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1章
第5話 非難轟轟
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公園の横に高級そうな物干し竿が落ちてた?
高級そうなって、なんだろう?
ぼくはクレープを紙に包むと、もなかちゃんと環琉ちゃんに渡した。
陽に当たる世界に住むもなかちゃんは、一口食べると
「美味しい!」
と絶賛の声を上げた。
そりゃそうだろう。
だが、日陰の世界に住む環琉ちゃんは一口食べたが
「・・・・」
無言だった。
そりゃそうだろう。
「ねえねえ、職人系男子はどう思う?」
ともなかちゃんは聞いてきた。
職人系男子・・か、そうだ、ぼくと環琉ちゃんは、同じ【環琉】と書いて【めぐる】と読む。
同じ名前だともなかちゃんに言っていいのか?
チラッと環琉ちゃんを見ると、それを目で否定していた。
そして、もなかちゃんの耳元で
『永井くん』
と囁いたぽい。苗字なら良いらしい。
「あの永井くん?」
もなかちゃんは言ったが、どの永井くんだろう。
ぼくは記憶を探った。
いやそんなに探らなくても、【もなか】って名前でピンと来た。
ぼくが小6の頃の半年ぐらい通ってた算盤教室だ。
もなかちゃんはいつも隣の席に座っていた。
ぼくより年下なのに、ぼくより背が高かったのを覚えている。
「あれ永井くんの名前って・・・」
バレた。
もなかちゃんは、ぼくと環琉ちゃんを交互に見た。
「偶然?」
「偶然です!」
ちょっと強めに言ってしまったぼくは環琉ちゃんを見た。
まあ無表情だった。逆に恐い。
「抱きしめあったよね」
「あれは、ぼくが検定試験に合格したから、一緒に喜んでくれて・・ねえ」
「誰かと抱き合ったのは、あれが初めてだったのに・・・」
暗黒の小学生活の中で、もなかちゃんといる時が、唯一の安らぎのひと時だった。
算盤教室と言う限られた空間に過ぎなかったが。
それはそれ、今は、環琉ちゃんの無表情がさらに無表情になって行くのが怖い。
そんな環琉ちゃんを察したもなかちゃんは、環琉ちゃんの頭を撫でた。
環琉ちゃんの表情が緩んでいくのが解った。
もなかちゃんに触れられると誰だも表情が緩んでいく。
もなかちゃんは、環琉ちゃんを撫でながら
「わたしね【環琉】と聞いて、永井くんの事を思い出したよ。
永井くんと環琉ちゃんは、何となく雰囲気も似てるし、だから環琉ちゃんと仲良くなりたいって思ったの。そしたら、こうして永井環琉くんに辿り着いた。なんか人生って楽しいね」
人生って楽しい。もなかちゃんはいつも楽しそで、ぼくも楽しい気分になる。
「それで永井くんは、どう思う?」
と【永井くん】形式でぼくを呼んだ。
その距離感で行こう♪って事か?
あの頃は、『めぐるくん』だったけど。
環琉ちゃんへの配慮かな?
「道路に高級そうな物干し竿が落ちていた・・・マンションとかから落ちたとか?」
「残念、近くにそんなマンションはなかったの」
「物干し竿屋さんのトラックから落ちたとか?」
「道路と歩道の間には街路樹が植えてあって、それを越えるのはかなり難しいね」
「う~ん」
「そうだ!永井くんのバイトが終わったら、一緒に見にいこうよ、一緒に謎を解こうよ!」
「終わるの深夜だよ」
「全然問題ない。だってもうわたしたち女子大生だし、それに永井くんが一緒なら大丈夫でしょ」
ぼくは環琉ちゃんを見た。
ほぼ無表情だ。その表情からは何も読み取れない。
「大丈夫だよね、めぐる」
もなかちゃんに【めぐる】と呼ばれると、ぼくが呼ばれている気がしてドキドキした。そして、今日知り合ったばかりの【めぐる】を、呼び捨て出来るもなかちゃんのコミュ能力の高さに驚いた。
いいわ~大人になったもなかちゃん。
そんな目で見ていたのかも知れない。
環琉ちゃんの鋭い視線が飛んできた。
ぼくはその視線を避けるように時計を見た。
あっもうすぐ19時になる。
この鉄板焼きの鉄郎は、19時になると、本業の鉄板焼き屋に変身する。
それも中々の高級店なのだ。
高校生のお小遣いでは、到底手に届かい値段だ。
だから、ぼくは『蛍の光』をかけて
「演劇部の皆さん、夕方の部は終わりの時間を迎えました。お忘れ物のない様お帰り下さい」
「「「えええええええええ」」」
と反響が帰ってきたが、仕方ない。
そもそも座敷席を占拠して、たこ焼き1パックなんてありえないだろう。
環琉ちゃんはもなかちゃんの耳元で何かを囁くと、もなかちゃんが、
「ここの2階に?」
と、階段の方へ向かった。
「さあさあガキどももさっさと帰る」
「あっ今、客に向かってガキどもって言った!」
「ヒドーーーーイ、絶対ネットで低評価押してやる!」
「アンチになってやる!」
「馬事雑言してやる!」
「お前は金によって人を区別するのか?」
と非難轟轟だが、もうすぐ19時、上客がくるのだ。
ぼくは、心優しい鉄郎爺さんとは違うのだ!
ぼくは対ガキ用飴を配って、勢いで非難轟轟を沈めた。
そう、ぼくは金によって人を区別する漂流者だ!
つづく
高級そうなって、なんだろう?
ぼくはクレープを紙に包むと、もなかちゃんと環琉ちゃんに渡した。
陽に当たる世界に住むもなかちゃんは、一口食べると
「美味しい!」
と絶賛の声を上げた。
そりゃそうだろう。
だが、日陰の世界に住む環琉ちゃんは一口食べたが
「・・・・」
無言だった。
そりゃそうだろう。
「ねえねえ、職人系男子はどう思う?」
ともなかちゃんは聞いてきた。
職人系男子・・か、そうだ、ぼくと環琉ちゃんは、同じ【環琉】と書いて【めぐる】と読む。
同じ名前だともなかちゃんに言っていいのか?
チラッと環琉ちゃんを見ると、それを目で否定していた。
そして、もなかちゃんの耳元で
『永井くん』
と囁いたぽい。苗字なら良いらしい。
「あの永井くん?」
もなかちゃんは言ったが、どの永井くんだろう。
ぼくは記憶を探った。
いやそんなに探らなくても、【もなか】って名前でピンと来た。
ぼくが小6の頃の半年ぐらい通ってた算盤教室だ。
もなかちゃんはいつも隣の席に座っていた。
ぼくより年下なのに、ぼくより背が高かったのを覚えている。
「あれ永井くんの名前って・・・」
バレた。
もなかちゃんは、ぼくと環琉ちゃんを交互に見た。
「偶然?」
「偶然です!」
ちょっと強めに言ってしまったぼくは環琉ちゃんを見た。
まあ無表情だった。逆に恐い。
「抱きしめあったよね」
「あれは、ぼくが検定試験に合格したから、一緒に喜んでくれて・・ねえ」
「誰かと抱き合ったのは、あれが初めてだったのに・・・」
暗黒の小学生活の中で、もなかちゃんといる時が、唯一の安らぎのひと時だった。
算盤教室と言う限られた空間に過ぎなかったが。
それはそれ、今は、環琉ちゃんの無表情がさらに無表情になって行くのが怖い。
そんな環琉ちゃんを察したもなかちゃんは、環琉ちゃんの頭を撫でた。
環琉ちゃんの表情が緩んでいくのが解った。
もなかちゃんに触れられると誰だも表情が緩んでいく。
もなかちゃんは、環琉ちゃんを撫でながら
「わたしね【環琉】と聞いて、永井くんの事を思い出したよ。
永井くんと環琉ちゃんは、何となく雰囲気も似てるし、だから環琉ちゃんと仲良くなりたいって思ったの。そしたら、こうして永井環琉くんに辿り着いた。なんか人生って楽しいね」
人生って楽しい。もなかちゃんはいつも楽しそで、ぼくも楽しい気分になる。
「それで永井くんは、どう思う?」
と【永井くん】形式でぼくを呼んだ。
その距離感で行こう♪って事か?
あの頃は、『めぐるくん』だったけど。
環琉ちゃんへの配慮かな?
「道路に高級そうな物干し竿が落ちていた・・・マンションとかから落ちたとか?」
「残念、近くにそんなマンションはなかったの」
「物干し竿屋さんのトラックから落ちたとか?」
「道路と歩道の間には街路樹が植えてあって、それを越えるのはかなり難しいね」
「う~ん」
「そうだ!永井くんのバイトが終わったら、一緒に見にいこうよ、一緒に謎を解こうよ!」
「終わるの深夜だよ」
「全然問題ない。だってもうわたしたち女子大生だし、それに永井くんが一緒なら大丈夫でしょ」
ぼくは環琉ちゃんを見た。
ほぼ無表情だ。その表情からは何も読み取れない。
「大丈夫だよね、めぐる」
もなかちゃんに【めぐる】と呼ばれると、ぼくが呼ばれている気がしてドキドキした。そして、今日知り合ったばかりの【めぐる】を、呼び捨て出来るもなかちゃんのコミュ能力の高さに驚いた。
いいわ~大人になったもなかちゃん。
そんな目で見ていたのかも知れない。
環琉ちゃんの鋭い視線が飛んできた。
ぼくはその視線を避けるように時計を見た。
あっもうすぐ19時になる。
この鉄板焼きの鉄郎は、19時になると、本業の鉄板焼き屋に変身する。
それも中々の高級店なのだ。
高校生のお小遣いでは、到底手に届かい値段だ。
だから、ぼくは『蛍の光』をかけて
「演劇部の皆さん、夕方の部は終わりの時間を迎えました。お忘れ物のない様お帰り下さい」
「「「えええええええええ」」」
と反響が帰ってきたが、仕方ない。
そもそも座敷席を占拠して、たこ焼き1パックなんてありえないだろう。
環琉ちゃんはもなかちゃんの耳元で何かを囁くと、もなかちゃんが、
「ここの2階に?」
と、階段の方へ向かった。
「さあさあガキどももさっさと帰る」
「あっ今、客に向かってガキどもって言った!」
「ヒドーーーーイ、絶対ネットで低評価押してやる!」
「アンチになってやる!」
「馬事雑言してやる!」
「お前は金によって人を区別するのか?」
と非難轟轟だが、もうすぐ19時、上客がくるのだ。
ぼくは、心優しい鉄郎爺さんとは違うのだ!
ぼくは対ガキ用飴を配って、勢いで非難轟轟を沈めた。
そう、ぼくは金によって人を区別する漂流者だ!
つづく
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