『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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10章 時の記憶

11話 好転の惑星

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シュガーコートが宇宙船を降りると、ロボットが待ち受けていた。

材質は青銅ぽい。どこか神秘的な雰囲気を漂わせていた。


雰囲気も、この太陽系のアンドロイドより高度な雰囲気が漂っている。

文明のレベルが高い星のロボットなのだろう。


「ようこそ、好転の惑星へ」

青銅のロボットは上品な音声で言った。


青銅のロボットを良く見ると、ロボットらしくない。

もしかすると青銅の生命体かも知れない。


ロボットじゃないのに、ロボット扱いする所だった。

種族によっては、かなりの失礼にあたる事もあるらしい。


「好転の惑星?」

「はい、好転の惑星です」

「なぜそのような名前なのですか?」

「この惑星を作ったのは、大昔の魔法使いです」

「魔法使い?」

「当時、魔法使いと呼ばれていた訳ではありません。

今となっては、メカニズムが理解不能なテクノロジーと言った方が、正しいでしょう。当時はそれを科学と言っていたのかも知れません。この銀河では、そのような事はありふれた事象で、理解不能なテクノロジーを【魔法】と表現したりします」

「なるほどです」

「その魔法使いが【好転の魔法】を、この惑星に掛けたと言われています。

そして、この惑星が味方に付いた場合の勝率は、51%に達します。

その勝率は1万年以上変わっていません」


>ん?勝率51%って微妙のような。勝てるかな?ってレベルじゃないのか?

シュガーコートは思考した。


青銅の仮面から表情は伺い知ることは出来なかったが、雰囲気は相当な自信だ。


>なぜ勝率51%で、そんな自身満々なのだろう?

>1万年単位の時間を生きていると、1つの戦いなど、些細な事なのかも知れない。



「入港許可、ありがとうございます」

シュガーコートは言った。


「どうぞ、ご案内します」



逆に綺麗に磨かれた壁に映るシュガーコートは、まるで人間だった。

それはシュガーコートに、自分が人類側の存在だと意識させた。


廊下の窓の向こう側も、歯車が回っていた。

シュガーコートは、その静寂な廊下を歩きながら、あゆみ&バイカル&アルバム。

そして生きた猫の事を思考した。


「少なくとも、猫ちゃんの酸素があるうちに帰らなくては」


廊下を進むと、ガラスの窓の向こう側が、歯車から水に代わり、水族館のように魚が泳いでいた。


シュガーコートは、魚を見て生きてる猫たちの事を思った。

「これなら餌に困りませんね」

イルカの群れと目が逢った。

シュガーコートは愛想よく会釈をしてみた。

するとイルカたちもそれに反応するかのように、会釈を返してくれた。


こういう時は【JKコード】では【可愛い~】と言うらしい事を、思い出した。

今となっては【JKコード】とは何なのかは不明だが、楽しい事らしい。


そして、シュガーコートは未だ【JKコード】の【可愛い~】を言った事がなかった。安物の簡易アンドロイドのシュガーコートとは、そんな存在だったし、その存在から逸脱することは、製品として問題があるように思えた。


でも、今、製品として意識する必要などないはずだ。


チャンスだ!


シュガーコートは覚悟を決め

「可愛い~」

と。かなり小声だがちゃんと言えた。

思考かろの奥で気分がはずんだ。


イルカも心なしか嬉しそうにしてくれた。



つづく
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