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6章 人類の反撃

20話 人類の反撃

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『宇宙ステーション・アントン・宇宙港』


宇宙船のすぐ外で、銃撃戦の激しい音の後、ドーンと爆発音が響いた。


「急げ!」

2機のアンドロイドが、窓の外から操縦席の沙羅に向かって叫んだ。
その怒声が沙羅を混乱に落とし入れた。
それは沙羅に、自らの臆病さを自覚させた。

もう!そんな事言ったって・・・

焦る沙羅の隣で知佳が、まるで野次馬の様に驚き、

「あれ爆発かな?!花火みたい、キャハ」

キャハじゃねーよ!
この子にとって他人事なの?

さらに、宇宙ステーションの中で何かが爆発し格納庫が揺れ、さらに沙羅を混乱させた。


錬は無表情のまま、サラの隣の副操縦席に座り、副操縦桿を握った。

「こんなのゲーム機と変わらないよ」

と言うと、宇宙船のいくつかのスイッチを入れた。

「これが反重力制御装置で・・・」

と呟くと、まるで新しいゲーム機を与えられた子の様に目を輝かせた。

錬が、ゲームが得意なのは知ってるけど、

「動かせるの?」

沙羅の問いに

「僕を誰だと思ってるの?
大人の廃人たちは僕の事を【駄目元の錬】と呼んだ!」

と自信に満ちた目で沙羅を見返した。

何、その不安な通り名は・・・



宇宙船の外では、レッドイーグル隊の頭部記憶装置が吹き飛ぶのが見えた。

アントンの警備兵が、動き始めた宇宙船を制止しようと、宇宙船に取付こうとしていた。

その寸前に、宇宙船の反重力エンジンは作動しゆっくりと浮いた。


「ゲームにあった奴と同じだ。」

錬は言うと機首をコンテナ搬入口に向け、近づいてきたアンドロイド警備兵に機銃を加えた。

突然動き出した宇宙船に驚くアンドロイド警備兵は、あっという間に砕け散った。

「雑魚は消えろ!」

錬は完全にゲーム脳状態だった。

錬は、アントンのアンドロイド警備兵を始末すると、得意げに沙羅を見た。

そして、

「これが駄目元の錬の力だよ!」

錬は宇宙船を、反転させ宇宙ステーション・アントンの宇宙港から脱出した。



宇宙船は、静かな宇宙空間を行く当ても無く飛んだ。

沙羅は、まるでゲームをするかのように、

宇宙船を操りアンドロイド警備兵を粉々の砕いた錬に、微かな不安を感じた。



つづく


【人類たち】


沙羅(サラ)14歳

錬(レン) 13歳

知佳(チカ)12歳


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