『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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10章 時の記憶

8話 別に居た堪れなくなった訳じゃないし

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鏡のように磨かれた時計の星の大地は美しく、落ち込んだ機械たちに優しかった。

どんな惑星も優しさを内包している。それが作られた惑星だとしても。


落ちこんだ機械猫と機械ネズミは、じっと地面を見つめていた。

それを、地面に置かれたキャリーバックの中から、猫たちが眺めていた。


鏡のような時計の星の地面には、その地面を見つめるあゆみとバイカルとアルバムさんと猫が入ったキャリーバックが映っていた。



あゆみは思った。

「そうか、俺は欲していたのは、器のでかい兄貴とちょっと生意気な弟だったんだ。そうまるでバイカルとアルバムさんのような・・・なんか心が落ち着く。だからって、それを今、体験したからと言って、何になるんだ?俺の人生はとっくの昔に終わってんだぞ」



バイカルは思った。

『猫、本物の猫は柔らかく温かかった。そして今にも壊れそうだった。あれが生きているって事か、俺も昔は生きていた』



アルバムさんは思った。

「うん、えーと・・・・」

一応、その気になって堕ちて見たものの、アルバムさんは本質的に醒めた機械ネズミだ。そんなのだからいつも一匹だった。


「別に居た堪れなくなった訳じゃないし」

機械ネズミは呟くと、仕方なくペガサス号を上昇させた。


アルバムさんは上空から、しんみりしている機械猫を確認した。

すると、あゆみとバイカルと白猫黒猫の耳が、同時にぴんとなるのが見えた。


「ん?!」


その直後、鏡のような大地の奥で、何かの感触を感じた。


耳をぴんとさせたあゆみがは

「あれ?今、何か音がしなかったか?」

『ああ、大地の下からか?』

あゆみとバイカルは、地面に耳を付けた。


「・・・・」

『・・・・』


機械ネズミも、ペガサス号を着陸させ、地面に耳を付けた。

「これは・・・」

機械ネズミの言葉に、あゆみとバイカルは、好奇心の高い猫のように、機械ネズミを見た。


だから機械ネズミは再び、

「これは・・・」

『・・・』

「・・・」


あゆみとバイカルの真面目な視線に、機械ネズミはにやけた。

そしてさらに、

「これは・・・」


「早く言えよ!」


「いやいや(笑)お前らも真面目な顔するんだなと思ってな」

「真面目な顔ぐらい、するわ!」

『え?するか?最近したか?』

「えっ?う~ん、まあ、それは・・してないかな・・それより、何だよこの音は?」


「これは・・・」

「もう良いから!」

「俺の記憶が間違っていれば、これは古い時計の音だな、多分、時計の星の内部で何かが動き出したんだ」


【俺の記憶が間違っていれば!?】

機械ネズミが冗談を言ってるのか?

ただのエラーなのか?


あゆみにもバイカルにも解らなかったので、2匹はスルーした。

そしてあゆみとバイカルは視線を交わした。


『何かが起こるのか?』

「多分」


なのに機械ネズミは、再度、言って見た。


「俺の記憶が間違っていれば・・・」

『ネズミくん、ファイト』

「そう言うのではなく・・・」




つづく
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