巫女と連続殺人と幽霊と魔法@群像のパラグラフ

木木 上入

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98話「カマ」

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「何です、改まって」
「この家、ひとけが無さ過ぎねーかって、思うんだが……なんつーか、人が居ないってことじゃなくて、人が住んでたって形跡が、それほど見当たらねーなって。食器は綺麗に片づけられてるし、洗濯機には洗濯物もねーし、干されてもいねーし……」
「……そうですね、言いたい事は分かります」
「梓さんには、理由が何でか分かってるんだろ?」
「……駿一さんと瑞輝さんは、知らないですか? 冬城さんの最近の状態を」
「俺はあんま、人には構わない性質たちだからな。全く分からん。瑞輝は?」
「え……僕も、冬城さんとはたまに話すだけだから、特には……」
「そうですか……学校で噂になってもいないです?」
「いや……特に何も知らんな。瑞輝は?」
「僕も冬城さんの噂は、特に聞かないなぁ」
「そうですか……」
 冬城さん自身が、なるべくうわさが広がらないように、何らかの方法で対処していたのか、それとも、この連続殺人事件の中では目立たなかったのか……梓は、目立つはずの噂が目立たず、広がらなかった理由は何か。そして、この事を二人に言ってもいいのかと、深く考え込んでしまうことになった。

「……梓さん?」
 今までテキパキと呪いを探して回っていた梓が、急にピタリと立ち止まって考え込んでしまったので、瑞輝は不思議に思い、梓に呼びかけた。そして、あまり間を置かずに、次の言葉を発した。

「多分、言っていいと思う」
 瑞輝は感じたままを話した。梓さんが話しづらくしているのならば、結構重大な事に違いない。冬城さんに関わる事なら、ここで聞いておく必要があるのではないか。そう思ったからだ。

「そうですね。いずれ分かる事でしょうし……今まで、話す必要は無いかと思って放っておいたですが……いえ、違いますね。話す必要は感じてましたが、重い話なので驚かせたくなくて、聞かれるまでは黙っておこうと思ってたですね」
「重い……話って……?」
「不吉な感じがプンプンするな。だが、ここまできて驚くことなんてねーよ」
「そうだよね、連続殺人が近所で起きてる時点でびっくりだし……恐怖だし」
「ええ……じゃあ、ちょっと衝撃的ですが、心して聞いてくださいね」
 梓が言うと、二人は頷いた。

「実は、この家に人が居ない原因によって、私達の中で、冬城さんが犯人だという可能性が、ぐんと高まったんです。ただ、他にも同じくらいに怪しい候補は何人か居たので、完全には絞りきれなかったですけど……」
 梓が、一度、二人から目を逸らした。しかし、ここまで話して、その先を言わないわけにもいかないと、腹を決めて話を続け始めた。
「この家の使用人、冬城さんの両親、弟……皆、あの怪物に殺されてるです」
「ええっ!?」
「待て待て! ってことは、冬城は今、一人暮らしか!?」
「そうです」
 淡々と話す梓に、唖然とする駿一と瑞輝。そして、暫く会話が止まる。

「そんな露骨な……! だったら、もっと早く、冬城が犯人だって怪しまれたんじゃねーのか?」
「ええ、そう思うでしょうが、同じ境遇の人は、この近所に結構な人数居たので疑われなかったです。カモフラージュのために、同じ境遇の人を意図的に作り出したのでしょう。冬城さんが怪しいと思ったのは、ごくごく最近、呪いに関する情報が、ようやく整ってきて、呪いの候補が絞られてきた時からです」
「そこまで計算のうちってわけか……冬城の奴、あんな性格して、よくやるぜ」
「彼女は計算高いですよ。表面的には粗暴な人に見えますけど、それは頭の中で取捨選択した結果の行動です。性格的に、リスクを好まないタイプです。……だから、結果的に呪いに走ることになったという部分はありますけど……」
「……梓さん、多分、冬城さんのこと、色々調べたんだ。だから、冬城さんのことについて、こんなに分かってる。僕は……クラスメートなのに、全然冬城さんの本当の気持ちなんて知らなかった」
「気にすることないです。こういった事件が起きて、尚且つ呪いを頼りにここまで念入りに調査をしなければ分からなかったですから。それに……人の本質なんて、そうそう見抜けるものではないですよ」
「梓さん……」
「だからこそ、この手段に出たです。人の本質を見抜くのが難しいからです」
「カマをかけたわけだ」
「そうです。この連続殺人が始まった時、同じタイミングで身内に不幸があった人物。最初はそれだけの条件で調べましたけど、それでも候補は数十人に上りました」
「結構多いんだ……なんか、悲しいな……」
「考えてみれば当然だろ。連続殺人事件ってことは、その分の人は必ず死ぬんだ。他に事故だって起きてるが……」
「……駿一さんの読み通り。呪いが何か、はっきりと特定出来ない以上、事件と事故の両方による死亡を入れるのが妥当と考えました。そして、その中で更に絞り込みました。その中でも身内に多数の死者が出ている人を。そして残ったのが十数人」
「それでもそんなに居るのか……」
「はい。この連続殺人、傾向が見えないようでいて、実は、集中的に身内が被害に遭っている人が居たです」
「うーん……確かに怪しいけど、一人じゃないっていうのが……」
「そう。その点があったので、警察は一時は怪しんだですが、結果的に、手掛かりは見つからなかったということになりました。でも……呪いによる大量殺戮を隠ぺいするためのカモフラージュ。つまり、スケープゴートとして、一家を殺す。それくらいは、この事件を引き起こした、計算高く、冷徹な犯人ならするでしょう」
「なんか、怖いね……」
「私も怖いです。……でも、だから、これ以上は呪いを使わせられないです。だから……私達は最後の一押しをするために、駿一さんの言う通り、カマをかけた。というわけです。そして、そのトラップに最初に引っかかったのが冬城さんでした」
「最初に……ってことは……!」
「いえ……十中八九、冬城さんが犯人です。このトラップには、自分が犯人だという自覚が無ければ引っ掛からないからです」
「……ま、そうだな。何もされないのに、冬城の方が勝手に逃げたわけだから、かなり怪しい」
「う、うん。そうだよね。あの時、僕と駿一君には意味が分からなかったから、唖然とするしかなかった」
「そういうことです。あの状況で、即座に逃げると判断したことで、冬城さんがこの事件に関わっていると証明されました。後は物証だけです」
「物証って……呪いだぞ、梓さん」
「警察内部にも、ある程度オカルトに理解のある人は居ますよ。特に、今回は規模が大きい上に、未解決事件になりかけの事件です」
「お蔵入りって奴か……」
「だから、ちょっと強引な手段に出たんです。……」
 梓は、そこで話をやめ、ふと、隣の部屋へと視線を走らせた。
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