『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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4章 デユーカに迫る惑星最強殺戮兵器

16話 まだ生きてるみたい。なんかラッキーだね。

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『首都郊外・地下鉄遺跡』



デューカは、両腕をアローン兵に捕まられながら連行された。



恐怖の極みを超えたデューカの思考回路上には、

観た事が無い映像が流れていた。


地下鉄遺跡の階段を降りると、

整然と敷かれた石畳と天井から柔らかく差し込む駅のホールには、

恐るべきアローン兵が、ずらりと並んでいた。



デューカの機体は、氷像の様に凍りついた。


黒い装甲を纏ったアローン兵の奥には、

頭部は特殊機械兵の兜をかぶってはいるが、


スレンダーなアンドロイドが、

遠い昔人類が使っていたであろう、

オープンカフェのテーブルの上に肘を立て、

親指を口元にそっと当てて、デューカの様子を眺めていた。


「ソフィー?」


デューカとソフィーがまだ人だった頃、

5000年も前の話になるが、

待ち合わせにいつも遅れてくるデューカを、

ソフィーは街のオープンカフェでテーブルの上に肘を立て、

親指を口元にそっと当てて待っていた。


デューカの心に5000年の時を超えて、

その時の想いが蘇ってきた。


「ソフィー!」

デューカが叫ぶと同時に、

デューカを掴んでいたアローン兵の拘束が解かれ、

デューカは、そのアンドロイドの元へ駆け寄った。


「デューカくん、遅い・・・いつもの事だけど。」


デューカが知っているソフィーの声そのもので言った。


デューカは、頬を緩めた。


「ごめん、5000年経ったって治ってなかったらしいよ」


「だね」


「ソフィー、生きてたんだ。」


「うん、まだ生きてるみたい。なんかラッキーだね」





『宇宙ステーション・アントン』


宇宙ステーション・アントンの管理官ケイは、

空軍と人類を乗せた宇宙船の一連のいざこざを、

自分の部屋の窓から眺めていた。


人類を乗せた宇宙船は、

宇宙ステーション・アントンのすぐ側を、

慣性でゆっくりと通過していた。



「どうする気?」


人類の乗せた宇宙船の姿に、ケイの心の奥が締め付けられた。

この感覚、5000年以上、感じたことが無い感覚だった。


つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます。

毎週、日曜日更新です O(≧∇≦)O イエイ!!
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