『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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10章 時の記憶

9話 決意のシュガーコート

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9話 決意のシュガーコート

「皆さま大変です!」

無線から宇宙船にいるシュガーコートの声が聞こえた。


「どうした?」

あゆみが誰よりも早く応答に応じた。

あゆみにとって誰よりも早く無線に応じる事が、カッコええ猫なのだろう。


「時計のからくりが動き出しました!」

「時計のからくり?」

あゆみはアルバムさんを見た

「多分、本物の猫の鳴き声に反応して、からくりが動き出したんじゃ」

「語尾の【じゃ】って、今更キャラ造りか?ネズミの賢者ぽいけども」


【賢者ぽい】その言葉に、アルバムさんの耳がピクリと動き、少しにやけてから上空を見上げた。あゆみとバイカルはその視線の行方を追った。


『宇宙船いないな』

「生真面目なシュガーコートだから、燃費を気にして、惑星の周回軌道を回ってたんじゃない?」

『今頃は時計の表側か』

「だろうな」



「皆さま!大変な事が起きてしまいました。ついに門が開かれたようです!

わたくしシュガーコートは、これから突入してみたいと思います!」


「えっえっえっちょっと待って待って!シュガーコート!シュガーコート!落ち着いて!落ち着いて!」


あゆみの問いかけに、シュガーコートは、

「わたくしの生き様を見ていてください!」

「いやいやいや、俺らその宇宙船がやられると、もうここから動けないんだけど!」

「わたくしも勇敢なシュガーコートの一員なのです!」

と言った後に無線は切れてしまった。


「どうしよう!」

『どうしようっと言ってもな』


「バイカル!なんでお前はそんなに落ち着いてんだよ!」

『猫と寅の違いかな』

「寅は慌てないのか?」

『俺の居た動物園に、危険なんてものはなかったから、常に落ち着いていた』

「動物園の寅のパターンかよ!」

『まあな、しかし懐かしいな動物園』

「俺は遠足で言った記憶があるわ。良い動物園だった」

『もう遠い昔の話だな』

「ああ」

『・・・』

「・・・」


「っておい!猫ども、現状を忘れんなよ!お前ら動物園の事思い出してただろ!」

ペガサス号から見下ろしていたアルバムさんは、猫のアホさ加減に呆れた。


ハッ!となったあゆみは、

「そうだ!宇宙船がなかったら俺ら帰れないんだぞ!

この生猫の酸素だって無限にある訳じゃないんだぞ!

俺らは電源切れ起こしたら宇宙の藻屑だぞ!

あのシューガーコートめ!ポンコツにも程がある!」


『まあまあ怒るなって。きっと何とかなるって』


「あのポンコツ、いつかこんな事をやりかねないとは思っていたんだ。俺にはまだ改造したい箇所が100箇所以上あったのに。まだまだイケてる猫になるはずだったのに!にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


機械猫の嘆きの鳴き声が響く中、アルバムさんは、ペガサス号を着陸させ、ペガサス号を節電モードにした。そして、

「さてどうするのじゃ」

と賢者キャラを維持したまま問うた。


『とりあえず生猫の酸素の余裕はかなりある。予備を持ってきていて良かった』

バイカルはかなり荷物になるのに、予備の酸素を持ってきていた。

「こういうところは頼もしい」あゆみは思った。


「少なくとも惑星の表側に行くには、エネルギーが足りな過ぎのじゃ」

機械ネズミは機械猫に絶望を突き付けた。

『動くことも出来ないのか』



つづく


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