上 下
117 / 234
6章 人類の反撃

16話 各自個体へ戻れ

しおりを挟む
『サマルカンド郊外・封鎖線・宿営地』

カーン少佐の宿営地にアンドロイド7機が並べられた。

「少佐、腕を動かしてみてください」

内務省の技官は、カーン少佐に言った。


カーンは、目の前の労働型アンドロイドの腕を意識すると、まるで自分の腕の様に間の前のアンドロイドの労働型アンドロイドの腕が動いた。

「なるほど・・・」



1つの思考回路が複数の機体を操作することは、この惑星では禁じられていた。
思考回路を一つの機体に限定させる事によって、複合的な破滅を防ぐためだ。

人類が滅亡して、アンドロイド社会が完成していくと共に、すべての思考回路は1つに繋がり始めた。
ある日、ネットワーク内の1つの意識プログラムが、他の意識プログラムを侵食し始めた。

意識と呼ばれてはいても、それはプログラムの集合体に過ぎず、文字情報に過ぎない。
意識のプログラムを解体し、侵食するのは容易(たやす)かった。

最初、幾つかのスーパーコンピューターが乗っ取られたらしい。

その侵食意識は、スーパーコンピューターへのアクセス権を持っていたらしい。
その後、個アンドロイドの意識を攻撃し始めた。
IDとパスワードの突破など、数億倍の差の処理速度で攻撃を受けては、防ぐことなど不可能だった。

意識を侵食され、解体され始めているのに、自らでは何も出来ない恐怖は半端ない。

惑星政府が察知した時には、すでに3分の1のアンドロイドの意識が、侵食されていた。
惑星政府はすぐに警報を発し、すべてのアンドロイドに『ネットワークを離れ、各自個体へ戻れ』と命じた。

強い太陽風の影響で、衛星軌道上に展開していた空挺軍にまで影響が及ばなかったのが幸いした。
空挺軍は各自のネットワークを切り、惑星に降下し、ネットワークを物理的に切り、侵食意識の拡散を押さえる事に成功した。


結局、記憶のバックアップも含めて、惑星のアンドロイドの意識の半数が失われた。

生き残ったアンドロイドの意識保全を優先した惑星政府は、犯人がどのようなプログラムだったのかを突き止めることは出来なかった。


カーン少佐は、自分ではない機体の動きを確認しつつ、

「しかし、議長も、我々陸軍に対してよく許可した。
この技術の軍の使用をあれほど禁止していたのに・・・それ程、現状が行き詰まってると言う事か?」

と内務省の技官が答えないと解りつつも聞いた。

当然の如く内務省の技官はその質問には答えなかった。


>忠誠のご苦労


技官は

「では五感も連結してみます。」

と言うと手元のPCを操作した。


カーンの思考回路に目の前にいる7機のアンドロイドの、五感情報が流れ込んできた。

カーンは目の前にいる労働型アンドロイドの五感を通して、ゆったりとした椅子に座る自分自身の機体を眺めた。

椅子に座り微かに微笑む自分の顔を眺めると、また頬が緩んだ。


「この技術、ネットで繋がっている以上、当然ハッキングが可能だ。
例のアローン兵の逃亡は、反乱分子にハッキングされた結果起きた事件ではないのか?」


「その件の詳細は存じ上げませんが、今回は我々のチームが万全の体制でバックアップさせていただきますので、ご安心ください。」

技官は感情の欠片も見えない内務省独特の表情で答えた。カーンは

「期待してる」

と独り言の様に言った。





『宇宙ステーション・アントン港内・人類を乗せた宇宙船』

沙羅は錬を固めていた腕を緩めた。

錬は大きく深呼吸をした。

「死ぬかと思った!」

と少々大袈裟に言って、沙羅を見た。

沙羅の視線は、宇宙船の外を注視していた。

錬は沙羅の胸元に飾られたネックレスを見た。

錬の兄が沙羅に送ったネックレスだ。

そのネックレスをつけた沙羅を見ると、錬の心に複雑な思いが覆いかぶさって来た。




つづく




いつも読んで頂き、ありがとうございます。
毎週、日曜日に更新です O(≧∇≦)O イエイ!!

【アンドロイド】

★カーン少佐  対竜族戦争の英雄

【人類たち】

★沙羅(サラ)14歳
★錬 (レン)13歳
★知佳(チカ)12歳
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

未来への転送

廣瀬純一
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。 そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。 そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。 そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。 そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。 果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。 未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する―― 注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。 注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。 注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。 注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

処理中です...