『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

文字の大きさ
上 下
69 / 243
4章 デユーカに迫る惑星最強殺戮兵器

9話 参謀くんも寂しくなる事ってある?

しおりを挟む
『首都郊外・地下鉄遺跡』




目的は、人類をこの惑星に受け入れる事。


それは、このレジスタンス活動の原点だ。


アンドロイド達の過去への望郷が、原動力だった。



そして、私たちは、人類とどうしようと言うのか?


人類との関係性は、どうするの?


寿命が、70歳前後の人類と、どうやって暮らすのか?


アンドロイドたちは、5000年の時間を生きてきたのだ。


5000年前の成りたてのアンドロイドとは違う。



ほとんど永遠に続く時間と、限りある時間。



考えれば、色々問題が出てくる。



しかし、宇宙に飛び立ってしまった人類。


人類が居なければ、レジスタンス活動の意味はなくなる。



人類がもたらす潤いによって、


この硬直した世界が変わると思ったけど、


所詮機械だし、それならそれで良いか・・・



そうなると私はどうしよう。


どこかで偽造IDを手に入れて、


前暮らしていたような、生活に戻る手もある。



そんな生活とは、かけ離れたアローン兵たちが、


惑星各所の基地から脱出して、


ソフィーの元に集結しつつあった。



参謀の助言により、


再び地下鉄遺跡に戻ってきた。


サムエルやニナ達レジスタンスと違って、


アローン兵は民衆の支持を得ていないばかりか、


最も嫌われている機械と言われても、過言ではない。



ゆえに、街の中に隠れる訳にも行かず、


いつまでも地上にいるわけにも行かず、


結局地下鉄遺跡に戻らざる得なかった。



「問題は山積している。」


「はい、その様です。」

参謀は相槌を打った。



「宇宙に上がり、人類の宇宙船に接触する手段は?」



「はい、アローン兵一個師団1万2千機集結後、

空軍基地を襲撃し宇宙船を奪うルートが最適かと思われます。


サマルカンド宇宙港の民間宇宙船を襲撃するルートもございますが、


一般アンドロイドの被害を考ますと、


空軍基地襲撃ルートが最適かと考えられます。」



参謀は、表情を変えず・・・元々表情などないのだけど、


何となく徐々に表情が出てきているのは、気のせいか?




「空軍基地を襲う?まだ、大胆な事を言う・・・そんな事をすれば、

軍が本格的に私達を討伐する口実を与えるようなものよ。


今だっていつそうなるかも解らない状況なのに・・・。


違う方法は無いの?」



いまだに軍による本格的な掃討戦を恐れている。


もう手遅れ感は、ソフィーにも解っていたが・・・



「ソフィー様が一機で、


一般アンドロイドしてサマルカンド宇宙港より、


宇宙に上がるルートが幾つかありますが、


人類に似た生命体を乗せた宇宙船に、


空軍の監視を抜けて接触するルートは発見できません。」


「それを考えるのが参謀の仕事でしょう。」


「はい、その様です。」

参謀は、いつも通りに答えた。


ソフィーは

「もしかして、私が一機で宇宙に出たら、寂しくて反対してるだけじゃないの?」

と、言って見た。参謀は答えに困ったように沈黙した。



・・・そんな事はないだろうけど・・・



「参謀くんも寂しくなる事ってある?」


参謀は考え込んだ。かなり長いこと・・・


参謀が寂しさについて考え込んでいる最中、


ソフィーは『空軍基地襲撃案』について考えを巡らした。



遅かれ早かれ、軍が動くのであれば、


先に空軍基地を押さえておくのも悪くはない。


なんと言っても、こちらにはアローンが1万2千機もある。


そう考えると武者震いがした。


1万2千機の感覚を確かめてみた。

ソフィーの一つの意識が、

1万2千機のアローン兵の思考回路を駆け抜けた。

その爽快感は、ソフィーの思考を違う次元に、誘っている様な気がした。


青い視野レンズの参謀は、


『自分は寂しくなる事ってあるのか?』について、まだ考えていた。



寂しいと言う概念がないのだろう。

概念がないと、寂しくないのだろうか?


アローン兵は、共通の思考空間を持ち、

常に同じアローン兵を意識出来る環境にあるならば、

寂しさは感じないのかも。


地下鉄遺跡には、アローン兵1000機が、


微動だにせず置物の様に佇んでいた。


もしその共通の思考空間にアクセスが出来なくなったら、

アローン兵なりに、寂しさを感じるのかも知れない。




つづく


いつも読んで頂き、ありがとうございます。 O(≧∇≦)O イエイ!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦争と平和

澤村 通雄
SF
世界が戦争に。 私はたちの日本もズルズルと巻き込まれていく。 あってはならない未来。 平和とは何か。 戦争は。

【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?

俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。 この他、 「新訳 零戦戦記」 「総統戦記」もよろしくお願いします。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...