『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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11章 ファンファーレが鳴る中

5話 1つの生き様の終焉

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シュガーコートが走って来るのが見えた。
その明らかに安っぽい姿と動きに、緊張していた沙羅の表情は、安堵に変わった。

>上々だ。

「玩具みたいで可愛い!」
知佳は言った。

>それは褒め言葉なのか?
>ものは良い様か。
>とりあえず、シュガーコートの玩具みたいなナリは、役に立った。

沙羅と知佳の注目を集めたシュガーコートは、愛想の良い表情で言った。
「Ψ↑%!★仝♯♪」

>あっ、こいつまで壊れた?
>ポンコツめ

シュガーコートは言葉が成立してないにも関わらず、喋り続けた。

>どーするんだよ?
>チームあゆみの戦力が25%ダウンだ。

遠巻きに見つめる、機械猫たちが苦笑しているのが解った。
あゆみはバイカルに視線を飛ばした。
バイカルは『任せろ!』と視線を返した。
知佳に撫でられデレデレのバイカルは、顔を近づけている知佳に何かを囁いた。

「あっ玩具の虎ちゃんが喋った!?」

バイカルの表情に、シュガーコートと同じ玩具扱いされた事で、少し落ち込んだ。
でも、知佳の
「喋るなんて凄いで」
の言葉に再びデレデレに逆戻りした。


そんなバイカルと見ていると、あゆみの思考回路に1つの思考が上がってきた。

あゆみはずっと猫になりたかった。
野良ではなく飼い猫に、そしていっぱい甘えたかった。
だからそこ機械猫になった。

一時期、アンドロイドの飼い猫として暮らした事もあったが、違うと感じて、その場所から逃げ出した。

そして今、人類の少女に抱きしめられている。

>これだ、この感覚を5000年待ってたんだ!
>俺たち人類の飼い猫にならないか?

バイカルと視線が遭った。
声は出ないが、意思は通じるはずだと確信した。

『悪くないな』

>5000年に及ぶ、俺たちのハードボイルドな生き様を終えられる?

『俺は終えても良い』
そう言うと、バイカルは人類の少女に甘えた。

>そっか。

『迷ってるのか?』

あゆみの思考回路上に、5000年及ぶハードボイルドな記憶が、走馬燈のようによみがえった。

あゆみは、人類滅亡の年にバイカルに出会った。
動物園出身の箱入り白虎は、人類滅亡と自身の機械化に戸惑って、白虎なのにオロオロしていた。そんなバイカルに、ハードボイルドな生き様を教え込んだ。

『お前が嫌なら、俺は今まで通りに生きていくが、どうする?』

>どうするって!?
>こんないい匂いがする人類と離れられる訳ないだろ?

『同意。じゃあ、そう言う事で』

>じゃあ、そう言う事で

こうして機械猫のあゆみとバイカルの、5000年に及ぶハードボイルド人生は終わった。

>にゃあ
あゆみは思考回路の中で、鳴いて見た。
>良い響きだ。



つづく
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