『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

文字の大きさ
上 下
171 / 243
9章 不確実な記憶の世界で

10話 ハモる石像たち

しおりを挟む
大理石の廊下を進むと、行き止りに、2匹の羽根のある獅子の石像があった。
見ようによっては、犬にも見えるが。
それはそれは、幸せそうに安らかに眠っている石像だ。

「にゃにゃ」
『同時に2匹石像の口に手を入れて、だとさ』
黒猫の言葉を、バイカルが翻訳して説明した。

「ふふ~ん、入れたらこの入口が開くんだろう。なんかありがちじゃない?」
『まあな、とりあえず同時に手を入れて見ようぜ』

あゆみとバイカルは、ありがちとは言え、
「せーの」
と同時に手を入れて見た。

「ゴホ!」
獅子だか犬だかの石像が、2匹同時に動きだし叫んだ。
「何するんだ!お前らいきなり口に手を入れて起こすってアホなのか!
お前らはなにか、誰かを起こすとき口に手を入れる星人か!」

叫びながらも、なぜか2匹の石像は、めっちゃハモっていた。


『石像が動いた!』
石で出来たロボットの類か?
もしくはどこかの知的生命体が作った人工の生命体?
もしくは天然の石で出来た生命体?

その石像が何者なのかは解らないが、言ってることはもっともだった。

「寝起きとしては最悪だぞ!1000年寝てたんだぞ!1000年!
こんな起こし方はないだろう?」
もちろん石像は2匹同時に、ハモりながら言った。

もっともな意見なので、 
「すまない」
あゆみは取りあえず謝った。

バイカルは突然ハモりたくなったのか、あゆみの「すまない」に合わせて、
『悪かった』
と言ってしまった。言葉選びの段階で失敗だ。

相方として(泣)

あゆみがチラッとバイカルと見ると、バイカルはサッと目を逸らした。

ただバイカルのハモりたいと言う意思に気づいたのは、あゆみだけだったので、多分恥をかかずに済んだはずだ。


羽根のある石像は、機械猫2匹と生きてる猫2匹を不思議そうに見て、

「と言う事は・・人型アンドロイドは、滅んだのか?」

2匹の石像がハモリながら言うもんだから、それは高価なスピーカーの様に聴き心地が良い。

「人型も健在だ」
「しぶといな」
羽根のある石像は、同時に笑った。
そして、黒猫と白猫を見ると、
「で、猫ちゃんたちは、苔玉《こけだま》さまに会いに来たと言う事か?」
「にゃにゃ」
猫たちは鳴いた。

「苔玉さま?なんじゃそれ!」

「苔玉さま、それは人類より遥かに高度な知的生命体だ!」
石像たちは自慢げにハモった。

人類より遥かに高度な知的生命体。
宇宙にはそんな存在が多々存在している。
あの竜族もその一つだし、銀河連邦には理解すら不可能な存在も記録されている。

「でも・・高度な知的生命体の名前が【苔玉さま】って(笑)」
『あゆみの言いたいことは解る・・が、それ以上言うな!』



つづく




☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆






機械の猫たち
【あゆみ】元人間のカラカルの機械猫。自称エースパイロット。
【バイカル】人見知りの激しい虎型アンドロイド。

【黒猫と白猫】人類と一緒にやってきた猫
【獅子の様な石像】石で出来た生命体?


【ソフィー】後の世の英雄のアンドロイド
【デューカ】ソフィーの相方
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

ライトニング・エクリプス

suepi2007
SF
chatGPTとともに細かい設定を考えました。大まかな設定や主人公の能力設定は自身のイメージで作っています。 「未来の地球で、光と闇の力が交錯する中、18歳の青年が唯一無二の能力を駆使して運命に立ち向かう。彼の名は氷霧碧(ひぎりあおい)。敵対勢力『ルナティック・クラン』との壮絶な戦いが、今始まる…」

処理中です...