『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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1章 黄昏の始まり

7話 はしゃぐ銀髪

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「真面目なトラック運転手が、宗教検察官の車を襲うものか。」

神父の言葉に、銀髪のアンドロイドは嬉しそうに笑った。

「何が可笑しい・・・君のせいで私の堅実な神父生活はおしまいだ。」

「堅実な・・・。」

銀髪は、また嬉しそうに笑った。

鉱石運搬用のトラックは山道を、猛スピードで登り始めた。

悪路を走る車体はガタガタと揺れ、それが嬉しいのか銀髪ははしゃいだ。

神父は、何故自分が反乱罪で逮捕されたのか推測してみた。
敵を作らず慎重かつ穏便に、今の地位を築いてたはずだ。
訳が在るとすれば、あの評議会の意志に反した演説ぐらいだ。

しかし、硬直化した官僚機構の宗教検察省が、演説から1時間もたたずに逮捕に踏みきれるだろうか?

それに、宗教検察庁とは言え、教会に属する神父をそう簡単に逮捕出来るはずが無い。

神父が思慮に耽っている時、すでに遥か遠くに見える街の方角から、花火の様な爆発音が聞こえた。

神父が慌てて街の方角を見ると、それまで光り輝いていた街が暗闇に包まれていた。

「何だ?」

銀髪のアンドロイドは

「何でしょうね。」

と関心なさそうに言った。

「電力施設か?」


神父は、その不穏な動きに眉を顰(ひそ)めた。
余談だが、この眉を顰(ひそ)めるアクションは、教会技術部が試行錯誤を重ねて開発したアクションだ。
眉の些細な形や動きの違いが、見る者の印象を大きく左右する。
しかし、残念ながら今回のアクションは、無駄になったようだが。


銀色の髪のアンドロイドは、神父の眉の動きも爆発音の事等気にせず、ひたすら運転に集中した。

鉱石運搬用のトラックはトンネルに入った。
街とは電力系統が別なのか、トンネル内を照らす赤い照明が、やたら眩しかった。

トンネルを抜けると天文台の白いドームが見えた。

鉱石運搬用のトラックが、天文台の前に停まると、天文台の建物の中から、数人の研究員が駆け出してきた。

「おお!我らのヒーロー!アレム神父の登場だ!」

と叫びながら神父に抱きついて来たのは、天文台長のコーリー博士だった。

神父はそのテンションの高さに苦笑いをした。
そもそも、神父と博士は全く面識が無い。

「演説、感動いたしました。
あなたの演説こそ事の始まりの合図。
いよいよ我々が行動を起こすときが来たのです!」
とコーリー博士は高揚感あふれる声で、そう叫んだ。

また、テンションの高い輩が・・・

もともとテンションの低いアレム神父は、
その高揚感にはついていけず

「何の事でしょう?」

自分でも解るほどかなり冷めた声で言った。

「まあ、とりあえず、中へ中へ。
政府の狙撃兵がどこで狙っているかも分かりませんし」

コーリー博士はアレム神父を天文台の中へ誘った。






つづく

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