『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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11章 ファンファーレが鳴る中

7話 どん、どん、どん、どん、どん・・・

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シュガーコートは、何も話すことなく、1分が過ぎた。

どこか遠くの場所から遠隔操作されているのだろう。


そんな間だ。


暇なのかバイカルは知佳に背に乗るように託した。

「えっマジ?」

知佳は、白虎のバイカルに跨ると、バイカルは尻尾を振り、歩き出した。

「おお!かっこええぇぇ!」

知佳は感嘆の声を上げた。


知佳を乗せたバイカルが飛び跳ねるその横で、ポンコツそうなシュガーコート型アンドロイドは、話し始めた。


「・・・そうか、それでは話を戻そう。この銀河で一番最初に帝国を築いたのは、タコ系生物とイカ系生物だった」


「話は戻そうって?今、話し始めたばかりじゃん」

「通信が遮断されてたのかも」


広大な宇宙空間では良くあることだ。


シュガーコートは構わず話し始めた。

「この銀河系の相克は、タコ系とイカ系の相克に基づくものだ」


白虎バイカルに跨る知佳が、

「タコが?聞いた事がある。クトゥルフ神話だったような」

「人類のお嬢さんは賢いな、あれはフィクションだが、まあそれに近い」


ポンコツ感いっぱいのアンドロイドに言われると、少し微妙だったが、

「ありがと」

知佳は素直に喜んだ。


「タコとイカの相克、その歴史は遠い過去に封印されて、今知る者は少ない。

だが、この銀河の相克の奥に、その事実が潜んでいると想定すると、闇に潜む真実が見えてくる物だ。覚えて置くと良い。人類よ」


シュガーコートはそう言うと、再び、動きを止めた。

またリセットされたのだろう。そして、1分後、


「なぜ本物の人類と白虎がいるのですか?」

声質が【我々】じゃないほうのシュガーコートの声質に変わっていた。


人類と白虎の視線を受けシュガーコートは、

「ここは博物館か動物園ですか?」

と言葉を続けた。


人類と白虎を前に【博物館】と【動物園】と言うワードは、失礼に当たるかも知れない。と気づいたのか、シュガーコートの表情は困惑し、バグった。

「どん、どん、どん、どん、どん・・・」


「あっバグった」

それがバグだと言う事は、沙羅と知佳にも解った。


「どん、どん、どん、どん、どん・・・」


その止まらない声を聴きながら、沙羅に抱かれたあゆみは大昔に聞いた噂話を思い出した。


>【本物の人類は、アンドロイド社会にとって死神となる】


>優しい香りがする人類。

>この優しい香りの人類が、死神に?

>情報としては信頼度の低い情報だったけど。

>なぜ今思い出したのだろう?


>この人たちが【本物の人類】なら、アンドロイドは【偽物の人類】なのか?


「どん、どん、どん、どん、どん・・・」


>うるさいな。


あゆみは再びシュガーコートの鼻を押して、リセットさせた。



つづく


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