『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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9章 不確実な記憶の世界で

6話 向かい風に弱い子たち

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この時代、海に行く奴なんて誰もいない。

ので車を道路わきに止めると草原を、機械猫2匹と砂糖さんは、海岸線に向かって走った。


あゆみとバイカルは、久しぶりに四足歩行で全力疾走した。

疾走する白虎バイカルと違い、あゆみはぎこちなかった。


「あれ?あれ?あれ?えっと・・・2足の方が良いや」

と2足歩行で走ると、バイカルが振り向くと言った。


『お前、猫失格』


「猫に憧れ、機械の猫の身体を手に入れたのに・・・はぁ」

あゆみは立ちつくし嘆いた。

そりゃそうだよな、猫が2足歩行で走るなんて。


あゆみの頭上で、ウィィィィィっと何かが飛ぶ音がした。

機械ネズミのアルバムさんのペガサス号だ。



いち早く海岸線に辿り着くと砂糖さんは叫んだ。

「姉貴ーーーーーカムヒヤ」


聞こえないのだろうか。こちらに気づいた様子はない。

相手もシュガーコート型らしいし、そんな高価な機能はついていないぽい。


砂糖さんは、何か閃いた顔をした。

それは古い喜劇映画の様な表情だった。


そして、

「兄貴ーーーーーカムヒヤ」

と、砂糖さんが叫ぶと、沖にいるシュガーコートは振り向いた。


「おお!」

兄貴が正解だったらしい。


でも、兄貴のシュガーコートは、嬉しそうに手を振りかえしただけで、さらに沖に離れて行った。


『お見送りに来たと思われたのかな』

「らしいな」


あゆみの頭上のペガサス号のアルバムさんは

「揃いも揃って、やれやれだぜ!」

嘆き、そして

「後は俺のペガサス号に任せろ!」


ペガサス号は、沖のシュガーコート兄貴に向かって飛んで行った。


『こういう時に、活躍するのがヒーローって言うんだぜ』

「まあ今回はその座を、機械ネズミ譲るしかないか」


でもペガサス号に海風は強かった。

沖から吹いた強い向かい風は、ペガサス号を陸へと引き戻させた。

あゆみの頭上まで戻ってきた機械ネズミは言った。


「ふう、1つ言い忘れた事が会った。

俺は、人間の時代からずっと向かい風に弱い人生だった」


『それは俺も一緒だ』


「バイカルさんも同意したなら仕方がない。

ここには向かい風に強い奴なんて誰もいないのだから」


「はあ~」

二匹の機械猫とネズミは、息もしてないのに、ため息をついた。



つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます。



毎週、土曜日更新です(σ⁎˃ᴗ˂⁎)σண♡*(ღ*ˇᴗˇ*)。o♡ウットリ♡




機械の猫たち

【あゆみ】元人間のカラカルの機械猫。自称エースパイロット。

【バイカル】人見知りの激しい虎型アンドロイド。



機械のネズミ

【アルバム】機械猫より賢そうだが、本体の記憶容量は少な目。

【ペガサス号】アルバムさんの大切な乗り物。


人型アンドロイド


【砂糖さん】シュガーコート177。あゆみとバイカルが買ったアンドロイド。

【シュガーコート001】もっともお手頃なお値段のアンドロイド。


【ソフィー】後の世の英雄のアンドロイド

【デューカ】ソフィーの相方


【猫】黒猫と白猫
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