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11章 ファンファーレが鳴る中
16話 こちら144機動艦隊、入港を希望する!
しおりを挟む機械猫の準惑星に向かっている艦隊とは別に、人類の宇宙船へ向けた先遣隊が確認できた。
「やはりな、せめて機動艦隊の本体だけでも・・・」
機械ネズミは、人類を守ってやれず、追い出してしまった後ろめたさから、少しでも時間稼ぎをと思ったのだが、宇宙機動艦隊が目の前に現れると、ビビってしまった。
あゆみとバイカルが一緒に居てくれれば、気は紛れたはずだ。
機械猫の準惑星を、宇宙機動艦隊が緩やかに包囲し始めた。
「緩やかに・・・」
機械ネズミは呟いた。
緩やかにと言う事は、宇宙機動艦隊の人類への接触が、まだ強行的ではない事を示しているのか、この古代遺跡の準惑星に対する配慮なのかは不明だ。
「しかし、たった一隻の宇宙船に宇宙機動艦隊がお出ましとは」
『こちら144機動艦隊、入港を希望する!』
管制室に兵士らしい声が響いた。
その通信が届いたのは、すでに8回をカウントしている。
未だ、宇宙港のゲートは閉じたままだ。
有機生命体だったら、冷や汗が流れまくるだろう。
とりあえず機械ネズミは、ゲートを閉じたままの言い訳を考えた。
あゆみとバイカルなら、それなりの気の利いた真実めいた嘘を思いつくはずだが、生真面目な機械ネズミに、そんなスキルはなかった。
『こちら144機動艦隊、入港を希望する!』
9回目の通信が入った。次は10回目。
宇宙機動艦隊の艦隊司令官は、人類よりだとしても、艦隊司令として限界だろう。
「もう良いだろう。ネズミなの頑張ったよね、俺」
機械ネズミは呟くと。
「こちら管制室、貴艦の入港を許可する」
『迅速な入港許可に感謝する』
将校を思わせる硬い声がした。
「迅速な・・・」
宇宙港ゲートへ、宇宙巡洋艦がゆっくりと入港した。
機械ネズミはその様子をじっと眺めた。
入港すると宇宙巡洋艦から、将校たちが降りてきた。
入港に合わせて各所で、シュガーコートが安っぽい動きで、作業に当たっていた。
精鋭と思われる将校たちは、その安っぽい動きに「やれやれ」って表情だ。
「成功だ」
さらに司令官タイプ役のシュガーコートが、管制室に入ってきた。
安っぽさ全開だ!
「問題ない」
機械ネズミは、管制司令官の席を、司令官タイプのシュガーコートに譲り、自分はまるでペットの玩具のような椅子に座った。
「完璧だ!」
そして、
「ちゅう、ちゅう」
と鳴いて見た。
「完璧だ!」
さらにシュガーコートによる楽団が、準備を始めていた。
つづく
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