命中する。
「うおおおおぉぉ……!」
「くぅっ!」
「うっ……うぅぅっ……!」
ブレイズ、杏香、カノン、三人の悲鳴が響く中、カノンは一段と苦しそうにしている。魔法兵器にはカノン自身の魔力を使うからだ。カノンは相当な魔力量を持っているが、敵の呪術砲の威力は普通の兵器とは比べものにならない。
「まずい……わよね……!」
杏香が傍らのスイッチを押すと、WG―Σのコックピットのハッチが開いた。
「くっ、結界が聞いてるとはいえ、生身じゃ長くは持たなそうね……でも、やるしかないでしょ!」
体が焼けるように熱い。それも普通の熱さではなく、炎以外の何か不気味なもので、体中を炙られているような感覚だ。これが呪術砲のエネルギーなのだろう。
加えて、バリアから漏れた、目の細かい何かの破片が時折吹きこんできて、呪術砲と合わせて、容赦無く杏香の体を傷つけている。シャワーの時から着続けることになったワンピースも、そこら中を切り裂かれている。この戦いが終わった時にはボロボロになって使えなくなっているだろう。杏香は残念に思った。……勿論、生きて帰れなければ、ボロボロになったワンピースすら見てがっかりすることもできないだろうけれど。
「<光>と<圧>光波壁!」
視界一面に白い光の壁が広がる。辺りは一気に明るくなり、発射した杏香の目も目が眩むようだ。
杏香は、両手に持った属性銃で、WG―Σのバリアとは別のバリア、光波壁を展開し、二重にした。
「光の属性弾はオリジナルなのに……!」
呪術砲の想像以上の威力に驚愕する。オリジナルの属性弾は、通常の属性弾とは比べ物にならないほど強力だ。それに加え、WG―Σのバリアと合わせて二重にしてあるのにもかかわらず、杏香の手には、凄い衝撃が伝わってきている。
「あたしが自前で、こんな激レア属性弾使ってんだから、耐えなさいよおぉぉぉぉ!」
全身に火傷や切り傷を受けながらも、杏香は耐えている。
「ぐ……これは……!」
杏香の目の前の赤い光が、徐々に薄くなっていく。どうやら、耐え切れたらしい。
「……何とかなったみたいね」
杏香はは属性銃を腰に戻し、ハッチを閉じた。
「ふぅー……」
杏香が座席にぐったりと寄り掛かる。
「大丈夫か杏香!?」
「なんとかね、体中、傷や火傷だらけだけど、致命的に深いのは無いと思う。はー、服がまたボロボロだわ」
「か……可愛かったのに……勿体無い……」
杏香の通信機からカノンの激しい息遣いが聞こえる。
「コックピットは開けない方が良かったんじゃねえか?」
「色々とリスクをはらんでることは分かってるんだけど……今回は仕方ないでしょ、ブレイズ。こうしなけりゃ、やられてたかもしれないもん。それより、カノン、大丈夫!?」
「はぁ……はぁ……だ、大丈夫……」
杏香はその答えを聞いて不安になった。カノンは大丈夫だと言っているが、かなり息が上がっている。魔法でこれだけ息が上がるほど消耗したのなら、これ以上魔力を使えば命の危険がありそうだ。
「仕方ないわね。一か八か……」
杏香は手動で榴弾砲の射出角度を設定した。
「何やってんだ杏香!?」
「忠告されたばかりで悪いけど……」
杏香がコックピットのハッチを開け、榴弾砲を発射し、発射された榴弾砲に、属性銃の照準を合わせた。
「この射角なら、あの赤い光の根元まで届く筈だけど、本当に狙い通り飛ぶかどうか……」
そう言いながら、杏香は属性銃の引き金を引いた。
「<風>と<圧>重衝撃波!」
杏香は榴弾砲に重衝撃波をぶつけ、榴弾砲の飛距離を伸ばそうと考えていた。しかし、実際に試したことは無く、狙い通りに飛ぶかは分からない。敵機の行動と、赤い光の直線的な軌道、そして、この辺りの地形から、赤い光を発射した装置は、かなり正確に割り出せた筈だが、そこに正確に榴弾砲を当てられるかどうかは出たとこ勝負だ。
そのうえ、赤い光の発射装置がどれだけの強度を持っているかも分からない。榴弾砲が直撃しても壊れないのか、それとも多少コースを逸れても爆風で壊れる程度のものなのか……。
杏香は不安で仕方がなかったが、それが成功か失敗かは、次の瞬間の光景が物語っていた。
赤い光の発射装置があるであろう地点から、赤い光が発せられたからだ。その光はWG―Σの方へ向かってはいない。真上に、まるで天まで届く柱のように、赤い光が伸びている。大量の魔力が発散しているのだろう。
榴弾砲は、赤い光の発射装置に命中したか、その爆風に巻き込んで破壊したのかは分からないが、いずれにしても、赤い光の発射装置を破壊するのには十分な威力は出せたらしい。。
「やった……カノン、大丈夫!?」
「う……杏香……」
カノンの声色が、目に見えてますます弱くなっている。
「意識が朦朧としてるみたい。早い所、医者の所へ連れてった方がいいわね」
「ああ。癪だが、先に戻らせてもらおうぜ」
「大丈……夫……」
「無理しなくていい。後はあたし達で何とかするから、カノンは休んでて」
「杏香も休めよ。あんなことして傷が浅いはずねえ」
ブレイズの言う通り、杏香の全身に出来てしまった傷には深いものもあるが、致命的な傷が無いことは、杏香自身で判断できた。
「大丈夫、この間のよりはマシよ。それに、あたしの場合、肉体的な怪我だけなんだから、意識の方は、はっきりしてるわ。むしろあたしもΣを動かした方が、その分早く帰還できる。カノンもあたしも、その分早く治療ができるでしょ?」
「へっ、相変わらず凄えファイトだぜ。が、無理はするなよ?」
「分かってる。次にはもっと無茶な任務が待っているんだから、こんなところで無理してたら、体がもたないわよ」
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