思惟ちゃんと式神的な巨大ロボット

健野屋文乃(たけのやふみの)

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1章 妖精のお姫様

第13話 コアとコア

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姫さまは、「だから!」と強めの口調で、

思惟をぐっと引き寄せた。

多分、真剣に口説くつもりなのだろうけど、

ちょうどお湯の蛇口の下に引き寄せられた思惟の頭には、

蛇口からお湯が、滝の様に流れ落ちていた。

 

真剣な話をするには、若干不似合いな状況になってしまった。

お湯の滝に打たれたままの状態で、説得を続けるのか、

姫さまは少し迷ったが、決意を決め

 

「思惟・・・あたしの味方になって」


(続けるのかよ!)


滝の様に流れるお湯の向こう側の、

姫さまの、切羽詰まった哀しげな瞳に、思惟は、

「うん」

と、つい言ってしまった。


安心した表情になった姫さまは、可愛く微笑んだ。


これから、危険な道に進んだとしても、

この微笑みにはそれだけの価値があるの・・・

かも知れない?


わかんないけど・・・でも、いいんだ。

そんな、ふわふわした曖昧な感じで、

今までも生きて来たし、これからの生きていく。




黄金の武者は、思惟と姫さまが乗ったまま、

動き出した。

 

揺れは全く感じられず、

360度モニター画面の映像だけが動いていた。



騰子(とうこ)と、会璃(あいり)が、

魂の抜けた思惟を支えているのが見えた。



「私が泣いてる」


魂の抜けた思惟の目から涙が零れていた。



「魄(はく)・・・肉体にとって、

ずっと一緒だった魂がいないのって、寂しいの」

 

「・・・・」


「でも、大丈夫、思惟は死んだ訳じゃないから、

いつでも戻れるよ」


姫さまは、気遣う目で思惟を見つめた。

強気だったはずの、その目は弱々しく、

暗い後ろめたさを含んでいた。


姫さまを、後ろめたくさせる何かが、

この後、思惟の身に降りかかってくるのか?

いや・・・すでに降りかかってる。

肉体から切り離され、

今、思惟は魂だけの存在になっているし・・・


「思惟、ごめんね」


乳白色のお湯の中で、

思惟は姫さまに抱きしめられた。


魂だけの状態でのハグは、

肉体でいたころよりずっと相手に触れている感じがした。

相手の心のコアと自分の心のコアが、触れ合っているような。


急激な触れ合いに、思惟は慌てて

「私は、大丈夫だから・・・。」

と姫さまのハグから逃れた。


心と心・・・以前に、

姫さまは薄い下着の様なものを身に着けているけど、

思惟は全裸だと言う事に気づいた。

それも肉体もない魂だけでの全裸・・無防備すぎる(滝汗)



360度モニターに、思惟の身体が映った。


今まで自分自身だった自分の姿を、

こうして第3者としてみると、

思っていたより可愛い少女に見えて、

「私、意外と可愛いじゃん♪」

と、ちょっとにやけた。


        
つづく
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