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10章 時の記憶

6話 やっぱ本物の猫は可愛い

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だから、急遽、苔玉星に戻った。


生きている猫たちは、苔玉星でゆっくり暮らしていた。


『苔に覆われたここの空気は、美味しいんだろうな』

「呼吸か、懐かしいな」

あゆみは深呼吸のマネをしてみた。


猫たちにジャレられながら、石で出来た生命体の獅子の様な石像たちは、何か作業をしていた。


『なんか幸せな風景』

「石像の頬が緩んでやがる」


「機械の皆さん、どうしたんですか?」

作業をしていた石像が、走り寄ってきた。


「機械の皆さん言い方、なんか違うくない」

あゆみはバイカルの耳元で愚痴った。

『まあ、間違っちゃいない』


ペガサス号で飛び回っている機械ネズミが、その石像ちゃんに向かって

「阿さん、じつは黒猫さんと白猫さんに用事がありまして」

「あのわたしは吽の方でして」

「ああ、それは失敬」


あゆみはすかさず、

「機械ネズミさんよ。名前を間違えるってひどくない?」

「仕方ないだろ。似てるんだから!」

「吽さん、すいません。うちの機械ネズミの失敬を許してやってください」


「いえいえ、似ているのは事実ですから」


「阿さんと吽さんを間違えるなんて!

信じられないよ!ホント、しっかりしてくださいよ。賢きネズミさん!」


あゆみは機械ネズミに言ったが、あゆみの耳元でバイカルが、


『お前、あの石像の名前、知ってたん?』

「知らん」

『(笑)お前なあ、俺も知らんかったけど』

「細かい事は賢きネズミさんに任せよう」

『だな』


機械ネズミのアルバムさんは【賢きネズミさん】と呼ばれた事に、満更でもない顔をしていた。


「ちょろいネズミだ」

『ディスた後に褒める。飴と鞭戦法か』

「ああやって猫は他者を良い気にさせて、利益を得る!」

『まさに猫!ネコ科最高の理を現すだな!』



あゆみとバイカルに気づいた、黒猫と白猫が駆け寄って来た。

「ねこちゃーん」

『やっぱ本物の猫は可愛いな~』

「それ俺たちは偽物って言ってるようなもんだぞ」

『・・・』

「・・・」

『その思考止めよう。ネガになる』

「同意」


あゆみとバイカルが、猫の宇宙用キャリーバックに入れようとすると、

石像の阿さんと吽さん、2匹合わせて阿吽が、駆け寄って来た。


「猫ちゃん専用に、宇宙船内に酸素室を作られたらどうでしょう?」

「我々なら、数時間で完成させれます」


楽しそうな石像のチーム阿吽は、本物の猫に魅せられたのだろう。


機械の猫のあゆみとバイカルには見せなかった緩い表情だ。

「なんか敗北感」

『だな』


あゆみは、「どうする?」と機械ネズミに視線を送った。


機械ネズミを見つけた本物の猫たちが、ペガサス号に乗るアルバムさんに興味を示し、狩りの体勢に入って、大騒ぎを始めた。


なんじゃこいつら!


そんな表情をした機械ネズミは、ペガサス号を上昇させた。そして、

「数時間なら構いませんよ。時計の惑星も逃げたりはしないだろうし」



「やはりネズミは餌なのが正解だった」

『激しく同意』




つづく
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