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10章 時の記憶
14話 どぼーん♪
しおりを挟む仰向けに寝ていたあゆみとバイカルは、天空を眺めていた。
大気の薄い準惑星ゆえ、天空にはそのままの宇宙空間が広がっていた。
それはそれで美しい景色だった。
「どぼーん♪」
あゆみとバイカルは、そんな音がしたのを認識した。
文字にすると【どぼーん】の後に【♪】が着いていたのは、あゆみとバイカルの共通認識だ。
なぜ【♪】が?
あゆみとバイカルは同時に思考したが、それどころじゃなかった。
背中の地面が消え、背中に冷たい何かが当たった。
「「水だ」」
そう思ったのも、あゆみとバイカルはシンクロしていたはず。
精密機械で出来たアンドロイドにとって、水、特に水圧は危険極まりない。
水中に入ったであろう、あゆみとバイカルに、機械ネズミの乗るペガサス号が潜水艦モードに変形したのが見えた。
潜水艦モードを始めて試せたぜぃ!
と、はしゃぐ機械ネズミの表情は、子どもの笑顔のように輝いていた。
その笑顔から、ワクワク感とドキドキ感が伝わってきたが!
「「お前だけ助かる気かよ!」」
あゆみとバイカルは、思考回路の奥で叫んだ。
機械ネズミに構っている場合じゃない、
「「泳ぎ方?泳ぎ方?」」
あゆみもバイカルも、宇宙線対策はしてあるが、水圧対策はしていない。
水辺に住む訳でもないアンドロイドが、水に溺れる可能性など、まず考えない。
「「大丈夫なのか?」」
思考回路の記憶回路がやられたら、復元は不可能だ。
水の中で溺れるあゆみとバイカルの周りを、イルカが楽しそうに泳いでいた。
ムカつくことに、潜水モードに変形したペガサス号の機械ネズミも楽しそうだ。
あゆみとバイカルの事を思い出したかのように、機械ネズミは潜水モードのペガサス号で、あゆみとバイカルを救助しようとしたが、小さなペガサス号じゃあゆみとバイカルを支えきれない。
落胆するあゆみとバイカルは、
「「大丈夫だ。まだ意識はある!」」
そう強く意識を持とうとしたところで、意識を維持できる訳はない事は解っていたが、そうしない訳にもいかなかった。
モニターの電源が「プチ」ときれるように意識がきれ、このアンドロイドとして生きた5000年の時間が終わってしまう恐怖が過った。
機械の身だとしても、終わりは切ない。
イルカが「自分に捕まるように」と、言っているような気がした。
あゆみは、イルカの背に抱き着くと、イルカは猛スピードで泳ぎ始めた。
あゆみが振り返ると、バイカルもイルカに抱き着いているのが見えた。
「「2人とも助かるよな」」
あゆみとバイカルの言葉は、きっとシンクロしていたはず。
異なる種族とのファーストコンタクトは危険が伴う。
相手にとって何が危険なのかも解らないからだ。
イルカの表情から、歓迎しているのは解るのだが。
きっと【どぼーん】の後に【♪】が、着いてしまったのは、イルカのテンションの高さが影響しているのだろうと、あゆみとバイカルは推測した。
あゆみとバイカルの視線の向こうに、陸地らしきものが見えてきた。
「「俺ら助かったか?」」
と、あゆみとバイカルの思考はシンクロした。
つづく
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