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1章
第10話 リュックサックの冒険者
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駐車場に停めてある軽トラに乗り込むと、環琉ちゃんはナップサックから、缶詰とキャンプ用の多機能ナイフを取り出した。
なぜ24時間スーパーが、すぐそこにあるのに、車中泊のキャンプ仕様?
でも楽しそうなので、そこはまあ。
缶詰は、パッカンと開けやすいのはなく、多機能ナイフの缶きりで開けなくてはいけないのばかりだった。
多機能ナイフの缶きりって、やりづらいのに。
環琉ちゃんは時間をかけ、桃と蜜柑とパイナップルの缶詰を開けた。
途中「わたしどうよ?」って目で、ぼくともなかちゃんをチラ見しながら。
そして、ぼくともなかちゃんは、キャンプ用のフォークを渡された。
環琉ちゃんは多機能ナイフのフォークで食べるらしい。
食べずらいのに。
後部座席を畳んだ小さな空間で、3ッつの缶詰をそれぞれがフォークでつまんだ。
まるで、この小さな空間で3人で、車中泊をしている気分だ。
もなかちゃんは空き缶を袋に入れて
「これからどうする」
「あれ高いもんだし、捕りに戻ってくるじゃない?」
環琉ちゃんは名探偵のように、人差し指を伸ばしながら言った。
ぼくが素早く検索すると、
「あの棒は10万もするんだ」
と画面を見せた。
両側から女子2人が、画面を見る為に寄ってきた。
「両手に花じゃん」ぼくは心の奥で呟いた。
2人の柔らかな良い香りがした。
「でもなんで隠す必要があったんだろう?」
ぼくが問いかけると、両側から声がした。
「見ては行けない・・・」
「見られたくはない事をしていた?」
「めぐるくん、かお、えっちー」
環琉ちゃんの言う『めぐるくん』は、ぼくの事だろう。
めぐるちゃんが、ぼくのことを、めぐるくんって呼んだ!
唐突にそう呼ばれた事にドキッとした。
でも、えっちーことなんて、考えてないし。
環琉ちゃんは、リュックサックの中から、望遠レンズ付きのカメラを撮りだし、
「決定的チャンスをこれで!」
と構えた。
「あっそう言えば昨日の夜、末次さんたちが大勢で、あの川で鰻を獲ってたって言ったような」
「鰻?」
「そう大雨の次の日は鰻が獲れやすいんだって」
環琉ちゃんは、川の写真を一枚撮ると、
「それだよ、それ!鰻だよ。この謎の鍵は!
我が分身よ!今すぐスーパーで鰻丼を買って来るのだ!
そこにすべての謎の鍵が隠されているのだ!」
「え?分身って、ぼくの事?」
環琉ちゃんは静かに頷いだ。
環琉ちゃんの分身なら別に構わないけど、環琉ちゃんにとってぼくの位置関係って何なんだろう?
ぼくは考えながら、スーパーに走った。
半額シールの着いた鰻丼が、ちょうど三つ残っていた。
なんとなく鉄郎爺さんの大切な孫娘の食生活を気にして、ついでに半額のポテトサラダを買った。
環琉ちゃんは、食生活適当そうだし。
つづく
なぜ24時間スーパーが、すぐそこにあるのに、車中泊のキャンプ仕様?
でも楽しそうなので、そこはまあ。
缶詰は、パッカンと開けやすいのはなく、多機能ナイフの缶きりで開けなくてはいけないのばかりだった。
多機能ナイフの缶きりって、やりづらいのに。
環琉ちゃんは時間をかけ、桃と蜜柑とパイナップルの缶詰を開けた。
途中「わたしどうよ?」って目で、ぼくともなかちゃんをチラ見しながら。
そして、ぼくともなかちゃんは、キャンプ用のフォークを渡された。
環琉ちゃんは多機能ナイフのフォークで食べるらしい。
食べずらいのに。
後部座席を畳んだ小さな空間で、3ッつの缶詰をそれぞれがフォークでつまんだ。
まるで、この小さな空間で3人で、車中泊をしている気分だ。
もなかちゃんは空き缶を袋に入れて
「これからどうする」
「あれ高いもんだし、捕りに戻ってくるじゃない?」
環琉ちゃんは名探偵のように、人差し指を伸ばしながら言った。
ぼくが素早く検索すると、
「あの棒は10万もするんだ」
と画面を見せた。
両側から女子2人が、画面を見る為に寄ってきた。
「両手に花じゃん」ぼくは心の奥で呟いた。
2人の柔らかな良い香りがした。
「でもなんで隠す必要があったんだろう?」
ぼくが問いかけると、両側から声がした。
「見ては行けない・・・」
「見られたくはない事をしていた?」
「めぐるくん、かお、えっちー」
環琉ちゃんの言う『めぐるくん』は、ぼくの事だろう。
めぐるちゃんが、ぼくのことを、めぐるくんって呼んだ!
唐突にそう呼ばれた事にドキッとした。
でも、えっちーことなんて、考えてないし。
環琉ちゃんは、リュックサックの中から、望遠レンズ付きのカメラを撮りだし、
「決定的チャンスをこれで!」
と構えた。
「あっそう言えば昨日の夜、末次さんたちが大勢で、あの川で鰻を獲ってたって言ったような」
「鰻?」
「そう大雨の次の日は鰻が獲れやすいんだって」
環琉ちゃんは、川の写真を一枚撮ると、
「それだよ、それ!鰻だよ。この謎の鍵は!
我が分身よ!今すぐスーパーで鰻丼を買って来るのだ!
そこにすべての謎の鍵が隠されているのだ!」
「え?分身って、ぼくの事?」
環琉ちゃんは静かに頷いだ。
環琉ちゃんの分身なら別に構わないけど、環琉ちゃんにとってぼくの位置関係って何なんだろう?
ぼくは考えながら、スーパーに走った。
半額シールの着いた鰻丼が、ちょうど三つ残っていた。
なんとなく鉄郎爺さんの大切な孫娘の食生活を気にして、ついでに半額のポテトサラダを買った。
環琉ちゃんは、食生活適当そうだし。
つづく
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