『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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9章 不確実な記憶の世界で

19話 ずっと見ていた。

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アンドロイドたちは、海に出ることを放棄した。

機械にとって海の潮は、故障を頻発させるだけの存在だったから。


青く広い海から、いつしか未知の存在となって行った。

海から人類文明の香りが消えるのに、それほど時間は掛からなかった。


何時からなのかは記録にはない。


ぼくらはずっと人類の文明を見ていた。きっと何万年も前から。


もしも惑星に意思があるなら、その意思がぼくらの進化を、促したのかも知れない。


「惑星が人類に呆れ、そして同情した結果だね」


イルカは深い海の中で、呟いた。



            ☆彡





鉄惑星とは、そのほとんどが鉄で構成された惑星だ。


太陽系外の惑星が、太陽系の重力に引寄せらえれて、太陽系内に進入することは、稀にある。


鉄惑星の存在自体は、かなり珍しいタイプの惑星ではあるのだが、人類が太陽系に流れ着いた時期に、太陽系に進入していた結果、一部の天文家のみで話題になった。


アンドロイド政府もその動きを追跡していたが、動きも遅く害はないと判断された。

それどころではなかったのもあるが。



人型の鉃の生き物が、モニターを眺めていた。


2人の鉃人は鉃の匂いがする部屋で、囁き合った。

「炭素系の生き物である人間よりも、機械で出来たアンドロイドの方が、鉃人に近いような気もする」

男気がありそうな鉃人が言うと、女気がありそうな鉃人が、答えた。

「でも、アンドロイドと違って、わたしたちは生きている」

「難しい問題だね」



鉃人・女気は、隕鉄で出来た刀を見つめた。

「称賛に値する」

人類との同盟の証だ。


その美しさゆえに、鉃人と人類が同盟を結んだと言っても過言ではない。

少なくとも2人の鉃人は、そこに惚れこんだのだ。


モニターには緑色の惑星が見えてきた。

「苔だね」

「苔だね」



つづく



☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆




【男気のある鉃人】Feな生き物 

【女気のある鉃人】Feな生き物



機械のネズミ

【アルバム】機械猫より賢そうだが、本体の記憶容量は少な目。

【ペガサス号】アルバムさんの大切な乗り物。


機械の猫

【あゆみ】元人間のカラカルの機械猫。自称エースパイロット。

【バイカル】人見知りの激しい虎型アンドロイド。


【黒猫と白猫】人類と一緒にやってきた猫


【獅子の様な石像】石で出来た生命体?

【苔玉ちゃん】苔の知的生命体。人類より高度な文明に属してそう。



人類時代の記憶を持つアンドロイド

【ソフィー】後の世の英雄のアンドロイド

【デューカ】ソフィーの相方


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