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9章 不確実な記憶の世界で
12話 苔玉ちゃんにじっと見つめられた。
しおりを挟む苔玉ちゃんは、ゆっくりとあゆみに歩み寄って来た。
どちらかと言うとせっかちな機械猫にとって、その速度はひと眠り出来そうな程ゆっくりとしていた。時間の感覚が違うのだろう。
歩み寄る途中、苔玉ちゃんは急にしゃがんで、地面の石を見つめた。
「わぁ~綺麗」
苔玉ちゃんは感動した。
『どこにでもありそうな石じぇね?』
感動する心を忘れた元白虎は言った。
「確かにどこにでもありそうな石だ」
もちろん感動する心を忘れた元人間の機械猫も言った。
苔玉ちゃんは拾った石を丁寧に元に戻して、やっとあゆみの前にやってきた。
あゆみは、苔玉ちゃんにじっと見つめられた。
吸い込まれるような緑色の宝石のような瞳をしていた。
人工物ではないその天然の美しさに、あゆみは感激した。
どのくらい見つめれていただろう・・・・
はっ!しまった寝落ちしてしまった!
まさかの見つめられながら、寝落ちとは!
幾ら時間の感覚が違うと言え!
起きたあゆみに気づくと、苔玉ちゃんは話し始めた。
「ぼくはね、盆栽の苔玉を始めて見た時、こんなに苔を愛している生命体がいることに、感激したんだ。だからね、ぼくは苔を代表する立場として、人類との異生物間同盟を結ぶことにしたんだ」
「異生物間同盟?」
疑問符を打つあゆみに、博識なバイカルが説明した。
『所謂、惑星間同盟の一種だな、ある程度の知的生命体同士で結ぶ同盟だ。
確か内容は様々で、ただの仲良し同盟から安全保障同盟まである』
「そう、ぼくと人類は、5000年前に安全保障同盟を結んだんだ」
「苔と安全保障同盟?」
あゆみにはイマイチ理解出来なかったが、苔玉ちゃんが知的生命体である以上、それは成立するか。
「そして、あの惑星で人類は滅亡をし始めた。残念ながらぼくの力では、その滅亡を防ぐ事は出来なかったんだ」
『まあ、それは人類の問題だからな』
つづく
☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆
【あゆみ】元人間のカラカルの機械猫。自称エースパイロット。
【バイカル】人見知りの激しい虎型アンドロイド。
【黒猫と白猫】人類と一緒にやってきた猫
【獅子の様な石像】石で出来た生命体?
【苔玉さま】苔の知的生命体
【ソフィー】後の世の英雄のアンドロイド
【デューカ】ソフィーの相方
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