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5章 最近、強くなった太陽風のせいかも知れない。

12話 その機械らしからぬ感情を宿した言葉

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『渓谷・A地点』



コーリー博士は空軍機への偽無線を切った。



「さすが百戦錬磨の博士、嘘がお上手で。」

デューカの言葉に、コーリーは満面の笑みを浮かべた。



「褒めてはないのだが!」



「デュ―カくん、騙すのは楽しいぞ~」



コーリーはさらに満面の笑顔を浮かべた。



上空が静かになったのを合図に、それぞれが動き出した。


渓谷の入り口には、兵員輸送用の車両が100台ほど停まっていた。



7000機のアローン兵は、匍匐前進で静かに車両を警備するアンドロイドに近づいた。


その匍匐前進の姿が、獲物を狙う蛇の様で、地面を這うその姿は、人の記憶を持つデューカにとって決して心地良いものではなかった。



背の高い草原が、匍匐前進する蛇の姿を完全に隠し、レーダーに映ることもなく、無音でアローン兵は車両を警備していたアンドロイドの背後を突いた。


アンドロイドの背後から黒い影が突如立体化して襲っている様に見えた。


瞬時に高圧電力で動力源を破壊されたアンドロイド達は制止して、マネキンの様に動きを止めた。



「なんてこった」


指揮していたデューカは呆れた。



デューカとアローン兵7000機は、車両を警備していた100機ほどのアンドロイドの動きを止めると、あっと言う間に車両を奪い取ることに成功した。


「こちら作戦完了した」






『渓谷・B地点』


アローン兵から送られてくる、視覚聴覚触覚情報に拠って、ソフィーの思考の中で、渓谷の全体像が構築された。


車両は確保は完了。



渓谷奥に入ったハミルと装甲騎兵2000機、それを包囲する機械兵5000機。


「ライトを照らせ、降伏に応じない場合は容赦はするな。」



ソフィーは参謀に命じると、ハミルと装甲騎兵2000機を、取り囲んだアローン兵5000機が、ハミルと装甲騎兵に一斉にサーチライトを当てた。


渓谷を取り囲む丘の上には、いくつもの自走砲らしきものが姿を現した。


装甲騎兵と言えども砲撃を受ければ、瞬時にスクラップだ。

本物の自走砲なら。



ソフィーの思考に、ハミルと装甲騎兵たちの驚いた表情が送られてきた。


コーリーが用意した自走砲は、自走砲に見えるが偽物だ。


小火器はともかく自走砲が簡単に手に入るはずはない。



ソフィーはニヤけると、ハミル達を取り囲んだ機械兵5000機を指揮する、参謀に

「後は任せた。」

と言うと、デューカ達が奪った内務省の車両に乗り込み、


空軍機の攻撃を恐れる事無く、サマルカンド都市部へ車を走らせた。


5000機のアローン兵で、ハミルと装甲騎兵を包囲した参謀は、拡声器で呼びかけた。



「お久しぶりです。ハミル少佐。

どうです、いつも命令していた機械に包囲された気分は?」


ハミルは、その機械らしからぬ感情を宿した言葉に、眉を顰めた。



つづく


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