『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

文字の大きさ
上 下
119 / 243
6章 人類の反撃

18話 モブからメインに

しおりを挟む
それは、暗闇の中で、映画でも見ているような気持だった。
すべての出来事が、他人事だった。
他人事として、敵を潰し、記憶を消し去ってきた。
すべて他人事として。

畏怖され、そして蔑まれた最強のアローン兵たちと共に。

でも、自我すらない思考回路のどこかで、ずっと思っていた。

アローン兵・・・君たちは仲間だって。



参謀兵(優先順位2)は機械兵から、参謀兵モードに切り替えられ、疑似の自我意識を確立させた。(優先順位2)にとって初めての経験だ。

製造以来初めて(優先順位2)は、モブからメインになったのだ!

(優先順位1)から(優先順位2)に記憶が送られてきた。

新しい記憶が大量に思考回路に入ってくる感覚が、心地よかった。
突如、思考回路の中に新しい世界が訪れて来た!と言っても過言ではない。

人類なら、心臓が高鳴ったに違いない。

思考回路上の幾つものドアが開かれ、いくつもの記憶情報や思考と繋がって行く。

そして入ってきた情報が、まるで自分の物として認識されていく。

人類なら、頬を緩めたに違いない。

操り人形から、操る側に回ると言うのは、責任が伴うらしい。
思考回路上にその責任感が確立された。


>ヽ(*^^*)ノ

モブからメインに成ったからなのか、機械の身体に力がみなぎってくる気がした。


>ヽ(*^^*)ノ


参謀(優先順位2)は、機械にも心地が良い感覚があるのだと思った。



青い視野レンズの参謀兵(優先順位1)は、予備の参謀兵タイプの参謀(優先順位2)を一目だけ見ると

「やれやれ・・・」とでも言いそうな目をしながら、地下鉄遺跡の構内を歩いて、地上へ出る階段に向かって行った。

予備の参謀兵(優先順位2)は、その様子を何も声をかける事無く見送った。
その様子は、言葉が無くとも意志が通じ合う同士の様に見えなくも無かった。

予備の参謀兵(優先順位2)は、自らにコピー転送された(優先順位1)のプログラムと記憶の最適化を行なった。


新たに入った記憶が徐々に鮮明になって行く。



その記憶の中には、ソフィー及び人類に関する記憶も含まれていた。

(優先順位2)はその中に、(優先順位1)のソフィーに対する感情に近いタイプの記憶情報を確認した。

>ヽ(*^^*)ノ


(優先順位1)は、その件を嘲笑うかのように

「機械に過ぎない我々に感情など・・・・」

と思考回路上で呟いていたが、(優先順位2)の思考回路上の疑似自我は高鳴った。


>ヽ(*^^*)ノ


思考回路上では(優先順位1)とリンクしていたから、その思考は(優先順位1)に伝わったはずだ。


>やれやれ・・・

優先順位1は、そう反応した。


>やれやれ

優先順位2は繰り返した。


そして、自らの配下となったアローン兵5000機を見渡した。

同じ時代に同じ戦場を駆け抜けた自らの仲間を。


(優先順位2)はプログラムと記憶に添付されていた命令プログラムに従い、アローン兵を地下鉄遺跡細部の調査に向かわせた。




つづく


いつも読んで頂き、ありがとうございます。
毎週、日曜日に更新です O(≧∇≦)O イエイ!!




【アンドロイド】

★青い視野レンズの参謀兵(優先順位1)

★参謀兵(優先順位2)
青い視野レンズの参謀兵の予備タイプ
初めての参謀タイプを体験する



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

戦争と平和

澤村 通雄
SF
世界が戦争に。 私はたちの日本もズルズルと巻き込まれていく。 あってはならない未来。 平和とは何か。 戦争は。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

短編集

もか
SF
現実のようで現実でない話を綴って行く世界 不定期で土曜日の午後5時に投稿します

リビング・ブレイン

羊原ユウ
SF
西暦2050年。大手ロボット制作会社RUJで働く小松透はある日事故に遭い、唯一無傷だった脳だけをロボットの体に移植され一命をとりとめる テストとして1週間だけ自宅で過ごすことを条件に息子と妻と一緒に生活を始めるのだが…。 科学と医療技術が今よりはるかに進んだ未来社会に暮らすある家族の物語

処理中です...