『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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9章 不確実な記憶の世界で

17話 生き急いだ人類

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苔玉ちゃんは、苔の森の地中に埋もれ、姿を確認出来なくなってしまった。

「大丈夫なのか?」

あゆみの問いに体の獅子の様な石像はハモりつつ説明した。
「苔玉さまは、この惑星と一体の存在。苔玉さまはああやって、生まれ変わり続けるのです」

あゆみとバイカルは顔を見合わせた。

「この惑星自体が、アンドロイドで言うことろのメモリーサーバーっと言った所で、苔玉ちゃんの記憶の存続が成されている?」
『そんなところだな』

「で、苔玉ちゃんはいつ目覚める・・・生まれ変わるんだ?」
「・・・」
「なぜ沈黙?石像ちゃんたちよ」

石像は他人事のように、そっぽを向いた。
だから、あゆみとバイカルも他人事のように、そっぽを向いた。
その行為にまったく意味はない。

意味のない間が流れた後、石像たちはあゆみの方を見て、返答した。

「明日かな」
「明日か、それは良かった。まだ聞きたいことがいっぱいあったし」
「苔玉さまにとっての明日とは、あなたの考えている明日ではなくて・・・」
「嫌な予感がするんだが」
「この星では苔玉さまが、朝だと思った時が、明日の始まりです。
だから早ければ数時間後、遅ければ2000年後・・・」
「2000年後!どんな生活してんだよ!さすがに寝過ぎだろう!」

「そもそも人類が生き急ぎすぎなんです。だから・・・」
石像ちゃんたちは、『だから』後の言葉を続けなかった。

人類だったあゆみに対する配慮なのだろうか?

あゆみは、石像ちゃんたちをじっと見つめて、思った。

石像ちゃんたちは、2匹しかいない。
2匹だけで、石像生命体として、種を維持しているのか?

殆どの生命体は、最低限、♂と♀さえ要ればいいのだ。
2体だけで、維持できる気持ちと能力があればの話だが。


『苔玉ちゃんの事はもう諦めよう』
「そうだな、で♪石像ちゃんたちよ、苔玉ちゃんはなんで俺たちを招いたんだ?」

「苔玉さまは、人類との同盟に基づき、あなた方にこの惑星の使用を許可しました。なので、今後はご自由にご利用下さい」

「それはそれは」
『アンドロイド評議会を越える技術力があると思える苔玉星を使っても良いとは、中々の戦力だぜ!』
「だな、そうとなれば、我が秘密結社のサインと連絡をせねば」

あゆみは目を閉じて、記憶の管理人が接触して来るのを待った・・・
あゆみは目を閉じて、記憶の管理人が接触して来るのを待った・・・
あゆみは目を閉じて、記憶の管理人が接触して来るのを待った・・・

「こない!あいつらも時間の感覚がおかしかったんだ!」
『まあ、年千年単位の戦いだからな、気長に待とうぜ』
「俺、気が長い方だけど、なんかシャシャシャって生きたくなったぜ!」



つづく




☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆



【あゆみ】元人間のカラカルの機械猫。自称エースパイロット。
【バイカル】人見知りの激しい虎型アンドロイド。

【黒猫と白猫】人類と一緒にやってきた猫
【獅子の様な石像】石で出来た生命体?

【苔玉ちゃん】苔の知的生命体。人類より高度な文明に属してそう。

【ソフィー】後の世の英雄のアンドロイド
【デューカ】ソフィーの相方

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