『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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9章 不確実な記憶の世界で

14話 小さな要塞

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はしゃぐバイカルと二匹の石像の後を追って、苔玉ちゃんとあゆみも庭園に出た。


「ここは元鉱山らしさは、あんまりないな」

「元鉱山なのは、きっとあの準惑星だよ」


解説書間違いとるやないかい!

シュガーコートのポンコツさと言い、ホントに惑星評議会が恐怖する秘密結社か?

いい加減な!



苔玉ちゃんは、窓の外を指差した。

大きな窓の外には、丸い準惑星が浮かんでいた。


「あの準惑星の方は2000年前まで鉱山だったんだけど、放棄されたから、捕獲したんだ」


「準惑星を捕獲?」

「重力はこちらの方があるからね、簡単だったよ」


はしゃぎ疲れたバイカルが、定位置のあゆみの左隣に着いた。

『苔玉ちゃん、中々規模の大きな事を言い始めたけど』

「ところどころ高度な技術が垣間見れるな」


苔玉ちゃんは、空に浮かぶ準惑星を見上げ、


「敵対的な勢力が近づいて来たら、あの準惑星を艦隊にぶつけるんだ。大抵の艦隊はびっくりして逃げ出すと思うよ。あの準惑星の表面は、ダイヤモンドと同程度の硬度でとても硬いんだ」


「ダイヤモンドと同程度の硬度の準惑星を、艦隊にぶつける!」

『癒し系の苔玉ちゃんの口からそんな言葉が、俺ちょっと哀しいよ』


「あの準惑星の操作方法は、後で教えてあげるね。ここは君たち機械猫の宇宙要塞でもあるんだから」

「機械猫の宇宙要塞?」

「そうだよ。その為に来たんでしょう?」


『そうなのか?』

「秘密結社からは何も聞いてないけど、そうなんじゃない」


何苔玉ちゃんが、めっちゃ眠そうな顔をし始めた。

表情はとても幼く、子どもの様だ。


苔玉ちゃんは、庭園の苔の草原にそっと身体を沈めた。

まるで苔の草原と同化しているように。

そして静かに眠りに落ちて行った。


『眠ったか?』

「眠ったね」

『俺たちがいるのに自由だな』

「今まで会った事がなかったが、苔って、そんなもんなのかも知れない」

『なるほど』

「しかし後で教えてあげるって、どのくらい後だと思う?」

『あの時間の感覚だと、1000年後の可能性もあるよな』

「あぁ」


石の石像たちは、庭園を走り回る事1日。

やっとあゆみとバイカルの事に気づいた石像たちが、近づいてきた。


「皆の衆、付いてまいれ」

と、石像に言われて、あゆみとバイカルは、苔と同化している苔玉ちゃんを置いて、地下神殿に向かった。


『苔玉ちゃん、気持ちよさそうだな』

「そうだね」



つづく





☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆






【あゆみ】元人間のカラカルの機械猫。自称エースパイロット。

【バイカル】人見知りの激しい虎型アンドロイド。


【黒猫と白猫】人類と一緒にやってきた猫

【獅子の様な石像】石で出来た生命体?


【苔玉さま】苔の知的生命体


【ソフィー】後の世の英雄のアンドロイド

【デューカ】ソフィーの相方


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