上 下
168 / 205
9章 不確実な記憶の世界で

7話 記憶の管理人

しおりを挟む
『地震か?』

バイカルが呟いた。

「震度5ってとこか?」

『火山性の地震とか言ってたな、どっかの火山が噴火してんじゃない』


保守を極めたアンドロイド社会は、ほとんどの自然災害を克服している。

建物だって震度10だって耐えるくらいだ。


でもここは社会に守られている都市と違い、捨てられた海岸線沿いだ。


4機のアンドロイドは地震が収まるのを、じっとまった。


『そう言えば津波って知ってるか?』

「ツナミ?」

『地震の時、大波が来るって奴だ』

「ああ、なんかそんなのあったな」

『大丈夫かここ』


4機のアンドロイドは海を見つめた。



☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡



水着にパレオを巻いた少女が見えた。

南の島のリゾートにいるような人間の少女だ。

少女はトロピカルジュースを飲みながら、あゆみに微笑んだ。


「あゆみくんの記憶、預かっとくね」


「記憶の管理人め!」

あゆみは思考回路内で叫んだ。


「ねえ、あゆみくん、怒らないで、これも美しい未来の為だよ」


記憶の管理人の少女は、あゆみの口にトロピカルジュースのストローを付けた。

あゆみは、記憶の管理人の少女の存在に、イラつきながらも、トロピカルジュースを飲んだ。


それはとても甘く、『生』の香りと味がした。

人間として生きていた頃に感じていた『生』の感覚は、とても懐かしく、涙が流れた。


記憶の管理人の少女は、あゆみを抱きかかえ膝の上に乗せ撫でた。


撫でられたからと言って、怒りが収まる訳じゃない・・・・って事もない。



☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡



あゆみは思考回路の夢の中から、目を覚ました。

やはり海岸線からの記憶が無い。


目の前には、黒猫と白猫。

そして相方のバイカルがその猫たちを撫でていた。


何らかの方法で、猫をゲットしたのだろう。


「また記憶の管理人にやられた!」

怒るあゆみに、バイカルは、

『仕方ないよ。秘密結社が秘密を暴かれたら、結社の存在が危ぶまれる』


アンドロイドに黙秘権などない。

記憶データを奪われたら、黙秘など意味はないのだ。

それを防止する為に、機密情報は【記憶の管理人】が、安全な場所に保管する。


安全な場所がどこなのか、もしくはそんな場所があるのかすら解らない。


「まあいい」

あゆみは、そう呟いて、自分を納得させた。


「それにしても、ここはどこだ?」

あゆみの問いに、バイカルは取扱説明書を見せた。


『どうやら準惑星らしい』


「砂糖さんとあのネズミは?」

『砂糖さんは宇宙船に収容されてる、ネズミは知らん』


あの機械ネズミのアルバムさんは、秘密基地に戻ったのだろう。


「まあいい。記憶は取られたけど、黒猫と白猫は確保できた訳だし」



つづく




いつも読んで頂き、ありがとうございます。


毎週、土曜日更新です(σ⁎˃ᴗ˂⁎)σண♡*(ღ*ˇᴗˇ*)。o♡ウットリ♡



機械の猫たち


【あゆみ】元人間のカラカルの機械猫。自称エースパイロット。

【バイカル】人見知りの激しい虎型アンドロイド。



機械のネズミ


【アルバム】機械猫より賢そうだが、本体の記憶容量は少な目。

【ペガサス号】アルバムさんの大切な乗り物。



人型アンドロイド


【砂糖さん】シュガーコート177。あゆみとバイカルが買ったアンドロイド。

【シュガーコート001】もっともお手頃なお値段のアンドロイド。


【ソフィー】後の世の英雄のアンドロイド

【デューカ】ソフィーの相方


【猫】黒猫と白猫
しおりを挟む

処理中です...