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1章 妖精のお姫様
第12話 王国の首都
しおりを挟む思惟の継母は、一見、良い人ではある。
線が細くて、おしとやかな美人であることは、
自他ともに認めている。
しかし、旅館の女将に向いているかと言うと若干疑問だ。
旅館の女将は、結構大変なのだ。
それが武将としての女将となると、多分無理だ。
だからと言って、思惟が向いているかと言うと、
それも大いに疑問なのだが!
「一応、先代の女将に諸々の事は知らせてあるはずだけど・・・
思惟は、あたしたちの事、どこまで知ってる?」
「えーと・・・何も知らない・・・」
「あたしたち・・・・あたしサイズの人を旅館で見たことがない?」
「えっ、旅館にいるの?」
「うん・・・結構、そこらへんに・・・。」
「ええええマジですか!」
「マジですよ。だってここは、旅館であると同時に、
あたしたちの王国の首都だもの」
「首都!マジですか!」
「マジですよ。」
知らなかった。生まれた時からずっと住んでたけど、
あっ!でも、何か出るって噂は本当だったんだ。
「それで・・・本題なんだけど・・・。」
と姫さまの表情がちょっと硬くなった。
その表情に、ちょっと怯えた思惟は、
コックピット内に満ちた乳白色のお湯に、
肩までつかった。
「今、街の外の世界では、
あたしたちに敵対する勢力が、
世界各地で同時にクーデターを起こしたの・・・」
可愛らしい姫さまは、
乳白色のお湯に浸かりながら話した。
内容は、街の外では粛清が始まっている事。
姫さまの王国が、遠征軍を送ったが失敗した事。
結果、多くの将兵が失われて、今、いっぱいいっぱいな事。
乳白色のお湯に入って話す姿は、
優しく気品に満ちていて、
話している内容との乖離は凄かった。
それを聞く思惟も、乳白色のお湯に肩まで浸かって、
ゆるゆるな気持ちで、その話を聞いていた。
そんな物騒な世界の話も、
こんな可愛い妖精のお姫さまと、
気持ちの良い温泉に浸かっていると、
どうでも良くなって来る。
そして、しっかりと作りこまれた感がある、
武者の胸部コックピット内は、
誰かに守られているようで、安心感は格別だった。
外で何が起ころうとも、この中に居れば安全な気がした。
「でもね、もっとも厄介な事は、敵が誰だが解らないって事なの」
「ん?」
「表面上は確かに武装した連中がクーデターを起こしたんだけど、
そいつらにそれをやらした奴らが誰だか解らないの・・・。」
「ん?」
「思惟の旅館が、あたしたちの王国の首都があったように、
世の中には表層と深層があるの。
そして、深層を解決しない限り、世界は変わらない。」
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