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5章 最近、強くなった太陽風のせいかも知れない。
16話 人の想いが詰まったレコード
しおりを挟む『渓谷・B地点』
最初に発砲したのは、装甲騎兵の方だった。
それを合図に、装甲騎兵の機体に銃撃が降り注いだ。
渓谷には、硝煙の匂いと銃撃の乾いた音、そして、装甲騎兵が砕け散って行く音が響き渡った。
ソフィーは、参謀兵を通して、その様子を見つめた。
数の差と地の利の差から、アローン兵の格好の標的となった装甲騎兵は次々と砕け散っていった。
5000年前、人類だった頃の記憶が入った記憶装置と伴に、装甲騎兵は砕け散って言った。
「私は考えます。人類は5000年前、自らの肉体が滅びると同時に、記憶も滅び去ってしまうべきだったのではないかと」
参謀の声が、ソフィーの思考回路を巡った。
5000年も時間があれば、そんな事を何度も考えた事はある。
しかし、惑星最強のアローン兵の参謀に言われると、心がざわつき、自分の記憶の危険すら感じた。
「そう、この硝煙と銃撃と騎兵が砕け散る様子は、古びたレコードが砕け散って行くのと、何も変わりはありません」
ソフィーは、古いレコードが砕けて様子を思い浮かべた。
古い名曲が収録された黒いレコード。
それが砕けていくのは、それはそれで物哀しい光景だった。
アローン兵は、音楽の良さが理解するようには出来ていないのだろう。
兵器だから。
「人の想いが詰まったレコードには、なんの価値が無いと?」
と。
「個体としての私にその価値はわかりません。しかし、生きてる者達に取っては、貴重な資源となるでしょう。ゆえに、それを伝えて行きたいと思うのも、私の意思です。」
「意思?!機械のあなたに意思?」
「私の意思は、あなたの意思です。」
1時間後、ハミルとハミル率いる装甲騎兵2000機は、アローン兵の攻撃によって、セラミックとカーボンの破片へと変わっていた。
『サマルカンドへ至る道』
「ソフィーちゃん、起きなさい。朝だよ!そうですか、目覚めのキスが欲しいんですね?」
人形の様に動きを止めたソフィーに向かって、デューカは言ってみた。
「この状況でふざけてる場合ではないぞ。
そろそろ動かないと、怪しまれる」
コーリーは、デューカとは気が合わないらしく、無表情のまま正論を言った。
「そうだな」
デューカも、コーリーとは気が合わないのが解っているらしく、無表情のまま返答した。
サマルカンドへ向かう車道には、動きを止めたアローン兵が乗る車両400台も、アローン兵同様動きを止めていた。
つづく
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
毎週、土曜日更新です O(≧∇≦)O イエイ!!
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