『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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7章 それぞれの思惑

10話 再び人類として

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『サマルカンド・鉱物資源企業団公社ビル・最上階会議室』



「我々は再びあの人類を祖として、人類として・・・人としての身体を取り戻す。」

「ん?」

コーリー博士の言葉にソフィーは疑問符を打った。


「あの人類の遺伝子を使い、人の形をした人形を作る。
そこに我々の記憶を移植する。」


「人の形をした人形?それは、人じゃないの?」


「人じゃない。ある種の入れ物だ。
限りなく人間に近い有機的なアンドロイドと言った方がいいだろう。
その入れ物に、我々アンドロイドの意思と記憶を転送して初めて人となる。
神が粘土に魂を入れて人間を作った様なものだ。」


ソフィーは5000年ぶりに「神」と言う言葉を聞いた。
神が人類を創った。そして人類がアンドロイドを造った。


「こんな所で神の名を聞くとは思わなかった・・・。」

「気に入らないのか?」

「その種の発想は、気に入らない。」

コーリーは

「ソフィー、君は人だった頃の事憶えているか?
あの人だった頃の身体の感覚、苦痛もあったが歓喜もあった。
今のアンドロイドの身体を見てみろ。
苦痛はなくなったが、歓喜もなくしてしまった。
あるのは擬似的な悦楽だけだ。
我々は、この忌々しい機械の身体を捨て、人として人の身体を持ち、人に回帰するべきだ。
技術的には既に、完成した技術だ。
あとはあの人類の協力さえあれば、我々は再び人類としてこの星に再生される。」


「なんか気に入らないね!」

ソフィーが強い口調で言った直後、内務省職員のエミーと武装した警備兵が、会議室内へなだれ込んできた。

「ソフィー、そしてデューカ、あなた方を反乱罪の罪で逮捕します。」

「?」

ソフィーは、一瞬、何が起こったのか解らなかったが、想定していたのかデューカは素早く反応した。

「コーリー!てめぇ、もう裏切ったのか!早すぎるだろ!」

と叫ぶと、機体に内蔵していた小さめなマシンガンをあたりかまわず乱射した。

「お前、そんなところにマシンガンを隠し持つとは!卑怯だぞ!」

卑怯者は、他者の卑怯を罵った。

「お前が言うな!」


マシンガンの銃声が鳴り響く中、ソフィーは鉱物資源企業団公社ビル前にいるアローン兵7000機に、鉱物資源企業団公社ビルへの突入と占拠を命じた。


つづく



【ソフィー】特殊機械兵と唯一リンクするアンドロイド

【デューカ】ソフィーと同じ職場で働いていた同僚

【コーリー】天文学博士。ソフィーやデューカを反乱分子に勧誘した。

【エミー】内務省サマルカンド支局の一般職員
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